「看護師の休日は21時間に?」日本看護協会が推奨する3交代正循環のメリット・デメリット

夜勤は16時間と13時間どちらがいいですか?8時間のほうが働きやすいですか?

看護roo!のアンケートでは、74%の看護師が13時間よりも16時間のほうが良いと回答しています。

しかし、日本看護協会(以下、日看協)は、夜勤の時間を短くする方向で動いています(詳しい解説記事はこちら)。

そのメリットとデメリットを探ってみました。

【文:白石弓夏(看護師)】

 

日本看護協会が推奨する3交代正循環のメリット・デメリット

 

 

 

推奨される正循環3交代とは?

日看協が推奨しているシフトは、「3交代の正循環」です。

正循環とは、前の勤務開始から24時間以上経過後に次の勤務が開始される、というシフトの組み方です。

 

図1 正循環勤務の例

勤務間隔と交代の方向〔A.4〕(日看協)を基に作成

 

図1のように、「日勤→準夜勤→休み→深夜勤」というシフトは正循環です。

このシフトを推奨する理由を日看協は以下のように説明しています。

メリットとしては、体を新しいリズムに調整しやすいことが挙げられます。

人間の生体リズムはおおむね25時間周期であり、1日(24時間)ごとに自然に1時間ずつ後ろ(時計回り)にずれていくという特性があります。

そのため、連続する勤務日の勤務開始時刻をより遅く設定するのが「正循環の交代周期」です。

 

正循環の基本的な組み方としては、「日勤→準夜勤→休→深夜勤」です。

たとえば、日勤を3日間連続で行ったあと、準夜勤を行い休日1日を挟んで深夜勤を行うというシフトです。

このようなシフトを組むと、生体リズムに逆らわない勤務編成であることに加えて、すべての勤務間隔を12時間以上確保できます。

勤務間隔と交代の方向〔A.2〕(日看協)より抜粋・要約

 

反対に、逆循環とは、前の勤務開始時刻から、24時間経過する前に、次の勤務が開始されることです。

 

図2 逆循環の例

勤務間隔と交代の方向〔A.4〕(日看協)を基に作成

 

図2のように、「日勤→深夜勤→準夜勤→休み」というシフトは、「日勤→深夜勤」の部分が逆循環になります。

 

逆循環の勤務では、「日勤→深夜勤」や「準夜勤→日勤」というシフトとなり、自宅でまったく休息がとれないというつらさにつながります。

しかし体力的にはつらいものの、「日勤→深夜勤」の場合には、昼間の患者さんの様子を把握できている前提があり、情報収集や申し送りを簡略化できるので安心感につながるメリットもあるでしょう。

 

一方で正循環の「休み→深夜勤」というシフトは、患者さんが寝ている状態から看護師の勤務がスタートします。

そのため、患者さんの状態がわかりにくいというのはデメリットです(この考え方には個人差はあると思いますが)。

 

 

3交代の休日は21時間?

また、3交代の正循環(準夜勤→休み→深夜勤)では「休日にしっかり休めるのか」という懸念があります。

私が以前3交代を経験したときには、準夜勤が終わり2~3時に就寝。次の休日はお昼前に起床。午後は自由な時間。夕食後に仮眠を2~3時間取り、仮眠後に入浴、出勤準備をして深夜勤に行くというパターンで行動していました。

 

図3 準夜勤→休み→深夜勤の行動例


準夜勤の帰宅が2:00だとすると、次の深夜勤出勤(23:30)までの時間は21時間半となり、休日なのに24時間確保できているわけではありません。

 

21時間半のうち、7時間の睡眠、深夜勤の前に2時間の仮眠、出勤時間などを除外すれば実質11時間の自由な時間ということになります。

 

これを「11時間も」と思うか「11時間しか」と思うかは個人差がありますが、後者の方が多いのではないでしょうか。

さらにいえば、準夜勤に残業があれば、自由な時間はもっと減ります。

 

 

看護師の休日はどのように使われているのか?

このような状況では、昼間出かけたり、用事を済ませたりすることが億劫になりそうです。

子育て中の看護師は、家事・育児に追われ、家でも仮眠をとるどころではないかもしれません。

 

また、せっかく休みであっても、半日くらいを深夜勤の準備として取られてしまうので、なんだか損した気分になってしまいます。

 

実際に私も、午後の時間は、深夜勤を前にしてそわそわしてしまい、家で過ごすことが多かったように感じます。

 

 

3交代は連休がとれない?

2交代に比べて3交代は、連休が取りにくいという懸念もあります。

それでも、勤務と勤務の間隔をとり、生体リズムに沿うことは、「日勤→深夜勤」のような逆循環より疲れの回復が早く、健康面や安全面にはメリットがあります。

少しずつ慣れていくように工夫していく必要がありそうです。

 

その点について、日看協はこのように説明しています。

「深夜」入り前の「休」が「次の勤務に備える休養時間」としての特性が強まります。

深夜入り前日の休日は、自由時間の減少を感じさせ、あまり好まれないシフトであることは確かです。


しかし、実際にこの勤務編成を採用している病院の例では、シフト間隔が開いているため疲れの回復が早く、休日を活動的に過ごせるという評価があるようです。


とはいえ、毎回は難しくとも、深夜勤後はできるだけ連休としたいものです。

公休だけで連休を設定することが難しい場合は、公休と有給休暇を併せて連休を設定する方法もあります。

勤務間隔と交代の方向〔A.4〕(日看協)より抜粋・要約

 

 

なぜ勤務を「13時間以内」に規制する要望書を出したのか?

3交代の正循環を最も推奨するシフトとしている日看協ですが、この春、内閣府へ「勤務時間を13時間以内」に規制する要望書を提出しています。

 

現状では、2交代16時間のシフトとしている病院が多いため、3交代への急激な変更ではなく、折衷案として「13時間」という数字が出てきたとも考えられます。

 

しかし、3交代では夜勤13時間以内は問題ありませんが、2交代の場合には、ロング日勤(図4)や早日勤・遅日勤(図5)などの今までとは違うシフトが出てくる可能性があります。

 

図4 「2交代勤務」の例(24時間を均等に分ける場合)

(「夜勤・交代制勤務の勤務編成の基準案」2012 年 3 月版 を基に作成、以下同)

 

図5 「変則2交代制」の勤務例

 

このようなシフトを看護師のライフスタイルに適応させるには時間がかかるのではないでしょうか。

 

***

次回は、長時間勤務や夜勤が看護師の健康にもたらす影響について解説します。

 

(参考)

「ガイドライン」勤務表作成者のためのQ&A(日本看護協会)

 

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