働き方改革法、看護師の労働環境はどう変わる?前残業や研修の扱いは?|看護roo!ニュース

2019年4月から「働き方改革関連法」が施行されました。

 

看護師の働き方はどう変わるのでしょうか?

 

働き方改革関連法のうち、看護師にとってかかわりの深いポイントをチェック! 残業時間や有給休暇の取得率など、現状のデータも合わせて見ていきます。

 

 

看護師の働き方改革、3つのポイント

働き方改革関連法で、特に看護師に関係するのは次の3つです。

 

 

 

ポイント1:時間外労働の上限が規制される

1つ目のポイントは時間外労働(残業)の上限規制です。

 

残業時間の上限は、原則として月45時間・年360時間となります。

 

「特別な事情」がない限り、これを超えて残業することはできません。違反した場合は、罰則(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)が事業者に科されます。

 

また、繁忙期や突発的な対応が必要などの「特別な事情」があるとしても、無制限に残業が認められるわけではありません。いくつかある条件の範囲内に収める必要があり、かつ「特別な事情」が認められるのも年6回までです。

 

 

この罰則付き上限規制が2019年4月から適用されるのは「大企業」。医療法人で言えば、常時使用する労働者(パート含む)が100人超の法人が大企業に当たります。それ以下の「中小企業」には猶予があり、2020年4月からの適用となります。

 

また、医師への適用は2024年4月まで猶予され、上限時間も別に設定されます=関連記事=。

 

 

前残業に院内研修…ちゃんと「残業」扱いされる?

原則月45時間の残業時間とは、一般に1日あたり2時間に相当します。

 

日本医療労働組合連合会(医労連)の2017年調査では、約1.8%の看護職員が月50時間を超える残業をしていました

 

また、日本看護協会の看護職員実態調査(2017年)によると、「1か月間に超過勤務をした」と回答した看護職員は85.7%。その時間は平均で月18時間46分でしたが、このうち残業として申請されていたのは約8時間分だけにとどまっていました

 

出典:日本医療労働組合連合会「看護職員の労働実態調査(2017年)」、日本看護協会「2017年看護職員実態調査」

※日看協調査で平均残業時間が2017年に大幅に増加したのは調査時、「着替えや前残業の時間なども含む」と注釈を追加した影響による可能性あり

 

 

これらの調査結果からは、月45時間を上回って残業をしている看護師はそう多くないものの、労働時間が正しく管理されているとは言えない実態がうかがえます。

 

労働時間の考え方に関する国のガイドラインを基に、日看協は、暗黙のうちにサービス残業とされがちな、次のような時間も「きちんと労働時間として扱うべき、時間外手当の対象になる」としています。

 

▼業務上の必要があって受講を指示された研修、指示による自己学習(自己研鑽)などの時間

▼業務の準備に必要な時間が労働時間内に確保されておらず、「始業30分前に来て情報収集する」など早く出勤する必要がある場合

▼業務の開始前・終了後の着替えの時間

 

今回の働き方改革関連法では「労働時間を適正に把握する義務」も明確化されました

前残業などの時間が、それぞれの職場でどのように扱われているか、あらためて確認する必要があります。

 

 

ポイント2:有休取得5日が義務付け

働き方改革関連法2つ目のポイントは、年5日の年次有給休暇の取得の義務化です。

 

正職員、パートタイムに関係なく、勤続半年以上で年10日以上の有休が付与されている人全員が対象になります。本人の希望を聞いた上で、最低でも年5日は有休を確実に取得させることが義務付けられました

 

前述の日看協調査では、看護職員の有休取得日数は平均8.5日。医労連の調査でも8.9日で、義務化された最低限の日数は、おおむねクリアしているようです。

 

一方、医労連の調査によると、「5日以下」の回答も29.9%に上っています。

 

特に若い世代の有休取得率が低い傾向で「20~24歳」では有給取得ゼロが4.8%と、他年代より多いことが指摘されています。

 

今回の義務化では、本人が希望を申請する従来の方法だけでなく、「事業者側が希望を聞いて時期を指定する」という方法が新設されました。有休希望を出しにくい若手も休みやすくなることが期待されます。

 

 

 

ポイント3:勤務間インターバルは努力義務

看護師にかかわりの深い働き方改革のポイントの3つ目は、勤務間インターバル制度の導入です。

 

罰則付きの義務化だった上の2つのポイントに対し、勤務間インターバル制度は「制度の導入に努める」という努力義務にとどまります。

 

医労連の調査では「一番短い勤務間隔は何時間だったか」についても尋ねており、その結果は次の通りです。

 

出典:日本医療労働組合連合会「看護職員の労働実態調査(2017年)」

 

3交代勤務では、勤務間インターバルが8時間未満という割合が43.7%に上ります。

 

日看協は、看護師の健康と患者の安全を守るために「勤務間インターバルは11時間以上を確保すること」と提言しています。どの職場も看護師不足にあえぐ中、制度の導入や適切な運用がどこまで広がるかが注目されます。

 

 

自分の労働環境はおかしいんじゃないか、それともこれが当たり前なのか…。激務に追われる中で、何が本来の基準なのか、分からなくなることもあるかもしれません。まずは法律の基本的なポイントを知っておくことが大切です。

 

看護roo!編集部 烏美紀子(@karasumikiko

 

 

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(参考)

働き方改革特設サイト(厚生労働省)

看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン

2017年看護職員実態調査日本看護協会

看護職員の労働実態調査「報告書」2017年(日本医療労働組合連合会)

日本看護協会要望(2018年4月20日)

 

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