ナースのチカラ~私たちにできること 訪問看護物語~【2-2】

前回のお話

訪問看護ステーションを辞め、介護施設で働き始めた花。
これまでの仕事とのギャップに驚きますが…

前職の先輩に相談するも、「頑張って!!」と言われただけで帰られてしまった花。

 

 

先輩たちのちょっと他人のような対応に、(そうか、先輩たちはもう…先輩ではないもんね…。)と感じた花。一人で頑張るしかない、そう決めた翌日に見たのは…。トイレに生きたいという利用者さんへ、「何度言ったらわかるの!?歩くなって言ってんじゃん!転ぶからも~~~。」と怒鳴る深町さんの姿でした。

 

「おしっこの時は呼んでよ!!一人じゃ転ぶじゃん」と怒る様子に耐えられなくなった花は、先輩看護師に「あのっ、利用者さん怒られてて、その…。」と助けを求めました。すると、「あぁ、いつものことよ。放っておいて、注意したらあたし達が怒られんだから。この施設で働くならね。」と言われてしまいました。「でもあの方かわいそう…。」というと「そう思うなら言えば!?」ときつく言われてしまった花。

 

「あの住田さんは、5分おきにトイレに行く人なの。困った家族が施設に入れたけど、どこでも断られてここしかなくて来てる人なの。でも深町さんが怒ると行かなくなるのよ。だからそうしてるの!!」と先輩は答えました。花は、ショックをうけ(看護ってなんだろう…
きれいごと?)と介護士の接し方を見ながら思いました。

 

そんなふうに思っていると、「あっ、私行きます」と名乗り出た若いスタッフがいました。「えー小澤!?お前シーツ交換あるだろ?」という男性スタッフへ「あとでやりますんで。」というとトイレ介助を交代しました。

 

「私も手伝います。」と花も名乗りでました。トイレへついていく時(この人は他のスタッフと違う…。名前もちゃんと呼ぶし…)と花は気が付きました。トイレを済ませたあと、小澤さんは「ちょっとお腹おすねー」と言いました。

 

すると、利用者さんの腹部をグリングリンと押し始めました。花は驚いて、「えっ、今のってなんですか?」と聞きました。小澤さんは、「おしっこが出ないときは、こうやって押すと出るって皆から教わって…。」と言いますが、利用者さんは痛がっていました。(初めて聞いた…。腹圧をかけるのは導尿の時にやるときはあるけど)と思った花は、看護師に質問しました。先輩は、「膀胱に圧をかけると排尿しやすくなるんよ。クレーデ法っていうのよ。あんた知らないの?」と言われてしまいました。

 

花は、「そうなんですね。」と言いながら(あんなに痛がってまでやることかな…?)と疑問を抱きました。その後注意してみると、介護士さんの全員があれをやっていたことがわかりました。嫌がる人を無理やりお風呂に入れるなど、人間として扱っていないように感じました。先輩看護師から「考えちゃだめよ、考えたらやっていけなくなるわよ」と言われたことを思い出し、ぞっとしました。

 

呆然とする花のもとへ、小澤さんがやってきて、「さっきはありがとうございました。看護師さんにいろいろ教えてほしいです。私まだ勤めて半年しかたってなくて…。」と辞める人の多い現状についても教えてくれました。花が、「介護の仕事って大変ですよね。」というと、小澤さんは「この間の人は、ウンチ見るのが嫌だって辞めちゃいました。」と困ったように笑いました。

 

「クレーム対応に疲れて辞めた人、賃金が少ないと辞めた人…。私が入った半年で5人くらい辞めてます。私も辞めようかなって思います。全然できないし、行動も遅いし、自信もないし。」と小澤さんは言いました。花は、(この子私みたい。)と思いました。そして、「一緒に頑張ろうよ…私も自信ないけど、変わりたいんだ…」と言いました。

 

「尊敬してる先輩達がいて、その人達みたくなるには、今のままじゃだめだなって思って…だから、もう少し続けよう。」と伝えました。小澤さんは、「そうだね。私もこの仕事は嫌いじゃないの。お年寄りの人とお話するのは楽しいし、私に頑張りなって励ましてくれる人もいて…。」と前向きに答えました。

 

花は、訪問看護師をやってた時に励ましてくれた患者さん達を思い出しました。(なのに私…逃げ出しちゃった。だから今は逃げたくない、向き合いたい。)と思い、排尿時の残尿についての文献を探し、翌日みんなの前でちゃんと言おうと決めました。翌日、「調べたら、下腹部の圧迫はあまりしないほうがいいです。膀胱を圧迫すると尿が腎臓に逆流して感染を起こしたり、膀胱自体が傷ついたりするので、注意が必要なんです。」と説明しました。

 

その日から、花は空気になりました。つまり存在していない人間になったのだ。(全員から無視されるのはキツイ…。大人のいじめってあるんだ。あ、全員は間違い。一人をのぞいて…)と花は思いました。小澤ちゃんは、かわらず接してくれました。

【3】に続く

 

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【著者プロフィール】

広田奈都美(ひろた・なつみ) HP

漫画家・看護師。某地方総合病院にて勤務後、漫画家としてデビュー。著書は「僕達のアンナ」(集英社)、「お兄ちゃんがコンプレックス」、「ママの味・芝田里枝の魔法のおかわりレシピ」(秋田書店)他。

 

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マンガ・ママナースもも子の今日もバタバタ日誌

ブランク16年の私が看護師に復帰した話

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