「患者さんの一番大事な人」を探す~イラストレーターかげさん|ナースに会ってきた【9】

前回に続き、看護師兼イラストレーターのかげさんにお話をうかがいます。

『ナースに会ってきた』

 

vol.9 「患者さんの大事」を探す~イラストレーターかげさん

 

かげさんが看護師の仕事をする上で大切にしていることを伺いました。患者さんにとって一番大事な人を探すことを大事にしているというかげさん。そうしようと思った経験は、がけさんが看護師1年目の終わりにありました。70代の心不全の患者Aさんが心臓の弁を取り替える手術です。クリニカルパスにのっとった治療でしたが、オペ後に病棟で急変。検査をするとオペの侵襲に身体が耐えられなかったということが分かりました。

呼吸が苦しく夜も眠れないAさん。熱を測りにきたかげさんは「手術しなきゃよかった」という言葉を聞いてしまいます。外科の医療者が一番言われたくない言葉です。

人工呼吸器を入れて2ヵ月が経過し、もはや心不全のターミナルのような状態です。しかしAさんの息子さんは現状を受け入れられず、医師もはっきりと死を告げません。かげさんは何をしたらいいのか悩み続けましたが、Aさんは苦しすぎて意識がもうろうとし、日から尽きるように息を引き取りました。

Aさんのご遺体を霊安室に移そうとしたとき、人工呼吸器に息子さんからもらったというお守りが引っかかりました。Aさんがずっと服につけていたお守りを息子さんに渡すと、息子さんははじめて泣きました。息子さんとお母さんがお互いを大好きであったことに気づかされたかげさん。それ以来患者さんにとって一番大事な人を探すことにしたといいます。

誰がお見舞いに来ているか聞いたり、来ない家族には関わりの機会を増やすように働きかけました。先生にも変化があり、穴滋養菜患者さんがいらっしゃったときには、専門の先生に相談したり、患者さんにはっきり告げるようになりました。

後輩へのアドバイスを聞きました。看護師は人間関係の悩みの相談が多く、かげさんも苦手な人がいたそうです。そこで、人を追いつめるようなことは言わないようにしようと気をつけているそうです。能力がないという悩みもよく聞くそうなのですが、お願いできるようになると解決するよと伝えています。先輩でも手伝ってもらう。その代わり自分がヒマなときは、他の人を手伝うようにする。お願いできるようになると仕事は終わります。

 

【お知らせ】

全9回に渡ってお届けした『ナースに会ってきた』ですが、今回が最終回になります。
これまでご覧いただきありがとうございました!
 


【著者プロフィール】

水谷緑(みずたに・みどり)

水谷緑

著書は「コミュ障は治らなくても大丈夫」(吉田尚記、水谷緑)「まどか26歳、研修医やってます!」「あたふた研修医やってます。」(KADOKAWA) 他。小学館「いぬまみれ」にて犬漫画「ワンジェーシー」連載。

HP:http://mizutanimidori.com/

 

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