生理的黄疸

『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』(サイオ出版)より転載。
今回は生理的黄疸について解説します。

 

香取洋子
北里大学看護学部教授

 

 

新生児の生理的黄疸

黄疸は、ほとんどの新生児にみられる生理的現象である。しかし、早期新生児期はビリルビン代謝の未熟性に加え、哺乳量不足などによってもビリルビン排泄が遅れ、病的黄疸になりやすい(図1図2)。

 

図1 生理的黄疸と病的黄疸の分類

生理的黄疸と病的黄疸の分類

(仁志田博司:新生児学入門、第4版、p.307、医学書院、2012)

 

図2 新生児体内でのビリルビン代謝

新生児体内でのビリルビン代謝

(京田学是、板橋家頭夫:代謝疾患、みる・きく・わかる新生児の症状・所見マスターブック、Neonatal Care、秋季増刊、p.146、2003より改変)

 

とくに、アルブミンと結合していないアンバウンドビリルビン(遊離ビリルビン)には神経毒性があり、新生児の中枢神経系に重篤な後遺症(核黄疸)が残るため、早期発見が重要である。

 

ビリルビンとは

赤血球中のヘモグロビンは酸素とくっついて全身に運ばれる。赤血球は骨髄でつくられ、全身をめぐり、脾臓で壊される。このときヘモグロビンのうち、ヘム(鉄)がとれたものがビリルビンである。

ビリルビンの種類

赤血球が壊れて産生したビリルビンがまだ肝臓でグルクロン酸抱合を受けていない段階を「非抱合型ビリルビン(間接ビリルビン)」、抱合を受けたものを「抱合型ビリルビン(直接ビリルビン)」とよぶ。肝臓でグルクロン酸抱合を受けているか否かの点で異なる。

 

新生児が黄疸になりやすい理由

ビリルビン産生増加
・新生児は生理的に多血である。
・胎児赤血球の寿命が短い(90日)。
呼吸開始により余分な赤血球が破壊される。

 

肝臓におけるビリルビン処理能の低下
・ビリルビンを肝細胞に取り込むY受容タンパクが少ない。
・グルクロン酸抱合酵素の活性が低い。

 

腸肝循環の亢進
・腸肝循環が盛んなため、腸管壁よりビリルビンを再吸収しやすい。
・哺乳が十分確立していないため、胎便の排泄が遅延する。

 

生理的黄疸の特徴

出生後より血清総ビリルビン値(TB)は徐々に上昇し、生後1~3日目より肉眼的黄疸(8mg/dL以上)が出現する。4~5日頃が最もピークとなるが、成熟児の場合18mg/dLを超えることはない(黄疸の基準値は、日齢と出生体重を考慮し判断する)。生後7~10日頃には次第に消退していく。

 

病的黄疸

早発黄疸
生後24時間以内に発現するもの(血液型不適合などの溶血亢進による)
重症黄疸
ビリルビン値が正常の範囲を超えて高いもの(高ビリルビン血症)
遷延性黄疸
生後2週間以降も黄疸が長引くもの(母乳性、肝疾患、代謝疾患など)

 

黄疸のリスク因子の確認1)

新生児の生理的黄疸の発症原因には、母体や家族歴、分娩時や出生後にみられるさまざまなリスク因子がある(表1)。

 

表1 黄疸のリスク因子

黄疸のリスク因子

 

新生児黄疸と原因疾患

先天性胆道閉鎖症

閉塞性黄疸の代表的疾患。腸管への胆汁排泄が障害されているため、外科的手術が必要となる。肝臓でのグルクロン酸抱合は行われているため、血液検査データ上では、非抱合型ビリルビン(間接ビリルビン)よりも抱合型ビリルビン(直接ビリルビン)が高くなる。

 

黄疸

脳性麻痺の原因の1つである。新生児黄疸の治療が発達した現代では、発生頻度は少なくなった。中枢神経系に対し、毒性のある非抱合型ビリルビン(間接ビリルビン)、とくに、アルブミンと結合していないアンバウンドビリルビンによって黄染した状態である。けいれん、後弓反張などの中枢神経症状を呈し、アテトーゼ、難聴どの重篤な後障害をきたすことがある。

 

 

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新生児黄疸のスクリーニング

視診によるスクリーニング

クラマー法皮膚の黄染の広がりを区域に分けて観察する。黄疸は頭から足に向かって出現する(図3)。 

 

図3 クラマーの黄疸進行度

クラマーの黄疸進行度

Zone1:顔面・頭部まで
Zone2:臍部まで
Zone3:大腿部まで
Zone4:膝から足関節、上腕から手関節
Zone5:手掌、足底まで

 

経皮黄疸計(ミノルタ黄疸計)によるスクリーニング

1スイッチを入れ、READYのライトが点灯したら、センサー部を前額部に直角にストロボが光るまで押しあて、測定する(図4)。

 

図4 経皮黄疸計による計測

経皮黄疸計による計測

測定部位は前額部または胸骨、測定回数は1回~3回測定(平均または中央値)があるが、施設で統一した方法で計測する。

 

2設定により測定回数が異なるので注意する(3回測定し平均を出す場合と、1回測定する場合がある)。

3測定値はmg/dLで表示される。

 

 

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引用・参考文献

1) 横山由美、横尾京子:新生児黄疸のアセスメント、新生児黄疸のすべて、Neonatal Care、秋季増刊、p.216、1994

 


 

本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』 編著/立岡弓子/2020年3月刊行/ サイオ出版

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