プリセプターによくあるお悩み7つと解決のためのアドバイス

プリセプターのお悩み7選と解決法のタイトル 新人が打ち解けようとしてくれない! 指導以外に気を遣うことが多すぎる!板挟みがつらい!何でも屋になってる!優先順位の付け方の指導がわからない。自分は指導に向いていない。どうしたら新人が成長するのかわからない!

プリセプターは、悩みの多い役割。

自分の業務に加え、新人指導や上長との折衝…。お悩みの幅は多岐にわたります。

プリセプターがよく感じるお悩み7選と、解決のためのアドバイスをご紹介します。

 

執筆/白石弓夏 看護師

監修/上村美穂

川崎市立多摩病院(指定管理者 聖マリアンナ医科大学)

教育担当師長、集中ケア認定看護師

 

連載:初めてのプリセプター。これさえ読んでおけば大丈夫!

Vol.7 プリセプターによくあるお悩み7つと解決のためのアドバイス

 

【1】板挟みがつらい!

先輩と後輩との板ばさみになるプリセプターのイラスト

 

  • 新人の指導中に人手が足りず、緊急入院をとったことがありました。その間、新人を放置してしまって…。先輩に「振り返りはどうしたの?」とか怒られたんですが、「じゃあどっちやればよかったんだよ~」って思います。(Aさん)
  • 新人と「今日はこれを学ぼうね」とスケジュール立てたうえで業務にあたっているとき。7年目の先輩に「これから輸血するんだけど見る?」って突然言われて。でもそれでスケジュールが遅れたら、「新人を残業させて何やってるの!」って怒られるのも私なので、これぞ板挟み!という悩みはあります。(Bさん)

 

●悩んでいるプリセプターへのアドバイス

「板挟み」の状況は、先輩たちが一緒に新人を育てているのではなく、プリセプター一人に指導を任せている状態です。

 

この連載で何度も言及してきた通り、新人は組織で育てるもの。

 

部署の体制を見直すきっかけになるよう、困ったりモヤモヤすることがあれば、上長に報連相(報告・連絡・相談)しましょう。

 

すぐには変わらないかもしれませんが、何もしなければそのままの状態が続いてしまいます。

話しやすく信頼している先輩からでもいいので、伝えていきましょう。

 

 

【2】新人が打ち解けようとしてくれない!

休憩室で打ち解けようとしてくれず、席をたつ新人に戸惑うプリセプターのイラスト

 

  • 入職から半年経った今でも、新人は別の部屋で食べています。「それじゃあコミュニケーション能力が養われないから~」って言ってるんですけど変わりません。休憩室だからこそフランクに話せることもあると思うんですけどね…。(Cさん)

 

●悩んでいるプリセプターへのアドバイス

プリセプターは「新人の相談役」と言われて任命される場合も多く、責任感が強いプリセプターほど頑張って親しくなろうとする傾向にあるようです。

 

でも「新人のほうから打ち解ける姿勢を見せるべき」という自分の理想をすべての新人に当てはめないほうがいいでしょう。

 

親しくなることと、相談役は違います。

看護師として成長するために見守り、新人にとって必要なときに相談に乗るのがプリセプターの役割です。

 

新人の個性をよく見極めて、何が新人の看護師としての成長にとって一番有意義なことか考えたうえで、良い距離感をつかんでいってください。

 

 

【3】何でも屋になってる!

タスクという箱を積まれて、なんでも屋さんになったように感じているプリセプターのイラスト

 

  • 私の勤務先では、プリの役割は技術指導ではなく「相談役」。技術指導やOJTはアソシエイトなど5~6年目のさらに上の先輩が教えることになっています。でも実際は人手不足だし、上の先輩は何もやってくれないしで、技術指導から自分の業務、相談役まで3年目が全部やっている形になっています。(Dさん)
  • 「新人ができてないのはプリのせい」と言われるのがつらいです。「新人はみんなで育てるからね」という建前で始めたのに、いざ何か起こったら、たとえ勤務に入っていないときのことでも、責められるのは私。「その日いなかったから知らないよ。その日のフォローに入る先輩が助けてあげてよ」って思います。(Eさん)

 

●悩んでいるプリセプターへのアドバイス

「何でも屋になっている」という悩みをそのままにしてしまうと、また同様に悩むのが次年度のプリセプターです。

 

「新人をチームで育てる」風土を作り上げていくためにも、自分一人で抱え込まずに、部署の問題として上長に報連相をしていってください。

 

同じように悩んでいるプリセプターがいれば、一緒に報告に行くのも有効な方法の一つです。

 

 

【4】どうしたら新人が成長するのかわからない!

プリセプティという苗をどのように育てるか迷っているプリセプターのイラスト

 

  • 苦手なことを避けてるみたいで、注意するといなくなってしまう。プライドが高く、自己評価が高いが仕事はできていない。どう関わればいいか自信がなくなってきます…。私には向いてない気がする。(Fさん)
  • 私が担当している新人は、意図したことがなかなか伝わりません。先輩の力も借りてフォローしているのですが、精神的にきついです。(Gさん)

 

●悩んでいるプリセプターへのアドバイス

プリセプターの教え通り、スムーズに新人が育ってくれるとは限りません。

 

新人にも個性があり、じっくり事前準備をしたい人や、まずは一緒に実践してみたい人、などさまざまです。

それぞれのペースに合わせて見守ることが大切です。

 

しかし、可能性や個人差をどの程度まで許容範囲とするかということや、進捗や成長の問題などはプリセプターだけで判断できることではありません。

 

一人で悩まずに、上長に報連相をして、方針をしっかりと立てていくことが大切です。

 

 

【5】指導以外に気を遣うことが多すぎる!

