院内助産・助産師外来

『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』(サイオ出版)より転載。
今回は院内助産・助産師外来について解説します。

 

中野育子
滋賀医科大学医学部附属病院看護師長

 

 

「院内助産・助産師外来ガイドライン2018」

2018年、日本看護協会より「院内助産・助産師外来ガイドライン2018」が公表された。従来のガイドラインに比べ、産科医師は、よりハイリスクな対象に専念し、助産師は、妊産婦のケアに責任をもち、正常・異常の判断ができる実践能力を発揮した、チーム医療が推進される現在の周産期医療を鑑みた内容となっている。

 

その内容を参考に、院内助産を準備する人たちのみならず、現在運営している助産師にとっても評価、見直しの参考にしていただきたい。

 

 

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院内助産・助産師外来とは

「院内助産・助産師外来ガイドライン2018」により、院内助産、助産師外来の用語の定義が改訂された。

 

院内助産

緊急時の対応が可能な医療機関において、助産師が妊産褥婦とその家族の意向を尊重しながら、妊娠から産褥1か月頃まで、正常・異常の判断を行い、助産ケアを提供する体制をいう。

 

助産師外来

緊急時の対応が可能な医療機関において、助産師が産科医師と役割分担をし、妊産褥婦とその家族の意向を尊重しながら、健康診査や保健指導を行うことをいう。ただし、産科医師が健康診査を行い、保健指導・母乳外来等のみを助産師が行う場合はこれに含まない。

 

用語の定義改訂の背景

以前は“ 院内助産所” という名称であったが、医療法で「助産所」を想起させることや、正常分娩のみを扱うイメージ、特別に「場所の確保」のイメージにて、「所」を削除し「院内助産」となった。また、妊産褥婦にケアを提供する期間を明確化されたことも今回の変更点である。

 

助産外来については、助産師が行う外来であるが、対象者に明確にわかるよう、「助産師外来」となった。また、対象者を中心に産科医師と助産師が連携・協力することが明確化された。

 

 

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必要な整備

院内助産は、その医療機関における組織としてのあり方を明確にすることが推進されるようになった。そこで、準備に必要な書類一覧を表1に示し、詳細を以下に記載する。

 

表1 院内助産開設時に準備する書類一覧

院内助産開設時に準備する書類一覧

 

理念の明確化

どのような助産ケアをめざすかは、その施設の特性や地域性などにより異なる。そのため、医療施設や所属部署(看護部など)の理念に基づき院内助産の理念を作成することが必要である。

 

院内助産導入時の心がまえ

院内助産導入には、かかわるすべてのスタッフが、同じ認識をもち、かかわる必要がある。

 

実施基準の制定

実施基準は、運営規程、安全管理の指針、対象者の選定基準などが含まれる。

 

運営規程は、組織や運営に必要な事項を明確にしたものであり、目的、基本的な考え、構成員などが含まれる。安全管理の指針は、院内助産・助産師外来の安全管理者を明確にし、その組織の管理状況を示す。助産師の職務範囲と法律において定められた助産師の職務範囲、インシデント・アクシデント発生時の対応、災害発生時の対応、新生児の安全、安全管理教育、感染管理や個人情報の適切な取り扱い等が含まれる。

 

対象者の選定基準は、その院内助産での助産ケアに大きく関与する。そのため、最新版の「産婦人科診療ガイドライン 産科編」や「助産業務ガイドライン」等を参考に産科医師、新生児科医師を含め組織内で十分に検討したうえで基準を作成する。

 

担当・指導する助産師の基準

院内助産・助産師外来を担当する助産師の基準は、一定の水準が必要である。その水準を維持するために、日本看護協会の助産実践能力習熟段階(クリニカルラダー)レベルⅢに相当する助産師が望ましい。

 

実施手順・報告基準

院内助産・助産師外来の緊急時には、産科医師による対応が速やかに実施される必要がある。そこで、産科医師等への相談・報告基準は、最新版の「産婦人科診療ガイドライン 産科編」や「助産業務ガイドライン」等を参考にして、施設に応じた報告基準が必要である。毎回の健康診査時にチェックする項目などを作成するとよい(表2)。

 

表2 妊娠期の報告基準チェック項基準目

妊娠期の報告基準チェック項基準目

(日本産婦人科学会:産婦人科診療ガイドライン産科編、p.301、2017より改変)

 

その他

院内助産の内容を対象者により広めるためのポスターやリーフレットの準備をしておくとよい(図1)。

 

図1 当院での院内助産のパンフレットと院内助産室

院内助産のパンフレットと院内助産室

 

 

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院内助産の実際

院内助産は、関係者の認識にずれがないよう、必要な内容に対して、明確にする必要がある。たとえば、妊婦健康審査から分娩までの流れなど以下に示す(図2)。

 

図2 妊娠から分娩までの流れ

妊娠から分娩までの流れ

 

 

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院内助産の評価

院内助産については、定期的に見直しを行う。内容は、分娩取扱医療機関としての産科診療データ、妊産婦や新生児の転帰に関するデータなどを参考にするとよい。

 

 

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引用・参考文献

1)日本看護協会:院内助産・助産師外来ガイドライン 2018
2)日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会::産婦人科診療ガイドライン 産科編2017

 


 

本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』 編著/立岡弓子/2020年3月刊行/ サイオ出版

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