「准救急隊員」が創設! 救急隊の人手不足を看護師や保健師、自治体職員が救う!?

昨今、救急車の出動件数は増加していますが、平日日中しか救急隊が稼働できていない事態が発生するなど、一部地域では救急隊員の人手不足が深刻化しています。

 

そのため、過疎地域の救急搬送をスムーズに行うため、「准救急隊員」という職種が、2017年4月から新しく創設されます。

そこで、救急の現状と、准救急隊員についてまとめてみました。

「准救急隊員」によってココが変わる!

 

〈目次〉

 

2015年の救急車による搬送件数は過去最多の605万件

 

救急隊の出動件数は右肩上がりに上昇し、2015年中の救急車の出動件数は約605万件、搬送人数は約547万人で、件数および人数のいずれも過去最多となりました。

 

この背景には、高齢化による高齢者からの要請の増加や、軽症者の救急要請があります。東京都では救急搬送された人のうち75歳以上が35%を占め、また全体の半数は入院を要しない軽症者でした。

 

増え続ける救急ニーズに対して、人口減少や財政不足に悩む自治体では救急隊員の確保に頭を悩ませています。

 

地域によっては救急車が出動するのは平日の日中のみ

法令の定めによって、救急患者の搬送には3人の救急隊員が同乗する必要があります。このため救急隊員を確保できない地域では、平日日中しか救急車が稼働できず、休日夜間はより遠方の救急隊が出動するという事態が起きていました。

 

そこで過疎地域からの切実な訴えを受ける形で消防法施行令が改正され、新たに准救急隊員の創設が決まりました。

 

改正法令では、救急車に乗車する救急隊員3人のうち1人を准救急隊員に当てることができるようになります。

 

救命行為は医師法、保助看法の範囲内で

准救急隊員の資格を得られるのは、医師、保健師、看護師、准看護師、救急救命士、および救急科(250時間)の修了者、消防隊OBなどです。これらの医療職に加えて、救急業務の講習(92時間)を終了した自治体職員も准救急隊員となることができるようになりました。

 

講習の実地主体は各自治体です。なお、講習を受ける必要があるのは自治体職員のみで、医師や看護師などはすでに救命救急の基礎知識があるものとみなされ、講習は免除されます。

 

しかし、自治体職員は講習を受けても、リスクの高い高度な応急処置は行うことができません(例えば、喉に詰まった異物を吸引器で取り去るなど)。医師や看護師などは、医師法や保助看法の範囲内で救助行為を行うことができるようになる見込みです。

 

新制度のスタートは4月1日から

新制度のスタートは、2017年4月1日からです。准救急隊員は消防庁の職員として自治体が直接、雇用するケースが想定されます。

 

消防庁救急企画室では、「実際は、自治体が准救急隊員として看護師を確保することは難しいかもしれません。過疎地では、看護師がさらに人手不足だからです。しかし、救急隊の編成条件が緩和されたことで、日中しか出動できなかった救急車が夜間でも出動できるようになるなど、救急医療の改善につながることが期待できます」と話しています。

 

特殊なケースではない! 全国に散らばる過疎地域

今回の法令改正は、救急隊員が確保できない過疎地域に対する救済措置的な意味合いがあります。しかし、過疎法に定められた過疎地域は、全国に797市町村、および離島112市町村あり、神奈川県を除く46都道府県に幅広く散らばっています。

 

例えば、県庁所在地に一部過疎地域が含まれているのは秋田県秋田市、富山県富山市、福井県福井市、山梨県甲府市、長野県長野市、三重県津市、京都府京都市、鳥取県鳥取市、島根県松江市、岡山県岡山市、山口県山口市、香川県高松市、愛媛県松山市、高知県高知市、佐賀県佐賀市、長崎県長崎市、大分県大分市、鹿児島県鹿児島市など、18府県に上ります(図1)。

 

図1県庁所在地に一部過疎地域を含む都市

県庁所在地に一部過疎地域を含む都市

(総務省の『過疎地域市町村等一覧』を元に作成)

 

このほかにも、北海道函館市や青森県弘前市、岩手県花巻市、宮城県石巻市、群馬県高崎市、新潟県長岡市、静岡県浜松市、愛知県豊田市などの中都市でも過疎地域を含んでおり、救急隊員の不足が特殊な事例ではないことがわかります(2016年4月1日)。

 

* * *

 

地方からの切実な訴えを受け入れる形で創設が決まった准救急隊員。スムーズな救急搬送によって人命救助が進むことが期待されます。

 

一方で、安易な救急要請を減らすための積極的な施策を取らなければ、いくら人材を育成しても問題を根本的に解決することは難しいともいえそうです。

 

【ライター:横井 かずえ】

 

<参考文献>
(1)消防法施行令の一部を改正する政令(案)に対する 意見募集の結果及び政令の公布. 総務省消防庁. 2016. (2016/12/21アクセス)

 

(2)「平成27年の救急出動件数等(速報)」の公表. 総務省消防庁. 2016. (2016/12/21アクセス)

 

(3)平成27年中の救急出場件数が過去最多を更新. 東京都消防庁. 2016. (2016/12/21アクセス)
 

(4)過疎地域市町村等一覧(平成28年4月1日). 総務省. 2016.(2016/12/21アクセス)

 

SNSシェア

コメント

0/100

掲示板でいま話題

他の話題を見る

アンケート受付中

他の本音アンケートを見る

今日の看護クイズ

本日の問題

◆産婦人科の問題◆歯周病合併妊娠と関係ないものはどれでしょうか?

  1. 早産
  2. 口唇口蓋裂
  3. 胎児発育不全
  4. 妊娠高血圧腎症

1828人が挑戦!

解答してポイントをGET

ナースの給料明細

8972人の年収・手当公開中!

給料明細を検索