新型コロナ、看護師の養成に打撃「実習先がない」「来年の就職が不安」|看護学生アンケート

新型コロナウイルス感染拡大が、看護師の養成にも大きな影響を及ぼしています。

 

看護学校では休校や病院実習の中止が続き、来春に向けた看護師採用が遅れている医療機関も少なくありません。例年2月に行われる看護師国家試験についても現時点での見通しは不透明です。

 

看護学生からは「病棟での実習なしに看護師として働くことになるのか」「国試の勉強も就職活動も進まず、不安で眠れない」などの声が上がっています。

 

看護roo!は、看護学生を対象に緊急アンケートを実施。看護学生に対する新型コロナウイルスの影響をまとめました。

 

【アンケート概要】

2020年4月30日~5月6日、全国の看護学生を対象にインターネット調査を実施。有効回答数は2010人。回答者の所属校は大学33.6%、専門学校59.6%、短大・高専・5年一貫校6.8%。

 

 

看護学校の授業の実施状況は?

看護学校の休校状況、授業の実施状況について見てみます。

 

授業の再開「未定」も2割

ほかの教育機関と同じく、看護学校もほとんどが休校しています。

 

 

授業の再開予定は「5月から」が最も多く、合わせて52.4%です。

 

ただし、その多くは「5月7日ごろ」がめど。緊急事態宣言の延長に伴って、再開日も延期されているとみられます。

 

「授業の再開日は未定」とする回答も20.1%に上り、先の見通しが立たない中で、学校側も対応に苦慮している様子がうかがえます。

 

 

休校中は課題やオンライン授業に切り替え

休校期間中の学習については、どう対応されているのでしょうか。

休校していると回答した1980人に代替授業などの状況を尋ねました。

 

 

休校の間は、学生それぞれが課題や自主学習プログラムに取り組むのを中心としつつ、一部の学校でオンライン授業による対応が行われているようです。「その他」の中にも「現在は自主学習のみだが、今後オンライン授業が始まる」といった回答が目立ちました。

 

その一方で、「代替授業や自主学習プログラムなどがない」とする回答も5.9%あり、学生へのサポート状況に差が生じています。

 

 

医療機関での実習は軒並み延期・中止に

看護学生が実際の医療機関などで学ぶ実習(臨地実習、病院実習)は、軒並み延期や中止となっています。

 

 

例年、実習先となってきた施設も、新型コロナウイルス感染症への対応で人手も個人防護具も不足。学生の受け入れを断らざるを得ない状況です。アンケートでも、実習再開のめどが立たない現状がはっきりと表れました。

 

厚生労働省は実習施設が確保できない場合は、学内の演習に代えてもよいとしています。

 

アンケートでは「5月から学内演習・オンライン実習に切り替えの予定」などの回答が多くあり、「5月以降に再開予定」としている中には、こうした「学内演習による再開」も相当数、含まれると推測されます。

 

 

「 臨床を経験せず看護師になるのが怖い」

学内の演習で履修単位は認められるものの、「実際の病院で実習できないまま、看護師になること」に、多くの学生が不安をつのらせています。

 

 

  • 病棟での実習が行えないので、明らかに経験が不足する
  • 実習ができず、看護師になってから初めて患者さんに接するのは不安
  • 病院実習が十分にできないまま卒業するのは怖い
  • 臨床で学べることが限られてしまい、「コロナ世代」と呼ばれることに不安や悲しみを感じている

 

 

 

また、今後、医療機関での実習が再開した場合の感染リスクや、実習スケジュールを心配する声も。

 

 

  • 病院実習で患者にコロナウイルスをうつしてしまう、自分にコロナがうつることが不安
  • 臨地実習が再開したら、国家試験の直前まで詰め込まれることになり、試験勉強に影響が出そう

 

 

患者さんと接してケアを学ぶ臨地実習は、看護学生の学びの中で大きなウェイトを占めるだけに困惑している学生の姿がうかがえます。

 

 

就職活動への影響は?

