それぞれの「幸い」|マンガ・ぴんとこなーす【105】

アルコール依存症で独居、身寄りもない…そんな患者さんの看取りで、看護師にできることは?

それぞれの「幸い」

アルコール依存症という病気がある。少量でも持続的に飲酒をしていれば、医療者にとってはハイリスク患者になる。日常的に多量飲酒をしている方は、突然の入院で、幻覚や興奮等の離脱症状を起こすことがよくあります。こういったループを繰り返す方は生活が破綻していることが多い。

患者さんに共通しているのは、家族との関係が断たれてりう人が多い、ということ。ナスさんの病院にアルコール依存の患者さん(76歳男性)が緊急搬送されることになりました。患者のEさんとは面識があり、ナスさんが外科にいた頃、アルコール依存で離脱症状、大せん妄の症状で以前も入院していました。

Eさんは、生活保護を受けていて独居している際、自宅で倒れているのを発見され、検査の結果胃がんが見つかり数年前に手術をしました。アルコール離脱症状で術後は大せん妄になり、色々抜いて血まみれでどこかに歩いて行くなど、なかなかインパクトの強い人でした。前回の術後、ナースも退院後の生活を心配していましたが、その後似たような経過で入退院を繰り返し、今回自分で救急車を呼んだようです。ナスさんはEさんがお酒をやめられなかったのかな…気にかけます。

今回のEさんの入院は、看取り目的でした。Eさんの体調を計るナスさんは、数値から「もう今日中かも…」と考えます。病室に入ってきた医師に対して、Eさんに会話が聞こえないよう、ナースステーションへ移動するよう促します。

医師の話を聞くと、Eさんに関係する連絡先は元妻のものしか無く、症状を伝えたところ、「市役所に任せてあるため、遺体を焼いたら引き取る」という返事が返ってきたのだという。ナスさんはEさんの冷たくなった手を握りながら、「何をやらかしたんだい?」と問いかけます。それからすぐEさんは亡くなりました。

ナスさんが、Eさんのエンゼルに入る準備をしていると、Eさんの訪問看護を担当されていたウノさんに声を掛けてきました。話を聞くと、Eさんのお宅に訪問看護に伺ったら入院したと聞き、ナスさんの病院まで具合を聞きにきたのでした。Eさんは亡くなり、今からエンゼルに入る旨を伝えると、ウノさんは、一緒にエンゼルに入りたいと申し出てくれました。

Eさんのエンゼルを進めながらナスさんとウノさんは話をしています。Eさんの入院までの経緯を聞き、「自分で救急車呼んだんだ…よっぽどつらかったんだね、つい3日前までは元気だったのに。」とウノさんが言いました。最期まで好きなお酒飲んで、タバコ吸って、好きに生きて苦しくなったらちゃんと救急車を呼ぶ。Eさんらしい最期だったと2人は納得します。

ナスさんとウノさんは、独居で身寄りもなくて唯一の近親者には、骨になったら引き取るとまで言われ、最後の瞬間も誰一人知っている人に見送られることのないだろうEさんの人生だったが、それでもEさんの人生が不幸であったとは思いたくなくて、自分に言い聞かせるように何度も何度も「幸せだよ」と言いながら、2人はEさんのケアをしました。

人にとって何が幸せかなんて分からないならば、患者さん本人の「幸せの形」に寄り添うことがナースとしてできることなのか、平均的な生活を送れるよう援助する事が幸せなのかとか、Eさんの人生から「本当の幸いとはなんだろう」と考えるナスさんなのでした。

 


【著者プロフィール】

ぷろぺら(@puropera44

現役で病棟看護師やってます
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