点鼻の実施方法 | 外用薬の与薬【3】
【監修】
山本君子(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 教授)
【執筆】
加治美幸 (杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 講師)
「点鼻」とは
●点鼻とは、点鼻薬を鼻腔内に滴下もしくは噴霧、または塗布する与薬方法のこと
●点鼻薬には、鼻粘膜へ局所的に作用するものと、鼻粘膜の血管を経て全身へ作用をするものがある
「点鼻」の適応
●局所作用製剤は、鼻腔内に直接働き、局所に作用する
●鼻粘膜の炎症や充血を抑える薬剤がある
●全身作用製剤は、鼻腔粘膜下の毛細血管から吸収され、全身に作用する
●初回通過代謝を回避するため、即効性を期待したり、内服では失活してしまったりする薬剤が使用される
「点鼻」の禁忌
(1)使用頻度を超えて使用すると、局所作用では効果の減弱や粘膜の肥厚が起こることがある
(2)全身作用の場合は、重篤な副作用が発現する可能性があるため留意する
「点鼻」の必要物品
- 指示書
- 点鼻薬(指示された薬剤)
- 消毒液
- 手袋
- ティッシュペーパー
- 廃棄物入れ(ビニール袋や膿盆)
「点鼻」の準備
(1)指示書の記載内容や、医師から患者さんへの説明内容を確認する
ポイント
患者さんに点鼻の説明をするため、医師の説明内容とその内容に患者さんがどんな反応を示したか、事前に知っておく
(2)医師による与薬指示が患者さんに適しているか、アセスメントする
■アセスメント項目
- 患者さんの状態
- 過去の副作用の有無
- 薬剤の用法・容量・作用・副作用
(3)6Rを確認し、トレイに必要物品を準備する
■誤薬防止のため6R(Right)
- 正しい患者(氏名、部屋番号など):Right Patient
- 正しい薬剤:Right Drug
- 正しい量:Right Dose
- 正しい方法:Right Route
- 正しい時間:Right Time
- 正しい記録:Right Record
(4)衛生的手洗いを行う
(5)患者さんの本人確認を行い、点鼻の目的と方法を説明し、同意を得る
(6)鼻腔内の状態を観察し、鼻汁がある場合は鼻をかんでもらう。自分で鼻をかめない場合は、鼻腔吸引を行う
根拠患者さんに鼻をかんでもらう理由
鼻汁があると薬剤の吸収が阻害される
「点鼻」の実施 ~鼻腔用軟膏の場合~
(1)患者さんに上を向いてもらい、頭を後屈させる
ポイント
頭を後屈する(仰向く)ことで、薬剤が鼻甲介にあたらずに薬剤を鼻腔の奥まで投与できる
(2)点鼻をする。清潔な綿棒などの先にチューブからあずき粒程度の薬剤をとり、鼻腔内に塗布する
(3)点鼻薬を浸透させる。鼻翼を指でやさしくマッサージして薬剤を行き渡らせる
「点鼻」の実施後
(1)患者さんに終了したことを伝え、患者の状態や副作用の有無などを確認する
(2)体位を整え、ナースコールを手元に置いて退出する
(3)物品をもとの場所にもどし、ゴミは決められた方法で廃棄する
ポイント
点鼻薬には、遮光や冷所保存が必要なものもあるため、適切な保管方法を確認する
(4)衛生的手洗いをする
(5)薬剤、量、方法、部位、時間、患者さんの状態と薬の効果・副作用などを記録し、サインする
※点鼻による効果を確認し、副作用の早期発見に努める
※実施者の責任を明確にするためにサインをおこなう
【出演】
市川砂織(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 助教)
田地奏恵(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 助教)
森下純子(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 非常勤講師)
【引用・参考文献】
(1)栗原博之(監修):看護技術がみえるvol.1 基礎看護技術.メディックメディア,東京,2014:238-241.
(2)小林優子 他(著):系統看護学講座 専門分野Ⅰ 基礎看護技術Ⅱ 基礎看護学③.医学書院,東京,2013:284-285.
(3)山内麻江 他(著):看護で役立つ 診療に伴う技術と解剖生理.丸善出版,東京,2014:17.