胎盤の観察
『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』(サイオ出版)より転載。
今回は胎盤の観察について解説します。
立岡弓子
滋賀医科大学医学部看護学科教授
胎盤の観察
胎盤(図1)は、羊膜、絨毛膜有毛部(胎児部分)、基底脱落膜(母体部分)が一緒になって、妊娠16週頃に完成する胎児付属物である。
目的
・胎盤遺残によって起こり得る分娩直後や産褥期の異常を早期に発見する。分娩直後の異常とは、子宮収縮不良や弛緩出血をいい、産褥期の異常とは、子宮復古不全や産褥熱をいう。
・妊娠・分娩による胎内環境を知る。
手順
1胎盤の娩出方法と娩出面を確認する。
2卵膜を確認する。
3胎盤を平らなところに置いて、凝血を取り除き、母体面では分葉、欠損、石灰沈着、白色梗塞(こうそく)について観察する。胎盤がいくつかの区分に別れている分葉には、病的意義はない。
乳白色であり、周囲の実質の組織に比べて著しく硬く触れる。絨毛血管腔が閉塞したり、脱落膜血管の硬化に伴い、壊死をきたした場合に生じやすい。妊娠高血圧症候群や慢性腎炎合併妊娠の場合に、多くみられる。
4胎盤母体面の形状、長径、短径、厚さを測定する。測定は必ず母体面で行う(図2)。
5胎児面では、臍帯付着部位、臍帯血管(図3、図4)、捻転(ねんてん)、結節を確認する。
6臍帯の太さ・長さを確認する。
臍帯の確認ポイント
臍帯の長さは約50~60cm程度である。35cm以下を臍帯過短、75cm以上を臍帯過長という。
7卵膜の3層の膜(基底脱落膜・絨毛膜・羊膜)と強靭度を確認する。
8はかりを用意して、胎盤の重量を測定する。
胎盤の重さ
正期産の胎盤重量は、約500g である。
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臍帯結節
①臍帯真結節 true knots
臍帯に結び目が形成されたものを真結節という(図6)。妊娠期に、母体内にいる胎児が運動している際に、胎児が臍帯の輪を通過することで生じる。臍帯が比較的長いケースに起こりやすい。ほとんど無障害で経過することが多い。
②臍帯偽結節 false knots
臍帯静脈は臍帯動脈よりも長いため、静脈が動脈に巻きついて塊を形成する(図7)。この周囲に、臍帯の組織であるワルトン膠様質(こうようしつ)が集まって肥厚したものを偽結節という。とくに、臨床的意義はない。
石灰沈着
胎盤の石灰沈着は、妊娠高血圧症候群や母体の喫煙による影響により生じやすい(図8)。絨毛の壊死、線維素性変化によるものであり、低酸素状態からカルシウムの沈着が起こるためである。
臍卵膜付着
胎盤から完全に外れて周囲の卵膜から臍帯から派生していることを卵膜付着という(図9)。胎児胎盤機能の低下や母体と胎児間の血流低下により胎児発育不良を生じたり、分娩臍帯圧迫を受けやすく胎児機能不全になりやすい。
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本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』 編著/立岡弓子/2020年3月刊行/ サイオ出版