来春に卒業を控えている看護学生にとっては、就職活動への影響も深刻です。

 

「病院の選考が遅れている・止まっている」

看護学生の場合、医療機関による奨学金を利用しているなどで就職先が既に決まっているケースを除けば、2月から夏にかけて、病院説明会・病院見学やインターンに参加したり、採用試験に臨んだりと、就職活動が本格化するころ。

 

しかし、アンケートからは、参加する予定だった病院説明会などが中止になる病院・施設の採用が止まっているなど、厳しい現状が読み取れます。

 

 

学生からは、動くに動けない就活への戸惑いやいらだちの声が多く寄せられました。

 

 

  • 就職試験の日程が延期され、いつ受験できるのかわからない
  • インターンや説明会もないのに応募締切が近づいて、就職先を決められない
  • Uターン就職を考えているが、移動制限もあり、就活に限界を感じている
  • 6月末まで就活が中止になり、その後も就職試験で県外に出たら2週間(登校を)自粛しなくてはらない。その間、実習を進められなくなるので困っている
  • 学校の立ち入りが禁止され、就職活動の相談を教員にできない

 

 

 

国試の日程、4人に1人が延期を希望

学習や就職活動が思うように進まない中、例年2月に行われる看護師国家試験に関する不安も大きくなっています。

 

例年どおりの実施を望むか、延期してほしいかを尋ねた結果は次の通り。

 

 

半数以上は例年どおりの日程で実施してほしいと考えていますが、4人に1人は延期を望んでいました

 

ただし、「授業や実習などの遅れで、国試の勉強が不十分になる」「国試の日程などがどうなるのか、わからなくて不安」という声は、どの回答を選んだ学生にも共通しています。

 

厚労省は看護roo!の取材に対し、「現時点で延期や中止は検討していない。今後の拡大の状況を注視しながら、看護学生の混乱をきたさないよう最大限に配慮していきたい」としています。

 

 

経済困窮で1割の学生が「学費納付に不安」

経済的な困窮から、看護師を目指して学び続けることに困難を感じている学生も出ています。

 

家庭の経済状況が悪化したり、アルバイトができなかったりなどで「学費の納付に不安がある」とした人は11.7%

 

「奨学金を利用しているが、学費のすべてはまかなえない」

「学費は奨学金を利用しているが、生活費がなくなってきている」

「退学を検討している」

 

などのコメントもあり、看護師不足対策という観点からも、看護学生への経済的なサポートが急務となっています。

 

 

看護師を目指す気持ちに変化は…?

最後に、今回の新型コロナウイルスをめぐる状況を受けて、「看護師を目指す気持ちに変化があったか」を尋ねました。

 

約9割の看護学生は「これまでと変わらず看護師として働く」と答えています。自由記載には「新型コロナウイルスと戦う看護師がかっこよく、むしろ看護師になりたい気持ちが強くなった」というコメントもありました。

 

その一方で、「新型コロナウイルスの影響で、看護師として働く気持ちが揺らいでいる・働く予定を変更した」の回答も4.6%となっています。

 

「気持ちが揺らいでいる」と回答した人の中には

 

「医療従事者への偏見が続き、看護師というだけで結婚できない・誰とも暮らせないとか、そんなふうになるのではないかと不安」

 

という声もありました。

 

 

まとめ

今回の看護学生アンケートの結果からは、授業も実習も就職活動も国試も、「何もかもが例年と違い、どうなるかわからない」状況に不安を抱えている看護学生の姿が浮き彫りになりました。

 

休校や実習の延期・中止が長引けば、オンラインによる授業・演習を充実させる看護師として働き始めた後にしっかりしたフォロー研修を行うといった対策が必要です。

 

看護師不足への対策は、これまでも国を挙げて取り組まれてきた課題。個々の学校や医療機関だけでは限界があり、行政によるサポートも求められそうです。

 

 

看護roo!編集部 烏美紀子(@karasumikiko

 

 

(参考)

新型コロナウイルス感染症の発生に伴う医療関係職種等の各学校、養成所 及び養成施設等の対応について(文部科学省・厚生労働省事務連絡令和2年2月28日)

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