バラエティー番組を、あるいは大喜利を楽しむように呼吸器を学ぶ|ヤンデル書房(8)

ヤンデル書房タイトルイラスト

Twitterフォロワー数12万人、ツイート数は50万の大台に乗った医師・ヤンデル先生が「本屋さん」になって、看護師のみんなにおすすめの本を紹介してくれます。

 

文:ヤンデル(病理医)

イラストレーション:ネモトマ

 

ヤンデル書房~看護師だけのヒミツの本屋

Vol.8 ナース・研修医のための Dr.倉原の呼吸にまつわる数字のはなし

 

こんにちは。お探しものがございましたらお気軽にお声がけくださいね。

 

……えっ、探しものはとくにないけど、棚を見ておもしろそうな本があったら買ってみようと思った? 

 

そうやって言っていただけるのは本当にうれしいです、どうもありがとうございます。

ちょうど、「呼吸器」の棚を整理していたところでしたので、よかったら見ていきませんか?

 

呼吸生理や呼吸器疾患のジャンルには、名著がたくさんあるんですけれど、今回はこちらの本を「面陳」でプッシュしようと思っています。「ジャンルに入るきっかけ」として、もってこいの本。

 

『ナース・研修医のためのDr.倉原の呼吸にまつわる数字のはなし』(著者:倉原優)のオススメポイント画像。1)5秒間、2万円、10年…呼吸器分野を「数字」で解説、2)まるで大喜利かバラエティー番組みたいなおもしろさ、3)単元ごとに短い記事&4コマ漫画

『ナース・研修医のためのDr.倉原の呼吸にまつわる数字のはなし』(メディカ出版)

 

 

数字の「お題」で読み解くおもしろさ

表紙にばっちり、「ナース・研修医のための」とあります。

 

「すごく読みやすい入門書なんだろうな」と直感しますよね。

 

さっそく中身を見てください、期待を裏切りませんよ。なんてわかりやすいんだろう、なんて読みやすいんだろうと、感心すること間違いなしです。

 

ひとつの単元の長さがせいぜい3~4ページ、しかもそのうちの1ページは半分が4コママンガ。

 

先月の血栓・止血でおすすめした本もそうでしたが、短くてすぐ読み終わるような記事をいっぱい詰めこんだ本は、ちょっとした空き時間に少しずつ読み進めることができて、時間のない看護師さんにとってすごく便利です。

 

挿絵イラスト。雨の本屋の店先で傘をたたむブタさん

 

そして、ひとつひとつの単元が短いだけじゃなく、「お題」がおもしろい。

 

書名にもあるとおり、必ず「数字」がモチーフになっているんです。

 

ざっと目次に目を通してみましょう。

 

 

  • 5秒間
  • 2万円
  • 200
  • 10年
  • 6Fr

 

 

こんなかんじで、さまざまな数字が44項目も並びます。「えっ、これが医学書?」と驚きますよね。これらの数字は、呼吸器科と何の関係があるんだろう……。

 

実は、こういう内容を説明しているんです。

 

 

  • 吸入薬の息止めの時間(5秒間)
  • 在宅酸素療法の月あたりの値段(2万円)
  • 下回ったら慌てたほうがよいピークフロー値(200)
  • 喫煙者と非喫煙者の平均寿命の差(10年)
  • 最細の胸腔ドレーン(6 Fr)

 

 

普通の医学書なら、こっちの「内容」のほうをタイトルにすると思うんですけれど、あえて「数字」を前面に押し出してフィーチャーしているところがうまいなあと思います。

 

「I型呼吸不全とII型呼吸不全の分かれ目となる動脈血二酸化炭素分圧は?」みたいなタイトルのコラムなんて読みたくないですが、

 

「45 mmHg」

 

とだけ書かれていると、「おっ、何の数字かな?」と興味を惹かれます。

 

お題ベースのバラエティー番組、あるいは大喜利を見るような感覚で、読み進めることができる。

 

