入国審査とビザ取得 | シンガポールの看護現場から【6】
シンガポールで働く日本人ナースやぁぎぃが、海外生活や現地の病院の様子をレポート!!
無事シンガポールの准看護師試験に合格し、現地で働く準備は万端!のはずが、まだ一手間ありました。
就労ビザ無しで大丈夫?ドキドキの入国審査
准看護師のテストに合格した後、シンガポールの病院に勤め始めるまでしばらく間がありました。日本でバイトをしながら渡航を待つ日々。そんな中、ちょっと気になった点について、仲介してくれた人材紹介会社へメールで問い合わせてみました。
「ビザの取得ってどうすればいいですか?」
それに対する返事は「来ていただいてから手続きします」とのこと。本当に大丈夫なの?と心配になったので、改めてメールを送信。
「入国審査のときは観光と言えばいいんでしょうか? 片道の航空券だけ買って行っても大丈夫ですかね? たまに他の国で入国のときに、帰りの航空券を見せろと言われることがありますが・・・」
発展途上国の人なんかは「観光です」と言って入国して、そのまま働いちゃったりすることがしばしばあるそうです。そうした不正な就労を止めるために、入国審査の担当者は「帰りの航空券を見せろ」と言うのだとか。実際に私自身、海外へ行ってそう言われたことが結構あります。そういうときは「働かないよ」と思いつつも、しぶしぶ帰りの航空券を見せていました。
「シンガポール行きの片道分だけなら、貯まったマイルで行ける」という事情もあったため、なおのこと、この点が気がかりでした。
「働きに来た」と正直に伝えてよいものか? それとも「観光」と言ったほうがよいのか?
しかし、人材紹介会社からの返事は「直接、病院の人事部に聞いてください」
仕方なく、メールをコピペして病院の人事部にも同じことを問い合わせました。
返信は「◯月×日にお会いするのを楽しみにしています」というもの。
あれ? 私の質問に対する答えは??
なんだかもう面倒くさくなってしまったので、准看護師試験のときと同じく、質問は諦めて出発しました。
空から見たシンガポール。意外とちっちゃい
入国審査で何か聞かれたら、
「私は2週間くらいアジアを旅行しに来ました。この後はマレーシアに行ってぇ、タイに行ってぇ、タイから日本へ帰ります。帰りの航空券は、バンコクのカオサン通りが安いって聞いたからそこで買います。楽しみ~!」
と言うつもりでした。
大丈夫。何とかなるさ。心配ないさ~~~!(大西ライオン風に)
いよいよ入国審査のゲートが見えたときは、ちょっとドキドキ。
審査の担当者はマレーシア系の陽気なおっちゃんでした。
おっちゃん「あんた日本人かぁ?!」
やぁぎぃ「日本人さぁ!」
パスポートに「ポン!」とハンコを押すおっちゃん。
おっちゃん「シンガポールを楽しんでぇ!」
やぁぎぃ「おう! イェーぃ!」
・・・こんな感じであっさり終了。ゆるい!
私のドキドキを返して!
「給料低いのになんで?」同僚からの質問攻め
無事シンガポールへの入国が完了し、ひとまず予約しておいたホテルにチェックイン。
入国して2日後に病院へ行きました。
初日にやったのは健康診断と制服合わせ。採血、レントゲン、制服・靴の試着と慌ただしく動きました。制服は結構可愛いんですが、なんだか臭かった! 試着用ということで洗ってなかったんでしょうか?
制服はこんな感じ。軽装で動きやすい
オーストラリア人の男性看護師が「僕も一緒に連れて行ってくれ」とついて来たので、一緒に病院内を回っていました。人事課の待合室でひと息ついたところで、同じように健康診断をしていたらしい、インド系マレーシア人の3人組と合流。オーストラリア人が質問攻めに。
マレーシア人「あんたオーストラリア人?なんでシンガポールに来たの?オーストラリアのほうが給料いいのに!」
オーストラリア人「僕の彼女が英語の先生で、シンガポールで働くことになって、ついて来た。一緒に住んでる。僕もなんか仕事をしようと思って。給料はオーストラリアの半分くらいだけど・・・」
マレーシア人「えー! 給料、半分! なんでシンガポールで働くの! 彼女と住んでる? なんで結婚しないの!?」
普通、シンガポールで働く外国人は、もっと給料が少ない国からの出稼ぎ労働者。そのため、オーストラリア人が珍しくて仕方がなかったようです。
「お気の毒~」と笑っていたら、オーストラリア人から思わぬ仕返しが。
オーストラリア人「こっちの彼女は日本人だよ」
おおっとぉ!やられた。
オーストラリア人に負けず劣らず珍しい日本人。ターゲットが私に切り替わり、しばらく同じような質問攻めにあったのでした。
現地の看護協会でも質問攻め
病院でやることがひと通り済んだ後、書類をドサッと渡されました。シンガポール看護協会へ行って免許を受け取って来なさい、とのこと。
まずはシンガポール看護協会。中国系シンガポール人女性の担当者と一緒に、日本から送ったいろいろな書類を確認しました。
シンガポール人「何なの、この日本の看護師免許って! これってdiploma? それともdegree?何なの?」
手続きの間、ずっとこんな感じの横柄な態度でした。周りもみんな同じような感じで質問されていて、近くにいた英語がカタコトの中国人看護師が泣きそうになっていました。
相手の失礼な態度に、思わずこちらもヒートアップ。
やぁぎぃ「知りません。日本ではただ『看護師免許』と呼ぶだけ。diploma? degree? 分かりません!」
担当者「じゃあ、このイギリスの看護師免許は? diploma?」
私「その免許はイギリスで日本の免許を元に取ったやつです。diplomaだかdegreeだかは知らない!」
担当者「・・・」
私「どっちのレベルが低いの?」
担当者「diploma!」
私「じゃあそっちでいいよ!」
こんなやりとりでも、無事(?)准看護師の免許をその場でもらえました。
病院へ免許を見せに行くと、今度はワークホースへ行ってビザを受け取って来なさいとのこと。ワークホースというのは、外国人に就労ビザを発行しているところのようです。
ワークホースへ行った際、病院で会ったオーストラリア人男性と、インド系マレーシア人3人組に遭遇。またしてもおしゃべりに巻き込まれることに。
しばらくして、手続きの順番が到来。
おばちゃんの担当者が書類を確認しながら、いろいろと質問してきました。
おばちゃん「なるほどなるほど。病院で准看護師。2年契約。ふむふむ」
私はその日、ふわっとした、夏っぽいワンピースを着ていました。お腹のあたりもふわっ。
おばちゃん「妊娠してるの?」
やぁぎぃ「してないよ!」
失礼な! 思わず、自分の平らな(?)お腹を突き出して見せました。
こんな感じの短く失礼な審査を経て、労働ビザにあたるSパスというものをいただきました。
こちらがSパス。下の部分はバーコードで読み取れるようになっています
いろいろと面倒くさいことがありましたが、「暖かい場所で働きたい」という希望がようやく叶うと思えば、苦労も報われる気がしました。
【次の記事】第7回:病院ではさまざまな言語が飛び交う
■プロフィール
名前:やぁぎぃ
経歴:東京都出身。日本で胸部外科や脳外科・眼科などで看護師をしたのち、イギリスで看護師→シンガポールで准看護師に。ほかにもいろいろな国へ短期の渡航を経験し、4カ国の看護系免許を保有。
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