心不全療養指導士とは？試験の難易度や資格のメリットを解説

 

心不全療養指導士は、心不全の発症・重症化予防に当たる医療者のスキルアップのための資格です。2021年から認定制度が始まり、看護師さんやリハビリ職の方を中心に人気の資格です。

 

この記事では、心不全療養指導士の資格を取るメリット、試験の難易度、勉強方法などについて解説します。

 

 

心不全療養指導士とは？

心不全療養指導士は、心不全の発症・重症化予防のための療養指導について、医療者のスキルアップを図ろうと、2021年に日本循環器学会によって創設された資格です。

 

心不全は、長期にわたる治療や再入院が多い疾病です。患者さんのQOLに悪影響を及ぼしやすく、治療や看護に当たる人の専門的で継続的なサポートが重要になります。

 

心不全療養指導士は、心不全への治療方法の専門家であるだけでなく、運動指導や栄養相談、生活習慣へのアドバイスなど、心不全患者さんの日常生活の支援も行う心強いサポーターです。

 

さらに、心不全の患者さんの数は高齢化に伴い増加しているため、心不全療養指導士の社会的なニーズも増えています。

 

公式サイトによると、2021年の創設から2023年までに、2600人以上の看護師さんが心不全療養指導士の資格を取得しています。

 

 

心不全療養指導士を取得するメリット    

心不全療養指導士を取得するメリットは以下の3点が挙げられます。

 

 

1循環器領域でのスキルアップにつながる    

心不全療養指導士の資格を目指して学ぶことで、心不全に関する体系的な知識や療養指導に関する技術が身につきます。循環器領域で働く看護師さんにとっては大きなスキルアップにつながるでしょう。

 

さらに、試験を受けるまでに、受け持ち患者さんの「症例報告書の作成」をするため、自らの実践を振り返りながら、学習を深めることができます。

 

また、「試験に合格する」という目標があることが、学習のきっかけやモチベーションにもつながります。

 

2患者さん・ご家族のQOL向上のための関わりができる

心不全の患者さんは再入院が多く、患者さんやご家族にとって負担のかかる疾病です。

 

「再入院を繰り返す患者さんに、もっとできることがあるのでは？」
「患者さんの生活にも寄り添ってセルフケアを支援したい」

 

と考えている看護師さんも多いのではないでしょうか。

 

心不全療養指導士は、抑うつ状態の患者さんへの心理的支援や、季節の変化に伴う対処法、旅行時のアドバイスの仕方なども学べます。

 

これまで以上に、患者さんやご家族のQOL向上のための関わりができるようになるでしょう。

 

「患者さんやご家族の日常生活に、もっと寄り添った支援をしたい」と考えている看護師さんにはメリットとなる資格です。

 

 

3多職種チームや地域での連携がしやすくなる

治療が長期にわたることの多い心不全では、チームや在宅医療に関わる職種との連携が重要です。

 

心不全療養指導士はこのような多職種チームの「キープレイヤー」となることが期待されています。

 

試験の前に受講する研修のカリキュラムでも、「チーム医療の提供」「心不全医療における地域連携」といった科目があり、連携の仕方もしっかり学べます。

 

心不全チームのリーダーとしてのスキルアップを考える看護師さんだけでなく、退院支援看護師や訪問看護などに携わりたいと考える看護師さんにもおすすめです。

 

 

心不全療養指導士になるには

心不全療養指導士の受験資格や、認定までの流れ、試験内容などについて解説します。

 

 

心不全療養指導士になるまでの流れ

心不全療養指導士になる流れは以下のようになっています。

 

出典：日本循環器学会「心不全療養指導士 資格を取るまでの流れ」

 

なお、資格は5年ごとに更新が必要です。更新に当たっては、学術集会への参加や追加の症例報告書の提出などの条件があります。

 

 

心不全療養指導士の受験資格

心不全療養指導士の認定試験を受けるためには、以下の受験資格を満たす必要があります。

 

 

