「看護師基礎教育の4年制化」や「准看護師制度」はどうなる?-日本看護協会通常総会レポート

2017年6月7日(水)に日本看護協会(以下、協会)の通常総会が行われました。

 

そこで協会が2017年度の重点政策として示したのは、「看護基礎教育制度改革の推進」「地域包括ケアにおける看護提供体制の構築」「看護職の労働環境の整備の推進」「看護職の役割拡大の推進と人材育成」の4つでした。

 

基本的には2016年度の重点政策が踏襲されましたが、「看護基礎教育制度改革の推進」が独立した項目となりました。今後、協会は看護師基礎教育の4年制化に本腰を入れるとみられます。

 

重点政策の説明がなされた通常総会では、質疑の際に会場からこの看護師基礎教育の4年制化について多くの質問が寄せられました。その様子をリポートします。

 

【目次】

「圧倒的な教育時間の不足」と「患者の病態の複雑化」が理由

「看護学生の負担増」や「教育現場の混乱」を懸念する声も

「准看護師制度」はどうなる?

 

約3,400人が参加した通常総会の様子   

 

「圧倒的な教育時間の不足」と「患者の病態の複雑化」が理由

看護師基礎教育の4年制化については、これまでも協会はさまざまな取り組みを行ってきました。しかし、保健師助産師看護師法の改正が必要であり、関係団体の中には反対する声もあることから、実現には至っていません。

 

この問題について、本総会で会長を退任した坂本すが氏は、「圧倒的な教育時間の不足」と「患者の病態の複雑化」を理由に、看護師の基礎教育の4年制化が必要であると改めて訴えました。

 

協会が看護師基礎教育の4年制化実現へ向けて今年度実施するとしたのは、法改正に向けた看護関係者との合意形成関係省庁の検討会などでの4年制化に向けた結論を得るための活動関係団体や議員などへの働きかけなどです。また、看護師専門学校等における4年間の看護師教育の推進看護師教育のみを行う大学の設置促進の活動などもあわせて行うとしました。

 

「看護学生の負担増」や「教育現場の混乱」を懸念する声も

質疑応答で参加者から寄せられた意見で多かったのは、授業料が上がることによる看護学生への負担が増えることでした。奨学金を利用できたとしても、返還が必要な場合にはさらなる「借金」を負わせることになるとし、学生の将来を心配する声が聞かれました。

 

川本利恵子常任理事は、「看護師資格を取得するための自治体や病院独自の奨学金などを活用してほしい。場合によっては返還が不要な奨学金もある」と繰り返し説明をしました。

 

一方、教育現場の体制が整備できるかについても不安視する声が多数寄せられました。参加者の一人は、「実習病院がない。今でもお盆やお正月以外はどこの病院もすべて埋まっている状況」と述べ、実習先をどう確保するかが課題だと訴えました。また、教育現場の教室やトイレの不足など、設備面の課題を指摘する声もありました。

 

それに対し、川本常任理事は、「現場の厳しい状況はうかがっている。実習の目的にかなう対象を広げ、実習先を広げていかなければならない」と述べ、関係省庁に働きかけ、都道府県の基金などを活用することで対応していきたいとしました。また、教室などの設備問題については既存の教室が活用できるように要件緩和を働きかけるなど、柔軟な対応を検討していくとしました。

 

また、専門学校で教員をしている参加者は、「実習時間の短さは改善しなければならないと思うが、看護師資格のない学生は侵襲を伴うケアができない」と述べ、実習時間を伸ばすだけではなく実習の中身を考える必要があると訴えました。その上で、3年間学校で学んだ後の1年間を看護師として実地で研修を受けることはできないかと質問しました。

 

川本常任理事は、1年間の看護師研修の導入については、2010年に新人看護職員の卒後臨床研修が努力義務化された際の議論でも同じような意見が出たことに触れ、「罰則規定があるので義務化は時期尚早として見送られた経緯がある」と説明。研修を怠った場合の処罰についての規定を整備する必要があるなど、臨床研修の導入には高いハードルがあるとの考えを示した上で、今後検討していきたいとしました。

 

「准看護師制度」はどうなる?

看護師基礎教育の4年制化に質問が集中する一方で、准看護師制度の今後の動向についても多数意見が寄せられました。なかには、坂本氏が会長を退任することで、准看護師制度の課題解決に向けた取り組みが減速するのではないかと心配する声も聞かれました。それに対し、坂本氏は、「執行部が変わっても、協会の方針は変わらない」と述べ、引き続き、准看護師養成所の新設阻止および既存の准看護師養成所の看護師養成所への転換促進などに努めていく考えを示しました。

 

准看護師養成所は、2016年4月現在、全国で230校となり、入学者は20年間で3分の1以下に減少しています。しかし、関係団体の存続を求める声は根強く、2015年11月には日本医師会や四病院団体協議会の支援を受け、日本准看護師連絡協議会が設立されました。

 

こうした動きに対する協会としての考えを問う質問が参加者からありました。勝又浜子常任理事は、「本会とは考え方を異にする」と明言しました。

 

そのような中で、会場の准看護師養成所の管理者から、「向かう方向(看護師基礎教育の4年制化)は理解している」とした上で、現在働いている准看護師がいて、その教育を行っている機関もあることから、「多様な視点を持った説明をしてほしい」と切々と述べ、准看護師やその関係者に配慮した発言をするよう求めました。

 

この発言を受け、坂本氏は、「准看護師はわたしたちの仲間。准看護師養成停止の議論を重ねてきたけれど、そのことは決して変わらない」と断った上で、「教育は違うのに同じことができることに対し、安全的なことも含め、本人もそばにいる人も含め、本当に同じ教育を受けずにやっていいのか」と述べ、改めて准看護師の養成校の停止を求めていく考えを示しました。

 

なお、この日の通常総会では、坂本氏をはじめ19人の理事が退任。新会長には前執行部で常任理事だった福井トシ子氏が選出されました。

 

坂本前会長(中央左)と福井新会長(中央右)   
 

【坂本朝子(看護roo!編集部)】

 

2017年6月7日(水)
平成29年度 日本看護協会 通常総会

【会場】

幕張メッセ

【学会HP】

公益社団法人 日本看護協会

 

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