経口与薬 | 外用薬の与薬【6】
【監修】
山本君子(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 教授)
【執筆】
加治美幸(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 講師)
「経口与薬」とは
薬物を経口的(口から)に投与する与薬方法のこと
「経口与薬」の種類
- 内服薬:薬物を経口的に投与し消化管を通して吸収させる薬
- 口腔内薬:口腔粘膜から直接全身循環に吸収させる薬
「経口与薬」の禁忌
(1)意識障害や嚥下機能障害のある患者さんの経口与薬は禁忌(誤嚥の可能性があり危険である)
(2)頻回な嘔吐のある患者さんの場合は、医師と相談する
「経口与薬」の必要物品
- 指示書
- 指示された薬剤
- 水(または微温湯)
- コップ(または吸いのみ)
- 廃棄物入れ(ビニール袋や膿盆)
- (必要時、薬杯・オブラート・スプーン・はさみなど)
「経口与薬」の準備
(1)指示書の記載内容や、医師から患者さんへの説明内容を確認する
根拠「なぜ医師からの説明を確認するの?」
患者さんに経口与薬の説明をするため、「医師の説明内容」と「患者さんの反応」を事前に知っておく
(2)医師による与薬指示が患者さんに適しているか、アセスメントする
■アセスメント項目
- 患者さんの状態
- 過去の副作用の有無
- 薬剤の用法・容量・作用・副作用
(3)6Rを確認し、トレイに必要物品を準備する
■誤薬防止のため6R(Right)
- 正しい患者(氏名、部屋番号など):Right Patient
- 正しい薬剤:Right Drug
- 正しい量:Right Dose
- 正しい方法:Right Route
- 正しい時間:Right Time
- 正しい目的:Right Purpose
(4)衛生的手洗いをする
(5)患者さんの本人確認を行い、経口与薬の目的と方法を説明し、同意を得る
ポイント
服薬アドヒアランスを高めるために、患者さんに「目的」「用法・用量」「作用」「副作用」などをしっかり説明する
「経口与薬」の実施
(1)患者さんの姿勢を座位もしくはファーラー位にする
ポイント
誤嚥をふせぎ、飲み込みやすい姿勢をとる
※座位がとれない場合は、顔を横に向かせて頭部を支えて拳上するか、側臥位とする
(2)コップまたは吸いのみに、水(または微温湯)を準備する
※注意事項※
水や微温湯以外の飲み物での服用は、作用の阻害や増強をひき起こすことがある
※内服薬は中性(pH7)の水で飲むことを前提に製造されている
(3)錠剤を包装からとりだす
■錠剤別・取り出し方のポイント
- 錠剤が複数個ある場合:転がり落ちないよう薬杯に入れる
- 散剤の場合:薬包紙を服用しやすい形にはさみで切る
- 液剤・シロップ剤の場合:静かに混和させてから薬杯に入れる
ポイント
液剤やシロップ剤は保管中に分離や沈殿をすることがあるので、与薬直前に混和する
※激しく混和させると泡立ってしまい、正しく計量できなくなる
(4)口腔内に薬剤を入れる
ポイント
内服薬は、舌の中央あたりにのせる
錠剤のタイプ毎のポイント
- 散剤の場合:オブラートを使用すると口腔内に付着したり、分散したりするのを防ぐことができる
- 舌下錠の場合:舌の下面に置き、溶けるまで保持する
- トローチの場合:舌の上にのせ、飲み込んだり噛んだりせずに、舐めながら徐々に溶かす
- バッカル錠の場合:歯肉と頬の間に挟み、飲み込んだり噛んだりせずに唾液で自然に溶かす
(5)患者さんに、内服薬を水(または微温湯)で飲み込むように促す
ポイント
水分が少ないと咽頭や食道に薬剤が残って、食道炎や食道潰瘍などを発症することがある
(6)患者さんが薬剤を服用できたか確認する
※必要時、患者さんの口腔内を観察し、口腔内に薬剤が残っていないか確認する
「経口与薬」の実施後
(1)患者さんに終了したことを伝え、患者さんの状態や副作用の有無などを確認する。体位を整え、ナースコールを手元に置いて退出する
(2)物品をもとの場所にもどし、ゴミは決められた方法で廃棄する
(3)6Rを確認し、薬袋を所定の位置にもどす
■誤薬防止のため6R(Right)
- 正しい患者(氏名、部屋番号など):Right Patient
- 正しい薬剤:Right Drug
- 正しい量:Right Dose
- 正しい方法:Right Route
- 正しい時間:Right Time
- 正しい目的:Right Purpose
ポイント
液剤やシロップ剤には、冷所保存が必要なものもあるため適切な保管方法を確認する
(4)薬剤、量、方法、部位、時間、患者さんの状態と薬の効果・副作用などを記録し、サインする
※経口与薬による効果を確認し、副作用の早期発見に努める
※実施者の責任を明確にするためにサインを行う
【出演】
市川砂織(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 助教)
田地奏恵(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 助教)
森下純子(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 非常勤講師)
【引用・参考文献】
(1)栗原博之(執筆):看護技術がみえるvol.1 基礎看護技術.メディックメディア,東京,2014:215-223.
(2)小林優子 他(執筆):系統看護学講座 専門分野Ⅰ 基礎看護技術Ⅱ 基礎看護学③.医学書院,東京,2013:277-280.
(3)阪本みどり(執筆):新体系 看護学全書 基礎看護学③ 基礎看護技術Ⅱ.メヂカルフレンド社,東京,2013:253-258.
(4)山内麻江 他(著):看護で役立つ診療に伴う技術と解剖生理.丸善出版,2014:4-7.