点眼と臍処置
『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』(サイオ出版)より転載。
今回は点眼と臍処置について解説します。
吉川芙雪
滋賀医科大学医学部看護学科助教
点眼
目的
経産道感染の可能性がある淋菌による新生児眼炎を予防することである。
新生児結膜炎
原因菌としては淋菌、クラミジアが多い。淋菌性結膜炎は生後2~5日目または前期破水例ではより早期に発症し、眼瞼浮腫や結膜浮腫があり、眼脂を認める。クラミジアによる結膜炎は生後5~12日に起こり、膿様眼脂、眼瞼腫脹などを起こす。出生直後の点眼は、淋菌性結膜炎の予防効果はあるが、クラミジア結膜炎の予防効果については否定されている。
必要物品
点眼薬(0.5%エリスロマイシン点眼薬または1%テトラサイクリン眼軟膏もしくは点眼薬、1% 硝酸銀点眼薬)と清浄綿を準備する。
手順(図1)
1処置前に手洗いもしくはアルコール消毒液で手指消毒を行う。
2胎脂、眼脂がある場合には、清浄綿で拭き取る。
3親指で下眼瞼を引き下げて、下眼結膜を露出する。
4結膜嚢または下眼結膜に1滴、滴下する。
5あふれた点眼薬を清浄綿で拭き取る。
点眼のポイント
・出生直後(30分以内)の点眼が望ましい。しかし、早期母子接触の妨げとなるため、1時間以内に行うこととされている。
・点眼薬を使用するときには、薬品名、開封日時を確認してから使用する。
・硝酸銀を使用する場合は、滴下後すぐに生理食塩液で中和する。
・新生児をタオルでくるむと、滴下しやすい。
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臍処置
目的
臍帯切断部、臍帯付着部位を乾燥させ、感染を予防する。
必要物品
消毒液(イソプロピルアルコール、グルコン酸クロルヘキシジン、ポビドンヨードなど)、綿棒、必要であれば臍ガーゼ、テープを準備する。
手順
出生直後(図2)
1処置前に手洗いもしくはアルコール手指消毒薬で消毒を行う。
2綿棒に消毒薬を浸し(もしくはアルコール綿)、臍帯切断部を消毒する。このとき、臍血管(臍帯動脈2本、臍帯静脈1本)、臍帯周囲からの出血、臍輪部の異常(臍帯ヘルニアなど)を確認する。
3続いて、臍輪部から臍帯周囲を消毒する。
4臍ガーゼで臍帯を包みテープで固定する。24時間経過したら臍ガーゼは除去する。また、臍の乾燥を確認したら、臍クリップは除去する。
臍ガーゼの使用について
近年、臍ガーゼをしないほうが臍帯脱落が早いという研究があり、出生直後の消毒から臍ガーゼを使用しない施設もある。
臍帯切断部の消毒
感染予防、早期臍帯脱落の目的で消毒を行うことといわれているが、自然乾燥でも感染率や臍帯脱落時期が変わらない、もしくは早くなるという研究もあるため、24時間経過後毎日消毒を行わない施設もある。
出生24時間以降
1処置前に手洗いもしくはアルコール手指消毒薬で消毒を行う。
2綿棒に消毒薬を浸し(もしくはアルコール綿)、臍帯切断部を消毒する。
3臍帯付着部位、臍輪内側を消毒し、乾燥を促す。
4臍出血の有無、臍帯の乾燥に留意する。臍脱が遅い場合には肉芽を形成することもあるため注意する。
5臍脱後も乾燥するまでアルコール消毒を行う。
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引用・参考文献
1)日本産婦人科学会、日本産婦人科医会:産婦人科診療ガイドライン、産科編2017、2017
2)坂詰朱美他:新生児の臍帯ケアをアルコール消毒から水分拭き取りに切り替えた効果、日本看護学会論文集、ヘルスプロモーション、46:69~72、2015
3)鈴木俊治他編著:超早わかり助産ケア技術、p.221~223、2015
4)竹中友恵:臍トラブルに関する臍処置法の再検討-臍ガーゼの有無の比較、公立能登総合病院医療雑誌、16:20~22、2005
5)仁志田博司編著:産科スタッフのための新生児学-出生から退院までの医療とリスク管理、改訂2版、p.85~86、p.95~97、メディカ出版、2007
本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』 編著/立岡弓子/2020年3月刊行/ サイオ出版