医療コーディネーター×緩和ケアナース 岩本ゆりさん【後編】| 憧れナースに会ってきた!

前回まで―

医療コーディネーターとして全国の迷える患者さんからの相談を受けている岩本さん。

患者の抱えている不安に寄り添い、医療者の立場から現状を客観的に説明することで、患者さんが納得のいく意志決定をできるようにサポートします。

 


岩本ゆりさん 楽患ナース株式会社 取締役/楽患ナース訪問看護ステーション管理者

1972年生まれ。神奈川県出身。産科・婦人科・ホスピスでの7年間の病棟経験を経て、2003年医療コーディネーターとして独立。病院勤務時代に患者支援団体「楽患ねっと」を設立、現在は副理事を務める。同団体では「患者の声を医療にいかし、患者中心の医療の実現を目指している。共著に『あなたの家に帰ろう』『患者と作る医学の教科書』『患者中心の意思決定支援 納得して決めるためのケア』がある。


  

■傾聴と○○が大切

独立して約10年、岩本さんに寄せられた相談はこれまでに1000件以上にのぼります。

 

「最初は東京周辺からが多かったんですが、最近では東北、九州地方からも依頼をいただくようになりました。」

 

活動範囲が全国に及ぶのに合わせて、2007年から事業を法人化し、医療コーディネーターの育成にも乗り出しました。現役の看護師から主婦まで、今では24名の方が全国で活動されています。

 

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医療コーディネーターになるのに必要な経験はあるのでしょうか?

「臨床経験5年以上の看護師を対象としています。養成講座を受講した後に、資質面接・OJTを受けていただいています。」

 

資質面接では、実に5割以上の方が不合格になるとか。医療コーディネーターに求められる資質とは何でしょう?

 

「皆さん看護師なので、傾聴はできるんですよ。でも、困っている人を前にするとついつい『こうした方がいいよ』と自分の意見を押し付けがち。臨床経験が長い人ほど、その傾向は強いですね。

医療コーディネーターは患者の味方でも病院の味方でもなく、中立な立場の第3者です。いかにフラットに患者さんの話を聞けるか、その上でご本人の意志決定をサポートできるかが大切ですね。」

 

ムムム、確かに「どうすればいいですか?」と問われると、つい答えたくなりますよね。そこをグッとこらえて、ご本人の意志決定を導く。それがこの仕事の奥深いトコロと言えそうです。

 

 

■医療コーディネーターの仕事は看護そのもの

医療コーディネーターの仕事内容である「患者さんの意志決定支援」は看護そのものだと岩本さんは言います。

 

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「先生の言ってることが分からなかったり、治療法が分からなかったり…。こういった医師とのコミュニケーションの補完や治療法の説明は、病院ではまさに看護師の役割なんですよね。でも実際にはそれがなかなか機能していない・・・」

 

医療現場の看護師さんはケアや報告書に追われてそれどころじゃないという状況が容易に想像できますね。

 

「もちろん、手技やケアも大切です。でも将来的にはそれは介護など他の職種の人にも広がっていくんじゃないかと思うんです。

そうして、最後に残るのは患者さんが納得できる治療を実現するために、うまく調整するのが看護師の役割じゃないかなと。

今のチーム医療は、どうしても医師が中心になりがち。医師は上司じゃないのに、看護師は医師の言うとおりにしか動けない部分がありますよね。そうではなくて、チーム医療の中心は患者であるべき。それを実現するためには、看護師の役割は欠かせないと思っています。」

 

 

■「看護師が一番患者のことを分かってる」は間違い? 

患者さんの意志決定支援という役割の大切さを広めていきたいと語る岩本さんに、看護師の皆さんへのメッセージを聞いてみました。

 

「看護師が患者さんのことを一番分かってるって思わないで、ってことですかね。

よく看護師は一番患者の側にいて患者さんのことを分かってる、って言われますけど実際はそうじゃない。患者は、医師だけでなく看護師にも言えない事っていっぱいあるんです。」

 

病棟勤務時代にその想いに目覚めた岩本さんは、患者の本音を知りたくて、休日を利用して患者会などに足を運ばれたそうです。

 

「実は患者会ってあまりいいイメージを持っていなかったんです。権利主張団体のような…(笑)。

でも参加すると違っていました。自分達の経験をもっと医療に活かしたいといったポジティブな意見が多く、『病院じゃ言えなかったんだけど…』ということをたくさん聞くことができました。医療者の立場からすると言われて初めて気づくことが多くて、こういう声が現場にフィードバックされないのはもったいないことだなと思いました。」

 

こうした病院外での活動がきっかけとなり、患者支援団体『楽患ねっと』の立ち上げ、さらには今の医療コーディネーターとしての独立につながったそうです。

 

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「『白衣を脱いで』ってよく言うフレーズですが、病院の外に出て患者さんに会う機会を作ったら、今見えないものが見えてくるはず。患者さんが求めていることが分かるんじゃないかな。」

 

とは言っても、忙しい看護師さんからすると、仕事以外でまで患者さんに会いに行くのはなかなか抵抗があるかも・・・?

 

「そうかもしれませんね(笑)

忙しすぎて大変!!って人は、一回辞めちゃってもいいんじゃないかな。

しばらく海外に行ってリセットしたりね。

そしたら、私みたいに1年もたたずにまた患者さんに会いたくなりますから」

 

 

2010年からは、医療コーディネーターにとどまらず在宅緩和ケアに対応できる訪問看護ステーションも立ち上げられた岩本さん。

24時間365日の運営で、処置や急変も多く、さらにプライベートでは2児の母と、かなりハードな毎日に思えるのですが・・・。

「全部やりたくてやってるだけですよ(笑)毎日精一杯やったと思えたら、いつ死んでも幸せじゃないですか?」とほがらかに笑う姿は、肩の力が抜けていて、強く優しく美しく…看護師だけでなく、働く女性の鏡だと思えたのでした。

これからもご活躍期待しています!!

【看護roo!編集部】

 

 


 【ナースオブザイヤー投票受付中!】※終了しました

岩本さんが副理事をつとめる患者支援団体「楽患ねっと」では、「患者が元気でいるためには、看護師さんが元気じゃなくちゃ!」という想いから2009年から輝いている看護師さんを表彰しようと「ナースオブザイヤー」を開催しています。

今年はようやくその候補者が出そろったところ。2012/12/7~2012/12/31まで投票受付中です!

投票はこちらから→ナースオブザイヤー2012 公式サイト

このページをご覧の皆さま、あなたが思う輝きナースに清き一票を!!


 

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