心不全療養指導士の受験には、看護師や理学療法士、薬剤師、社会福祉士などの国家資格が必要です。実務経験は不要なので、看護師であれば誰でも受験が可能です。

 

また、日本循環器学会の準会員か正会員になり、入会費と年会費を納めている必要があります。

 

 

e-ラーニングの受講

日本循環器学会に入会後、試験の前日までにe-ラーニングを受講します。

 

e-ラーニングは心不全療養指導士のカリキュラムに沿って展開され、全部で7時間です。早めの段階から少しずつ視聴を進めていくとよいでしょう。

 

 

5つの症例報告書を作成・提出する

心不全療養指導士の受験を申し込むには、事前に5つの症例報告書を作成・提出する必要があります。

 

症例の選び方や症例報告書の様式などは、次の通りです。

 

 

詳しい症例テーマや記載項目などについては、公式サイトを確認しましょう。

 

• 日本循環器学会「症例報告書」

 

症例報告書は、記載の分量が多く、求められている質も高いため、まとまった時間を確保して準備することが必要です。実際に、症例作成にハードルの高さを感じている人も多いようです。

 

報告書の書き方に関しては、日本循環器学会の公式サイトで見本が用意されているほか、相談支援セミナーも開催されています。書き方に不安のある方はこのセミナーを受けてみるとよいかもしれません。

 

• 日本循環器学会「症例報告書作成　相談支援セミナー」

 

 

心不全療養指導士の認定試験の内容

心不全療養指導士の認定試験は、毎年12月に開催され、都道府県ごとに会場が設置されます。

 

問題はマークシート式になっており、e-ラーニングのカリキュラムの中から出題されます。

 

 

心不全療養指導士にかかる費用

心不全療養指導士の取得にかかる費用は、合計で、少なくとも34,000円ほどの費用がかかります。

 

表心不全療養指導士にかかる費用内訳

費目	費用
日本循環器学会入会費	2,000円
日本循環器学会年会費	正会員：15,000円 準会員：8,000円
e-ラーニング受講費用	5,000円
受験料（審査料）	15,000円

 

なお、購入が推奨されている公式テキスト（心不全療養指導士認定試験ガイドブック）の費用（3,960円）なども、必要に応じて加わります。

 

 

心不全療養指導士の難易度や合格率は？

心不全療養指導士の難易度はどのくらいでしょうか？

 

第1回（2021年度）～第3回（2023年度）の合格率は以下の通りです。

 

表心不全療養指導士の合格率

開催回	合格率
第1回	89.5％
第2回	86.2％
第3回	91.8％

出典：日本循環器学会「心不全療養指導士　認定試験」

 

合格率だけを見ると毎年80％後半～90％台で推移しており、試験の難易度は低めと言えます。

 

公式テキストも発売されており、e-ラーニングもあるので勉強はしやすいでしょう。

 

しかし、範囲が広く、5つの症例報告書の作成などもあるため、事前に準備が必要となるという点では、ハードルは低くないとも言えるでしょう。

 

 

心不全療養指導士の過去問ってあるの？勉強方法は？

心不全療養指導士の過去問は、非公開となっています。

 

その代わり、カリキュラムに準拠した公式テキストが発行されており、これを活用するのがおすすめです。

 

また、認定試験までに受講が必要なe-ラーニングに関しては、試験日までに何度も見返すことができます。

 

テキストを活用しつつ、不明な点はe-ラーニングを見返して再確認するといった勉強方法がオーソドックスです。

 

 

まとめ

高齢化が進み、心不全の患者さんも増え、「心不全パンデミック」といった言葉も聞かれるようになりました。

 

そのような中で、心不全患者さんの療養指導に詳しい人材のニーズもいっそう増えていくことが予想されます。

 

循環器領域などでスキルアップを考えている看護師さんにとっては、心不全療養指導士はおすすめの資格と言えるのではないでしょうか。

 

執筆：看護roo!編集部　鈴木涼太