せっかく立てた行動計画が変更! 点滴の追加と検査室への患者さんの移動、どっちを優先する?

自分で考えて行ったケアが、後から先輩看護師に注意されることってありますよね。「それなら先に指示してくれればいいのに…」なんて思ったり…。
本企画では、新人看護師が普段のケアで間違いやすい、もしくは気付きにくいポイントについて、ベテラン看護師が解説します。ぜひ、ベテラン看護師の「考え方」を知り、日常の看護で実践してみましょう。

 

どう考える?どう動く?場面別でわかる看護のポイント【3】

せっかく立てた行動計画が変更! 点滴の追加と検査室への患者さんの移動、どっちを優先する?

 

峯田雅寛
山形県立中央病院 救命救急センター 救急室 主任看護師

 

〈目次〉

 

◆ここがポイント!
POINT1 別の部位に輸液路確保を行った
POINT2 「点滴が滴下しないから」と生食でフラッシュすることを検討した
POINT3 「Aさんの点滴の追加」と「Bさんの検査への移送」の優先度がつけられていない
POINT4 報告、連絡、相談が不十分

 

◆どうすればよかった?
輸液路が閉塞しているかどうかを確認する
行動計画はTo Doリストを利用する
チームでの活動を意識する

 

 

 

 

この新人ナースの判断は、
本当にこれで良かったのでしょうか?

 

 

ここがポイント!

POINT1 別の部位に輸液路確保を行った

 

今回、予定通りAさんに点滴の追加ができず、結果的にAさんの点滴が詰まり、抜針して、別の部位に輸液路の確保を行いました。
しかし、点滴を追加できていれば、輸液路が詰まることはなく、別の部位に輸液路を確保する必要はなかったかもしれません(理由は後述)。医療を行う上で、防ぐことができる余計な侵襲的処置は避けなければなりません

 

さらに、滴下していなければ、それが本当に輸液路の詰まりによるものかを確認してから抜針しましょう。

 

また、Aさんに予定通り点滴の追加を行うことができていれば、輸液路が詰まることがなかったということは、「点滴管理に課題があったのでは」と、とらえる必要があります。

 

POINT2 「点滴が滴下しないから」と生食でフラッシュすることを検討した

 

点滴残量がなくなった状態でクレンメを開放していると、血液が輸液路内に逆流しやすくなります。そしてその逆流した血液が輸液路内に停滞することによって、容易に凝血塊が生じてしまいます。
そのような状態で、生食でフラッシュすると、輸液路内に生じた凝血塊を体内に押し込むことにつながります。

 

POINT3 「Aさんの点滴の追加」と「Bさんの検査への移送」の優先度がつけられていない

 

複数の業務を一人で対応する場合、それらの業務の優先順位は、それぞれの患者さんの重要度と緊急度を評価して検討する必要があります。

 

また、検討の材料には、それぞれの業務に要する所要時間を加えることが必要です。
例えば、重要度と緊急度に大きな違いがない二つの業務がある場合、所要時間を検討し、短時間でどちらかの業務を完了することができるかで、もう片方の業務を遅滞なく遂行することができる場合があるためです。

 

この優先順位の検討を誤ると、円滑な業務遂行を妨げることになるほか、治療や検査の予定を把握し、プランを持って入院生活を過ごしている患者さんやご家族に、スケジュールの変更を強いることになるなど、迷惑をかけることになります。

 

POINT4 報告、連絡、相談が不十分

 

多重課題への対応には、経験と知識が必要なため、検討した結果に自信がない場合は、リーダーや先輩に報告(相談)や連絡をすることが重要です。そうすることで、情報が共有され、複数での評価となり、円滑な業務遂行やアクシデントの予防につながります。

 

困ったり悩んだりした際は、一人で解決しようとせず、同僚や先輩に相談(報告)が必要です。また、一人での対応には限界があります。状況を報告することは、応援の要請にもつながることになります。

 

どうすればよかった?

