おうちで死にたい~訪問看護の現場から~【2-3】

前回の話

末期がんと分かっていても、母の回復を願わずにはいられない娘、睦美(むつみ)。
そんな睦美に看護師の馬淵が、病気の進行を告げます。

前回の最後のシーン。母になんとか良くなってもらおうとヨーグルトを食べさせようとする睦美に、「お母さんはもうすぐ亡くなるんですよ」と告げた馬渕先輩。

 

 

馬渕先輩は睦美に、お母さんが一時的に良くなったのは麻薬で痛みがとれたからで、亡くなる前は良くなったり悪くなったりを繰り返し、最後はストーンと悪くなって……もう戻らなくなるのだと話します。「それが死です。お母さんは今そこに向かってるんですよ」と言う馬淵先輩。それでも、「でも母はまだ元気になるかもしれない」と弱々しく反論する睦美。ヨーグルトを持つ手が震えています。そんな睦美に、お母さんが呼びかけます。「睦美。お母さんは睦美のために…生きるよ…大丈夫だから。死なないから」

 

 

 

「側にいるから」と弱々しく睦美に手をのばすお母さん。睦美は、幼い頃から自分を励まし続けてくれた母の姿を思い出します。自分が癌だとわかった時ですら、「死ぬわけないじゃん」と笑ってくれた母。

 

 

 

立ち尽くす睦美の背に、手を添える馬渕先輩。「睦美さん、後悔のない介護をしましょう。一緒に私たちが手伝います」と語りかけます。ヨーグルトも食べれるように考える、だって睦美のために今、お母さんは生きているからと続ける馬渕先輩。「私たちが側にいます。あなたを1人にはさせません」そう言う馬淵先輩の手が、睦美の背に置かれています。

 

 

 

『寄り添う』という看護師ができるただひとつのこと。それは御家族の方も同じと感じ、目が潤む花。しかし、泣いている場合じゃない!!とハッとなり、「そっ、そうです私も…考えます…」と言いました。涙を流しながらヨーグルトを見つめる睦美。「ヨーグルトをあげたかった…癌が治るっていうから……でも」と思います。苦しみながら私のために生きているなら、お母さんを楽にしてあげたい。大切な人だから。誰よりも、誰よりも。

 

 

 

『大切な人だから』。笑いかける母の手をとった睦美。それから睦美は花や馬渕先輩と何度も話し合い、麻薬の量や亡くなってからのことを相談しました。仕事をやめて介護に専念しようかと相談に来た時も、馬淵先輩に「あなたの将来のことを考えたら得策ではないと思います」と言われ、1つひとつ乗り越えていきます。

 

 

 

そうして、睦美のお母さんが亡くなる1周間前、馬渕先輩が「ここ数日だと思いますので、お仕事お休みとれますか?」と睦美に問いかけます。「はいっ」とスッと受け入れた睦美に、ドキッとする花。数日後、母が息を引き取ったようだと睦美から連絡が入り、花と馬渕先輩はすぐ訪問看護に向かいます。花は、その時の睦美さんの姿が胸に焼きついて離れません。なぜなら…

 

 

 

『まるで睦美さんがお母さんのようで、内田さんは子供のように安らかな顔でいらしたから』。優しい顔でお母さんの頭を撫でながら、2人を迎える睦美。

 

(完)

 

 

 

 

 

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【著者プロフィール】

広田奈都美(ひろた・なつみ) HP

漫画家・看護師。某地方総合病院にて勤務後、漫画家としてデビュー。著書は「僕達のアンナ」(集英社)、「お兄ちゃんがコンプレックス」、「ママの味・芝田里枝の魔法のおかわりレシピ」(秋田書店)他。

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