緊急時のプリセプティからの質問を作り笑顔で断るプリセプターのイラスト

 

  • 忙しいときに、新人が「すいませ~ん」って聞いてくると、正直イラっとして「なに?」「急ぎ?」って言っちゃうこともあります。途中で「はっ」て気づいてすぐに「なになに?どうしたの?」って明るく聞き返したりするんですけど…。(Hさん)

 

●悩んでいるプリセプターへのアドバイス

プリセプターは、多忙なことが原因で思い悩むことも多いことでしょう。

 

もしも、イライラする感情を新人にぶつけてしまうほど業務過多になってしまっているなら、ひと呼吸おいて「5分待ってもらえる?」とワンクッション入れて対応してみましょう。

その後、必要なら周囲にヘルプを出すことも検討します。

 

プリセプターはよく、「自分の力量不足だ」と一人で抱え込んでしまいがちですが、業務量の調整は組織で行うべきことです。

周囲に助けを求めたり、場合によっては上長に相談することも大切です。

 

 

【6】優先順位のつけ方の指導がわからない!

優先順位の付け方の指導がわからず、やることがいっぱいの後輩を見て呆然とするプリセプターのイラスト

 

  • 何が重要だと思う?と新人に聞くと答えに詰まってしまって。時間をかけて話を聞けば、しっかり考えてるってわかるんですけど…。どう考えを促していくか難しいです。(Iさん)

 

●悩んでいるプリセプターへのアドバイス

新人には「臨機応変に」とか「そのときの状況で」という曖昧な表現では、優先順位の考え方は伝わりづらいようです。

 

プリセプターとしてまずやるべきなのは、優先順位とは何なのかを考えさせること。

 

たとえば、「患者の治療に関すること」「患者の安全や感染に関すること」「患者の安楽に関すること」…など、治療・処置や薬剤そのものではなく、それぞれの処置や薬剤が「何のために必要なのか」を考えるように促してみましょう。

 

そのうえで、重要度・優先度を一緒に整理していきます。

自分たちは感覚で行っていることにも、実は根拠や理由があります。

 

プリセプター自身が、根拠や理由を振り返る機会にもなると思います。

 

 

【7】自分は指導に向いていないと思う!

勉強熱心なプリセプティの質問に答えられず戸惑うプリセプターのイラスト

 

  • 疾患について詳しく説明できない。(Jさん)
  • 上手く指導できずに申し訳なさを感じてしまいます。(Kさん)

 

●悩んでいるプリセプターへのアドバイス

プリセプターだからといって、なんでも完璧である必要はありません。

わからないことがあるときに良くないのは「知ったかぶり」や「逆に質問攻めにすること」などです。

 

わからないときは、「確認してくるね」と先輩に聞いてみたり、「一緒に考えよう」と、共に取り組む姿勢をみせましょう。

新人は、そんなプリセプターを見ることで「周囲に頼っていいのだ」という安心感を得ることもできます。

 

 

【おわりに】プリセプターをやっててよかったこと!

おわりに「プリセプターをやっててよかった!」と思う瞬間について聞いてみました。
 

成長したプリセプティを陰からそっと見ながら、感涙を流すプリセプターのイラスト

 

  • 新人が頑張っている様子を見たときや、できる仕事が増えていくのがわかるときなど。(Lさん)
  • プリになってからはあまり褒められることもないし、できて当然っていう感じ。新人に教えたときに「すごくわかりました!」とか反応をみると、素直で、今日は一つ学んでもらえてよかったなと…。それが今の唯一のやりがいです。(Mさん)
  • 自分の知識や技術の振り返りになること。(Nさん)
  • 一年の終わりに、新人にお礼の手紙をもらったことです。(Oさん)

 

新人に一生懸命関わっても、新人が突然成長したり結果がすぐに出たりするものでもありません。

 

またプリセプターの役割として活動しているので、特別褒められたりすることも少ないのではないかと思います。

 

だからこそ、新人の成長や変化を見逃さず、その中で自分自身が努力してきたことを認めていくことが大切です。

 

新人の成長を間近でみられることはもちろん、自分自身の振り返りや成長につながったと実感できると、やりがいを感じられますよね。

 

プリセプターとして最初のころは大変な気持ちが強いかもしれませんが、半年~一年と経ってみると、自分が思った以上に成長していると感じるかもしれません。

 

看護も、教育も目に見えるものではありません。だからこそ時には自分自身を振り返り、自分の中のできていることを確かめながら、業務に取り組んでみてください。

 

illustration/宗本真里奈

編集/坂本綾子(看護roo!編集部)

 

 

 

【引用・参考文献】

1)目黒 悟:教えることの基本となるもの―「看護」と「教育」の同形性.(メヂカルフレンド社)

2)プリセプター制度の現状と課題:PDF(看護研究交流センター 地域課題研究報告)

3)新人看護職員研修 ガイドライン 【改訂版】:PDF(厚生労働省)

4)新人看護職員臨床研修における研修責任者・教育担当者育成のための研修ガイド:PDF(日本看護協会

5)OJT における新人教育で師長が果たす役割に 関する文献検討:PDF(川崎医療福祉学会誌)

6)新人看護師技術チェックリストの使い方について:PDF(厚生労働省)

7)最新新人看護師教育のポイント 看護実践の科学 2018年6月臨時増刊号:看護の科学社

 

【監修者 プロフィール】

上村美穂(かみむら・みほ)

1996年 聖マリアンナ医科大学 東横病院 脳神経外科病棟 入職                                                       

2003年 集中ケア認定看護師 取得

2006年 川崎市立多摩病院(指定管理者 聖マリアンナ医科大学)ICU・CCU異動

2017年~ 同病院 教育担当師長

 

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