ナースのチカラ~私たちにできること 訪問看護物語~【9-3】

ママナースもも子』でお馴染みの広田奈都美さんが描く、訪問看護師マンガ。

単行本9巻の発売を記念して、月刊誌『フォアミセス』より特別転載でお届けします!

患者さんと話した幸代の心に浮かぶのは…(【9-2】はこちら

 

2話最終コマ。(離婚しよっかな…)

(なんか…ふと思っちゃった…夫とはほとんど喋らない…息子も来年は自立予定。私が美加子さん…だったらどう生きるだろう…余命半年だったら?逆に別れないだろうな…彼女は強い強い人に憧れる…)福田さんを訪問した日の夜、家事をしながら幸代さんは思いました。場面は変わり、師長と持田さんが話しています。「あんたプライベートナースやってみない?」

 

持田さんは「あぁ…自費で雇うナースの事ですね?結婚式とかイベントに付き添う。いいですよ無料でやりますよ」と言いましたが、師長は「駄目よ!!自分の仕事を安く売ってはいけないわこういう労働は低く見られがちなんだから自ら下げちゃだめ!!ちゃんと報酬は取って責任持って受けるのがプロよ!!」と強く言いました。それを聞いた持田さんは師長をじっと見つめ、師長が「何よ?」と聞きました。「そういや以前私も同じ事を言ったなと思って…」「誰に?」「幸代さんに」

 

「…わかるわあの人…優しすぎるのよねー。あの子呼んで!!」「え」「私もいろいろ伝えておきたいことがあるのよね皆に。いつ脳に転移するかわからないしコロナもあるし。そうでなくとも時間は限られているのだからするべき事をしなくちゃ…幸代さんに話したい事あるのよ」と師長はみんなのことを考えているようです。持田さんは「…師長はそうやって…皆を
導いてきましたね」と言いました。

 

「私も導かれてここまできました」「どこがよ!!思ってる事言ってるだけよ」話しているうちに泣きそうになる持田さん。(あ…だめだ…また涙出ちゃう…)と思い話を変えました。「ところで在宅医の先生ですけど…どの先生に頼みます?指示書だけでいいなら今の病棟の先生に書いてもらいます?それともやっぱりつき合いの長い牛島先生?緩和のDrで井田先生もいいかなと思いますが」と聞くと、師長は「もう決めてあるの」と。「誰です?」と聞くと、「Aホームクリニック」と師長が答えました。

 

持田さんは一瞬固まり、「本気ですか?」と聞きました。師長は「言うと思った」と笑いました。「嫌だっ!!俺は受けないからね!!」と叫んだのは…

 

「あのステーションには恨みしかないんだけど!?君は引き抜かれて俺は説教されちゃうし!!あの…顔も名前も忘れちゃったけど持田って女に!!」Aホームクリニックの院長は言いまいs田。院長に伝えた小紫さんは「やだーー覚えてるじゃないですか ちゃんとー」と言いました。院長は「俺は!!あの女ともう会いたくない」と頑なです。「じゃあ合わないようにします済んで受けてくださいよ」と小紫さんの提案に「そんなことできるの?」と院長が聞きました。「たぶん」と小紫さんは言いました。

 

「たぶんて…やだなーーもう…小紫ちゃんもあのステーションのどこがいいわけ?」と院長が聞き、「でも師長さんの事は嫌いじゃないでしょ?師長さんはほめてましたよ先生のこと」と小紫さんが言いました。院長は「ほんとに?なんて言ってた?」と気になる様子。(興味アリアリじゃねーか…)と思いながら「なんだったっけかなーーいつも先生にはお世話になっております……とかなんとか」「ほめてないよねソレ」

 

「俺はわかってる…説教しようとしてるんだろ?こんな在宅医療はだめだって…嫌がらせだろ もう」と師長が自分を呼んでいる理由を話すと小紫さんは驚いた表情。「……何その顔」「よく気づきましたね…」「馬鹿にすんなよそのくらいわかるわ!!たかが看護師が医者に意見するとか本当身の程を知らないな」と院長の話をきき、小紫さんは(なんでこの人医者になったんだろう…)と思いました。

 

場面は変わり師長の家で幸代さんと師長が二人で話しています。(師長さんのお宅で…紅茶を飲める日がくるとは…)幸代さんが感慨深い表情でいると「幸代さんのお義母かあさんのケアで入ったのよねーーあれはもう何年前?」と師長が聞きました。

 

「あれは5年…いや6年前?もうそんなたつのね?」師長が聞き、「そうなんですよ……ね…結婚してすぐ義母が脳梗塞で倒れて…同居することにしたんです………当時は嫁の務めみたいなところがあってそれが当然でした…介護しながら子育てもして…義母の介護中に義父も亡くなって…それが私の仕事なんだって言われて私もそうだと思ってやってきました。義母もだんだん良くなってきたし子供も大きくなったのでパートに出たんです」と幸代さんが話し始めました。

「そしたらすぐ…義母が再び脳梗塞発症して…叱られたんですよねーーあれが…結構…トラウマでとにかく必死に世話しなくちゃと思ってて…義母にも怒られるし…………そんな時訪問介護入ってくれて…」「何をきっかけに入ったの?」「えっと…それが…外来のナースさんと世間話してたら…たまたまそういう話が出て」

「訪問看護をその時 勧められたんです…でも義母は必要ないって…私がすべてやるし家に人が入るのは嫌だって言われて…その後…今度は他のナースさんにも勧められて渋々義母がいいよって…」すると師長が「それはねその時 外来にいたナースが あなたを心配して大変そうだと…上司(外来師長)に相談したのよ。あそこのお嫁さんいつか倒れちゃうんじゃないかって」と言いました。幸代さんは目を大きくして驚きました。

「実は裏で多くの人が動いてたのよ。偶然じゃあないのよ。だから意図を持って訪問に行ったの、あなたを助けるためにね」

「持田は何よりあなたと話す時間を作ってたんじゃない?好きな芸能人の話や食べ物の話…ねぎらいの言葉義母に代わって感謝の言葉いろいろかけてきたはずよ」師長の言葉に幸代さんは固まったままです。「はい…そうでしたそうですすべて意図を持って働きかけてたのよ“自立しなさい”って」師長が言いました。

「女はケアをするために生まれたんじゃない。解放されなさい、そしてもっと尊敬される人になりなさい。ケアを軽んじる人の側にいてはあなたは一生自分を下に見て生きていくでしょう。もっと強くなれるはずよあなたは」師長が幸代さんに語りかけます。

師長は幸代さんに優しく微笑みました。
※表現の都合上、マスクなどの描写を省略している部分があります。

【おわり】

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【著者プロフィール】

広田奈都美(ひろた・なつみ) HP

漫画家・看護師。某地方総合病院にて勤務後、漫画家としてデビュー。著書は「僕達のアンナ」(集英社)、「お兄ちゃんがコンプレックス」、「ママの味・芝田里枝の魔法のおかわりレシピ」(秋田書店)他。

 

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