2021年の新人看護師、「実習不足」の影響を感じますか?新人&先輩ナースに聞いた
新型コロナの流行で、学生時代には病院実習が中止になるなどの影響があった2021年の新人看護師たち。
入職して3カ月あまりが過ぎた今、その影響をどう感じているのでしょうか。
看護roo!が、新人看護師と先輩看護師のそれぞれに行ったアンケート結果から見てみました。
【アンケート概要】
2021年6月8日~16日、全国の新人看護師(2021年度の新卒入職者)と2年目以上の看護師を対象に、それぞれインターネット調査を実施。有効回答数は新人看護師466人、2年目以上の看護師2571人。
新人看護師の6割「実習不足の影響が心配だった」
アンケート結果によると、昨年度の病院実習が「ほぼ中止または一部中止となり、学内演習に変更された」と答えた新人看護師は約8割に上りました。
「中止にはならなかったが、実習期間が短縮された」を含めると9割を超え、2021年の新人看護師は学生時代、病院実習の機会が本来より少なかったことがあらためてわかります。
では、実際に入職するに当たって、病院実習が少ないことの影響をどう感じていたのでしょうか?
今回のアンケートでは、「とても心配だった」「心配だった」とする回答は合わせて6割となりました。
心配だったとする人は、特にどんなことを不安に思っていたのでしょうか?
今回のアンケートでは、特に「臨床で行う看護技術」が心配だったという人が96.9%と圧倒的に多く、ほかに、ケア以外の業務やコミュニケーション面についての心配も目立ちました。
看護学生を対象にした昨年のアンケートでも心配の声が多く寄せられていましたが、「実習でいろいろ経験できなかったけど、大丈夫だろうか」という不安を抱えたまま入職した様子がうかがえます。
「入職後に学んでいけば良い」という人も
一方で、病院実習が少なかったことを特に心配していなかったという新人看護師も約4割いました。
「自分だけじゃない」「実習と実際の現場は違う」「入職後に学んでいけば良い」と、気持ちを切り替えて入職に臨んでいたようです。
また、勤務先や学校のフォローも安心感につながっていた様子が読み取れます。
入職後は「心配したほどでもなかった」という人も?
それでは、新人看護師たちは「実際に入職した後に」実習不足の影響を感じているのでしょうか?
今回のアンケートでは、実習不足の影響を「とても感じる」「やや感じる」とした人は約40%で、「あまり感じない」「まったく感じない」の約44%が上回る結果に。
「心配だったけど、実際に入職してみたら、それほどではなかったかも?」と思えた人が一定数いたようです。
とは言っても、やはり「実習で経験できていたら…」と思っている新人看護師も少なくありません。
寄せられたコメントからは、特に、最終学年の統合実習ができなかったことで多重課題への対応に苦労していたり、1年近く病棟に入れず、基本的な技術や患者さんへの接し方がわからなくなっていたりなどで、つまずいている様子がうかがえました。
また、「実習に行けていた同期との差が目に見えてわかり、つらい」など、新人同士で違いが出てしまうことに悩む声もありました。
「実習不足の影響を感じる場面」についての回答コメント(抜粋)
- 多重課題の優先順位など、学内では学ばなかったことを臨床で目の当たりにし、戸惑う毎日が続いています。
- 同期で実習に行けてた人と、動きや多重課題への対応に差を感じた。
- 当初はそんなに影響はないと感じていたが、実際に入職して、基本的な清潔援助など、いろいろ技術を忘れていて困った。
- 清拭、陰部洗浄など学生でもできるケアの経験が浅く、入職してからの負担が増えた。
- 記録などの言葉の選び方だったりも忘れてしまっていて、本当に今も苦労しています。
- 患者さんと関わる機会がないに等しい1年だったため、コミュニケーションをどう取ったら良いのか分からなくなってしまっていた。
先輩たちはどうフォローしている?
こうした不安や悩みを持つ2021年の新人看護師を、先輩ナースたちはどのように受け止めているのでしょうか。
先輩の目から見て、今年の新人に病院実習が不足した影響を感じるか尋ねたところ、「影響を感じる」とする回答(計43.6%)が「感じない」の回答(計37.3%)をやや上回る結果となりました。
特に影響を感じる場面としては「患者さんとのコミュニケーション」を指摘する声が目立ったほか、清潔ケアなど基本的な看護技術が未経験であることや、実習不足からくる自信のなさ・強い緊張があることを挙げるコメントも多く見られました。
例年以上の戸惑いを見せる新人ナースに対して、先輩ナースたちも気遣いながら接している状況が浮かび上がります。
新人の状況を理解して「病棟全体でサポートする」
ただ、ほとんどの先輩ナースは、コロナの影響が背景にあったことを理解しています。
だからこそ、「実習に行けなかった分は、現場で丁寧に育てる」「同じチームの一員として働けるようにサポートする」と、温かく成長を見守ろうとする声が数多く寄せられました。
「2021年の新人看護師教育について感じていること」の回答コメント(抜粋)
- 臨床実習ができず不安を抱えている子が多いので、フォローするよう声掛けしている。
- 例年以上に、しっかり見学できる時間をとっている。ゆっくり成長、という感じ。
- 実習に制限があって大変だったと思うけど、全力でサポートする姿勢を病棟全体で作り上げる。
- 制限された実習の中でも得るものはあったはずなので、習ったスキルを生かせるようにお互い刺激し合ってスキルアップできたらと思う。
- 実習期間が少ないので、その分、現場をしっかり経験できるように一緒に動いていこうと思う。
- 実習を経験できずに入職していることに引け目や不安を感じている方が多く、できることが増えていること、チームの一員として働いていることを感じて一歩一歩成長していけるように支援しています。
また、コロナ禍で同期・先輩との交流や息抜きの機会も制限されている状況のため、「ストレスを抱えこまないように話しやすい雰囲気をつくろう」と意識しているコメントも多く見られました。
「それぞれの現場でフォロー」は負担も…
今回のアンケート結果からは、新型コロナの影響を受けて不安を抱えながらも頑張る新人看護師の姿と、そんな新人たちをしっかりサポートしようと努力している現場の思いが浮かび上がります。
ただし、こうした状況は、新人看護師にとっても先輩看護師にとっても負担になっている面も否定できません。
自由記述のコメントからは
- 現場で教える・学ぶことが増え、教える側も新人も負担が大きい
- 現場も忙しく、新人を早く育てなければと焦り、余裕がない
- (技術習得をサポートする)スタッフの確保が難しい
といった意見も…。
人手不足の中、例年にも増して手厚い教育と病棟業務を両立させることの大変さがにじみます。
看護の現場が安心して人材育成に取り組むためにも、新型コロナの一日も早い収束が望まれます。
看護roo!編集部 烏美紀子(@karasumikiko)
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