ナースのお給料、算出方法が変わる!?|日本看護協会「看護職の賃金モデル」推進事業会議レポート

自分のお給料に満足していますか?

約半数の看護師が、「給料が低い」ことに悩みや不満を感じているといわれています(日本看護協会、2009)。

 

この状況を踏まえ「看護職の賃金モデル」推進事業として、評価・処遇を改善する取り組みが始まりました。

 

看護roo!編集部では、そのキックオフ・ミーティング(2017/1/24開催)に参加してきたので、詳細をご紹介します!

 

 

日本看護協会「看護職の賃金モデル」推進事業会議レポート

ナースのお給料、算出方法が変わる?

坂本すが_日本看護協会会長_看護師_給料

 

日本看護協会 会長の坂本すが氏は、キックオフ・ミーティングの冒頭で「多くの病院が評価・処遇の改善に取り組むことを望む」と述べました。

 

評価・処遇の改善のために日本看護協会が示した方針はこちらです。

 

職務内容・役割・能力に応じて、給料が向上する仕組みを広める。

短時間勤務、夜勤専従など、多様な働き方に対する給料を改善する。

 

これまで、看護職の賃金についての課題は「能力や役割が反映されないこと」「キャリアを積んでも賃金が上がりにくいこと」の2つが挙げられていました。

 

まずはこの2つの課題をおさらいしたうえで、今回の取り組みを具体的に紹介します!

(「課題」は飛ばして、「新しい賃金モデル」の項目から読み始めてもらってもわかる内容になっています)

 

 

 

【課題1】ナースの能力や役割は給料へ反映されない?

2013年の調査では、人事考課制度(能力や役割の評価)を「実施している」病院は約5割、人事考査の結果を賃金へ「反映している」病院は7割でした。

 

図1 人事考課制度の実施と結果の賃金への反映状況

看護師_人事考課制度

(日本看護協会「2013年看護職の夜勤・交代制勤務ガイドラインの普及等に関する実態調査」より引用、一部改変)

 

本事業では、より多くの病院が看護師の評価体制を整え、その結果を賃金へ反映できるようにすることが目的です。

 

 

【課題2】キャリアを積んでも給料が上がらない?

看護職の賃金が、ほかの医療職に比べて上昇幅が狭いことは、かねてから指摘されていました。

 

図2 医療職の賃金カーブ

(日本看護協会 協会ニュース「病院で働く看護職の賃金のあり方に関する考え方(案)」より引用)

 

賃金カーブが緩やかな理由は、以下のように示されています。

 

昇進や昇格の機会を得にくい(看護部門の人数に対して、師長等のポストが少ないため)

転職や再就職の際の賃金が低くなる場合がある(経験者の採用で十分な評価が行われていない場合)

 

これらの課題を改善するため、師長等への昇格時だけでなく、能力・役割に応じて賃金が上昇する仕組み、転職や再就職でもこれまでのキャリアが評価される仕組みを広めようとしてます。

 

 

【新しい賃金モデル1】能力と役割で給料を決める

本事業では、能力と役割に応じて賃金を決定する賃金モデルが示されました。

 

具体的には、「複線型人事制度」と「等級制度」を組み合わせたモデルです。

 

図3 複線型人事制度、等級制度を組み合わせた賃金体系モデル

(日本看護協会「病院で働く看護職の賃金のあり方」日本看護協会の提案(最終版)より引用)

 

◆複線型人事制度とは?

看護職を「専門職群」「管理・監督職群」「高度専門職群」に分けて評価する制度です。

 

◆等級制度とは?

「看護実践能力」「組織的役割遂行能力」「自己教育・研究能力」などのステップにより、1等級から7等級に分けて評価する制度です。

 

図4 等級制度の内訳

(看護師キャリア開発ラダーのレベル例をあてはめた場合)

(日本看護協会「病院で働く看護職の賃金のあり方」日本看護協会の提案(最終版)より引用)

 

 

【新しい賃金モデル2】貢献度に応じた等級に格付けする

この制度を導入することにより、「高度専門職群」(專門・認定看護師等)「管理・監督職群」(主任・師長等)でなくても、貢献度に応じた等級に格付けができ、役割と能力に応じて給料を設定できるとしています。

 

図5 賃金体系モデルのフレーム

(日本看護協会 協会ニュース「病院で働く看護職の賃金のあり方に関する考え方(案)」より引用)

 

また、看護協会は各等級の昇給の範囲(レンジ)の「重なり」が小さいと、上位の等級に上がろうとするモチベーションが高くなると示しています。

 

等級のレンジや重なり具合は、病院の人事制度の方針に沿って設計することになります。

そのため、各病院の設定により、賃金カーブを急勾配にするよう促す方針です。

 

 

もう1つの提案は「短時間勤務」と「夜勤労働」の賃金改善

本事業のもう1つの提案は、多様な働き方(短時間勤務・夜勤労働)に対する賃金処遇の改善です。

それぞれの具体例を以下に挙げます。

 

◆「短時間勤務」の正職員の賃金改善策

・基本給は、フルタイム勤務の正規職員の労働時間に比例して支給する(労働時間短縮分以外の不利益は被らないようにする)

・フルタイム勤務と短時間勤務及び労働時間の制約の有無で区分して、たとえば昇給、諸手当の決定、賞与の算定について、それらの区分に応じた評価をする

(日本看護協会「病院で働く看護職の賃金のあり方」日本看護協会の提案(最終版)より引用、一部改変)

 

 

◆「夜勤労働」に関する賃金改善策

・1回あたりの夜勤手当の増額

・深夜割増賃金の乗数を上げる

・やむをえず一定回数以上の夜勤を行った場合は、手当の増額もしくは別途の手当などを支給する

・夜勤負担の程度に応じて、賞与などの評価に反映

・夜勤専従者の基本給を下げずに、1カ月あたりの所定労働時間を減らす(上限を月144時間とする)

(日本看護協会「病院で働く看護職の賃金のあり方」日本看護協会の提案(最終版)より引用、一部改変)

 

 

各病院で給料の算出方法が変わるのはいつ?

これらの仕組みを導入するには、各病院の規定・ラダー等とのすり合わせが必要です。

 

日本看護協会では、2017年11月から各病院へ導入するための「導入支援者」養成を開始、2018年から各病院への導入支援を開始するとしています。

 

これらの取り組みにより、より多くの看護師が、賃金や処遇に満足できようになることを願います。

【文・写真:看護roo! 編集部】

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