輸液路が閉塞しているかどうかを確認する

点滴の滴下が悪い、もしくは滴下していない場合は、輸液路の閉塞や漏れを疑う必要があります。しかし、不要な侵襲処置を回避するという意味では、本当に閉塞しているかを確認することが必要です。表1に閉塞しているかどうかを確認する手順を示します。

 

表1輸液路が閉塞しているかどうかを確認する手順

輸液閉塞_抜針_輸液ラインの詰まり_輸液路の閉塞_逆血

 

なお、ベッドサイドを訪れた際には、必ず点滴の状況を確認するように習慣付けておきましょう。

 

行動計画はTo Doリストを利用する

複数の患者さんを受け持つ場合は、いつ、どのように、どの業務を遂行していくかを考え、円滑に仕事を進めことができるよう、計画的に業務を考える必要があります。それにはTo Doリストを利用すると計画が立てやすくなります(図1)。

 

図1To Doリスト例

To Doリスト

 

To Doリストの作成手順

1受け持ち患者全員の予定を把握し、To Doリストを作成する

このTo Doリストには、予定を遂行するための準備や予定時間も加えます
たとえば、点滴の管理に関する作業であれば、点滴を追加する予定時刻やミキシングなどの作業を行う予定時刻も記入しておきます。

 

2To Doリストに挙げた項目を、カテゴリーで分ける

To Doリストに挙げた項目を、その患者さんにとって重要か、緊急かの2つの視点で4つのカテゴリー図2)に分類します。

 

図2カテゴリー分類と優先順位

看護業務_優先順位_緊急度_重要度

 

優先度2は、重要度、緊急度の度合いにより優先順位を決定する。

 

3分類したカテゴリーに沿って、優先度をつける(図2

計画の段階で、同時刻に業務が重なる場合は、予定を入れ替えられるものがないか検討しましょう。優先順位の判断が困難と感じた際は、リーダーに相談します。

 

当然ですが、新人看護師の場合は、行動計画を立てたら先輩看護師に見てもらいましょう。その時、「自分は何を考えて計画を立てたのか」、「どのように優先順位を評価したか」を先輩看護師に述べるようにし、助言をもらうようにします。そうすることで、経験者がどのように判断しているのかを知ることができます。

 

業務を行ったら、To Doリストに実際にかかった時間も記入する

それぞれの予定を遂行したら、実際にかかった時間を細かくTo Doリストに書き記すようにしましょう。作業に要する時間を把握することで、自分の傾向がつかめるようになります。さらに、立てた行動計画にズレが生じた場合に、作業に要する時間を把握できていれば、計画を修正できるようにもなります。

 

計画を修正する場合

始業前に行動計画を立てたとしても、予定外のことが入ったり、予定していた所要時間を超過したり、検査などの時刻が変更になったりすることがしばしばあります。そのような場合には、計画を修正し、対応します。

 

前述したとおり、自分がどの作業にどれくらいの時間を要するかを把握していれば、計画の修正も行いやすくなります。しかし、計画を修正することで、業務が重なり、自分一人で行うことが難しいと感じた場合は、リーダーへの報告(相談)が必要です。

 

計画を瞬時に修正できるようになるためには経験が必要です。そのためには、先輩看護師の対処や動き方を十分に観察しましょう。また、施設によっては、多重課題を扱うOJT研修も企画されているので、積極的に参加するのもよいでしょう。

 

チームでの活動を意識する

忙しく見えてもリーダーや先輩看護師に報告、連絡、相談する

インシデントやアクシデントの多くは確認不足から起こります。イレギュラー対応や、予定を変更しなくてはならなくなり、判断に困る場合は、リーダーや先輩看護師に相談しましょう。

 

看護の現場は皆が忙しく働いていますが、リーダーに進捗報告(相談)をすることで、助言を得ることができます。また、インシデントやアクシデントを防ぐことにつながり、ひいては患者さんの安全を守ることにつながることを覚えておきましょう。

 

助けを呼ぶための人間関係構築をしよう!

新人看護師にとって、忙しく動き回る先輩看護師には声をかけづらいと感じるかもしれません。しかし、患者さんの診療やケアを円滑に遂行するためにお願いするのですから、気後れすることなく「SOS」を出すべきです。

 

そして、自分に余裕ができたら、今度は積極的に手伝ったり、ほかのスタッフとコミュニケ―ションを図ることで、人間関係を構築していきましょう。

 


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