呼吸生理や呼吸器疾患にまつわる専門用語は、学生時代の教科書をくまなく見返せば、どこかに必ず書いてあるのですが、そう簡単に身につくものではないです。一度習っただけで覚えられたら苦労はありませんよね。

 

でも、どんな病棟の患者さんも、呼吸機能については評価が必要です。となると、どこかのタイミングで必ず、腰を据えて勉強し直さなければいけない……。そんなの、おっくうですよね。

 

ですから、まずは一冊、ラクに取り組めるものがあるといい……。いわゆる「入門書」です。

 

なお、この本は、入門……「門から入る」よりもさらに一つ前の段階、すなわち「門を見つける」ための本かもしれません。広くて込み入った世界に、どこから入っていいかわからない人のために、一番くぐりやすそうな門を示してくれる本。

挿絵イラスト②。本棚から1冊手に取るブタさん

 

 

タダモノじゃない著者を…推す!

本書は、ナースや研修医などの初学者の気持ちをよーく考えて作られた、とても巧みな本です。それもそのはず、書き手がタダモノではありません

 

著者の倉原優先生は、ものすごい数の医学書を書かれている方です。医者としてお勤めの年数を考えると、おそらく、国内で一番教科書を書く人の一人ではないかな?

 

彼よりハイペースで本を書く人となると、ほかには岩田健太郎先生くらいしか思い付きません。國松淳和先生並み、というと、わかる人にはすごさがわかります。

 

倉原先生は、呼吸器専門医向けのしっかりした専門書を書かれると同時に、ブログベースで学生にもわかりやすい入門書もお書きになる。読者対象ごとに、筆致を自在に使い分け、難易度別に本を書き分けていらっしゃる方です。

 

そんな彼の膨大な著作の中で、本書は最もライトで、コミカルで、含まれている情報量が多い。ここが狙い目だな、とピンと来たのです。倉原先生の本を読むなら、ここを入口とすればいい!

 

私は先ほど、「呼吸器の棚を整理していた」と申し上げましたが、実は呼吸器コーナーの一角に倉原先生の著作を集めていたところなのです。同じ著者の本だけまとめてコーナーが作れるのが倉原先生のすごいところです。

 

あ、こっちも気になります?

 

今月のもう1冊『ナースのための世界一わかりやすい呼吸器診断学』(著者:倉原優)の書影

 『ナースのための世界一わかりやすい呼吸器診断学』(金芳堂)。

 

これも名著ですよ。両方読んでほしいな、たとえば「数字」を読んでから「世界一」、あるいはその逆でもいいかな。そのあとは他の著者の本へ……。

 

私のやってることって、「推しのバンドの音源をどの順番に人に勧めるか」みたいな感じに近いかもしれません。いきなりコアでエモいものから勧めても普通の人はついていけないから、最初はちょっとポップ寄りのものから勧める、みたいな……。

 

 

ヤンデル書房 店主

病理医ヤンデル(市原真/いちはら・しん

1978年生まれ。2003年北海道大学医学部卒、国立がんセンター中央病院(現国立がん研究センター中央病院)、札幌厚生病院病理診断科。現在、同科主任部長。医学博士。病理専門医。著書に『症状を知り、病気を探る』(照林社)、『いち病理医の「リアル」』(丸善出版)、『病理医ヤンデルのおおまじめなひとりごと』(大和書房)など。Twitterブログnoteなどで発信中。良い本を人におすすめするのが大好き。

 

 

ナース・研修医のための Dr.倉原の 呼吸にまつわる数字のはなし

■著者:倉原 優

■発行:メディカ出版(2019/01/22)

■判型:A5判、176ページ

■定価:本体2,200円+税

■ISBN-13: 978-4840468527

 

ナースのための世界一わかりやすい呼吸器診断学

■著者:倉原 優

■発行:金芳堂(2016/10/14)

■判型:A5判、224ページ

■定価:本体2,800円+税

■ISBN-13: 978-4765316927

 

編集/烏美紀子(看護roo!編集部)

 

 

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