看護師へのタスク・シフティング、やっぱり「もう実施済み」

「医師の働き方改革」をめぐって、看護師をはじめとした他職種に医師の業務を分担するタスク・シフティングが必要だと言われています。

 

ですが、分担する業務として示された静脈採血や入院の説明などは、「既にわたしたち看護師の仕事になってますよね?」という印象も…。

 

全国の病院でのタスク・シフティングの実施状況がどうなっているのか、厚生労働省がこのほどまとめたデータを見てみましょう。

 

 

ほとんどの項目が実施率9割超だった

タスク・シフティングの取り組み状況は、次の通りです。

 

大学病院

 

大学病院以外

 

タスク・シフティングは、厚労省の「医師の働き方改革に関する検討会」が2018年2月、すぐにも対応すべき「緊急的な取り組み」の一つとしてまとめ、全国の病院に通知。上のグラフは、通知を受けてどれだけ取り組みが進んだのか、厚労省が全国の病院管理者を対象に調査した結果です(調査期間:5月28日~6月11日)。

 

一見してわかるように、今回、医師から他職種にシフトすべきとされた10項目の業務は、やはりほとんどの病院で通知以前から看護師や薬剤師、医療クラークなどの他職種に分担されていました

 

強いて言えば、大学病院では「初療時の予診」、大学病院以外では「診断書等の代行入力」の取り組みが鈍いようですが、それでも7~8割の病院が「通知以前から原則実施または一部実施している」と回答しています。その他の項目はいずれも9割超でした。

 

 

特定行為研修、受講推進の取り組みはいまひとつ

「緊急的な取り組み」ではタスク・シフティングに関連して、特定行為研修を受講する看護師を増やすことなども求めています。

 

特定行為研修の修了者が勤務している」と回答したのは大学病院52件(42.6%)、大学病院以外199件(15.5%)で、このうち「増員の予定がある」としたのは大学病院が29件、大学病院以外では73件でした。

 

また、特定行為研修の受講を推進する取り組みを「以前から実施している」としたのは、大学病院45件(40.2%)、大学病院以外265件(24.7%)。今回の通知を受けて「取り組みを開始した」との回答は大学病院4件(3.3%)、大学病院以外13件(1.2%)にとどまりました。

 

 

さらなるタスクシフトを検討も

 

国の検討会は、タスク・シフティングが十分に進んでいない現場の勤務環境が医師の長時間勤務の要因の一つだとしています。

 

しかし、少なくとも今回の10項目については、既に他職種に移管していることが明らか。看護roo!が行ったアンケート(2018年1~2月)でも「普通に看護師がやっている」「もうやっているにもかかわらず、医師の労働時間は減っていない」といった声が寄せられています。

 

つまり、「この10項目のタスク・シフティングは十分に進んでいるが、それでもなお医師の負担は軽くなっていない」のが現状というわけです。

 

「緊急的な取り組み」では医師の労働時間短縮に向けて、タスク・シフティングのほかに、勤務間インターバルの導入や連続勤務時間の制限なども盛り込まれていますが、いずれも実施率は低く、検討会は9月、「さらなるタスクシフトの在り方」を議論するとしています。

 

看護師にとっては、医師からシフトする業務が増える可能性もあり、今後の議論の行方に注目です。

 

【烏美紀子(看護roo!編集部)】

 

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(参考)

「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組」 の実施状況について・PDF(厚生労働省)

医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組・PDF(厚生労働省)

医師の働き方改革に関する検討会 中間的な論点整理・PDF(厚生労働省)

 

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