褥瘡とスキンケア

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ドレッシング材と外用薬の使い分けや、DESIGN-R®2020をわかりやすく解説!

 

『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は褥瘡スキンケアについて解説します。

 

佐奈明彦
聖隷三方原病院看護部

大場 操
聖隷三方原病院皮膚科

 

 

Minimum Essentials

1褥瘡とは皮膚の同一部位に持続あるいは反復して外力がかかることで、壊死や潰瘍を引き起こした状態をいう。

2褥瘡は予防が第一であり、適切なスキンケアを行うことで発生リスクを下げることができる。

3褥瘡が発生した場合には、創周囲のスキンケアとともに創の状態を正しく判断し、状態に合わせ適切な治療方法を選択する必要がある。

4正しいケアを行っていくためには、常に最新の情報を得ることが必要である。

 

褥瘡とは

褥瘡(床ずれ)はpressure ulcer(圧迫潰瘍)とよばれ、圧力+ずれ力(=外力)が皮膚に加わり、血行障害による組織の潰瘍や壊死を引き起こした状態をいう。接触面の負荷が高くなりやすい骨突出部が好発部位となる(図1)。

 

図1 褥瘡

中央に黒色壊死がみられる。

褥瘡

 

褥瘡は原因となる外力をなくせば予防できるが、現実には完全になくすことは困難である。また、患者自身の年齢や疾患などの身体側要因、室温やマットレスなどの療養環境などによる組織耐久性の低下があると、より軽い外力、短時間の外力でも発生する。このため褥瘡のケアは、局所のみでなく、全身のトータルケアとしてとらえる必要がある。

 

特殊な褥瘡として、医療関連機器圧迫創傷(medical device related pressure ulcer:MDRPU)がある。 医療用弾性ストッキング、 非侵襲的陽圧換気療法(non-invasive positive pressure ventilation:NPPV)マスク、ギプスやシーネなどの医療機器使用中に発生するもので、これは通常の褥瘡とは圧迫因などが異なるため、それぞれの機器の適切な使用が必要となる。

日本褥瘡学会ではそれ以外の褥瘡と区別し、予防と管理を行っていくことを推奨しており、ベストプラクティスが公開されている1)

 

なお、褥瘡と同じく摩擦とずれによって生じる創傷に皮膚裂傷(スキンテア)があるが、こちらは瞬間的な力が加わることで発生し、病態もケア方法も異なるため鑑別して対処することが必要である2)

 

 

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褥瘡の予防とスキンケア

褥瘡の予防には、患者の全身を観察し、リスク評価と対策を行う必要がある。図2は褥瘡発生に関わる因子の関係性を示したものである。

 

図2 褥瘡の発生因子の関連

褥瘡の発生因子の関連

 

外力の強さ、時間、頻度は体位変換や体圧分散用具の使用で適切に対処する。組織耐久性を下げる因子には、除去できるものとできないものがあり対策は一様ではない。しかし、外的要因の「湿潤」「摩擦とずれ」、内的要因による「皮膚の脆弱化」に対しては、スキンケアによりリスクを下げることが可能である。

 

具体的には、皮膚から刺激物、異物、感染源などを取り除くための洗浄、皮膚から刺激物、異物、感染源などを遮断したり、 皮膚への光熱刺激や物理的刺激を小さくしたりするための被覆、角質層の水分を保持するための保湿、皮膚の浸軟を防ぐための水分の除去などである3)

 

好発部位の皮膚状態を健やかに保つことは、褥瘡の予防につながる。たとえば仙骨部は体重のかかりやすい部位のため、圧迫を受けやすいうえ姿勢が変わるとさらにずれの力が加わる。可動性の低下、活動性の低下がある場合は同一部位に長時間の外力を受けることになり、総負荷は増強される。

 

また、蒸れや失禁による皮膚の湿潤は、皮膚の浸軟と摩擦の増大を起こす。便や尿が付着する(皮膚の汚染)ことで、化学的刺激による皮膚障害や、細菌数の増加による感染リスクの増加が起こる。浸軟した皮膚は、刺激物や細菌の透過性を亢進し、さらに局所の炎症や感染を起こりやすくする。

 

さらに栄養障害、加齢、全身の血流障害などの内的因子が作用し、組織の耐久性を低下させる。こうして組織への負荷が組織の耐久性を上回った結果、障害が生じやすくなり、褥瘡が発生するのである。

 

このようにさまざまな要因が関係しているため、褥瘡の予防と対策は、その発生メカニズムを理解したうえでバランスを考えながら行う必要がある(表1)。

 

表1 褥瘡予防のポイント

褥瘡予防のポイント

 

内的要因の高い患者では、エアーマットレスや減圧マットなどの体圧分散寝具を適正使用することでリスクの軽減が期待できる。しかし、効果があるといわれる製品、ケア方法も日々変化しているため、経験や習慣に頼らず常に最新の情報を得ることが望ましい。

とくに以前は当たり前に行われていた骨突出部への円座の使用やマッサージは、褥瘡予防においては逆効果であることが明らかとなっており、行ってはならない。

 

 

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褥瘡の治療

褥瘡は深達度によって治癒過程が異なるため、創の状態を正しく評価し、適した治療やケアを行う必要がある。全身状態、栄養状態の管理も併せて行う必要があり、多職種によるチームでの対応が効果的である。創の状態評価、チーム内での共有にはDESIGN-R®のような信頼性の高い評価スケールを用いることが推奨される。表2に深さ判定項目の深達度と注意をまとめた。

 

表2 DESIGN-R®による深さ(Depth)判定と創の治癒過程の違い

DESIGN-R<sup>®</sup>による深さ(Depth)判定と創の治癒過程の違い

 

創状態に適合しないケアは治癒の遷延や悪化を招くので、十分なアセスメントを行い、創傷の状態に合わせた薬剤やドレッシング材の選択を行う。とくに、D3以上の深い創は壊死組織を伴うことが多く、感染を併発しやすい。悪化すると敗血症などで死の転帰をとることもあるので、早期の対処が重要である。

 

なお、発生時には軽微な損傷に見えても、深部組織に不可逆的な変化が起きていて、時間をおいて顕在化してくる深部損傷褥瘡(deep tissue injury:DTI)という病態があるため注意する。DTIの判別には、2重発赤の有無、骨突出部とのずれ、触診、超音波診断法のほか、発生時の状況(長時間の圧迫歴など)が重要である。

 

全身状態が悪化したときは、褥瘡の増悪や発生のリスクが高まるため、注意深い観察とケア計画の見直しが必要となる。褥瘡が発生したあとは、予防のためのスキンケアを継続して行うとともに、褥瘡周囲のスキンケアも必要となる。発生した褥瘡患者のスキンケアのポイントを表3に示した。

 

表3 褥瘡発生後のケア

褥瘡発生後のケア

 

褥瘡は一度発生してしまうと患者の苦痛も大きく、治癒に多大な労力と時間、資材を費やすことになるため、予防ケアの重要性を認識し、取り組んでいくことが大切である。

 

 

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引用・参考文献

1)日本褥瘡学会(編):ベストプラクティス 医療関連機器圧迫創傷の予防と管理、照林社、東京、2016(2018年3月26日参照)
2)日本創傷・オストミー・失禁管理学会(編):ベストプラクティス スキン-テア(皮膚裂傷)の予防と管理、照林社、東京、2015
3)日本褥瘡学会:褥瘡学会用語集、2007(2018年3月26日参照)


 

本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂

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