エンゼルケアにおける口腔内ケア | エンゼルケア【1】
【執筆】
山本君子(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 教授)
杉原ひとみ(東京医科大学病院 看護師 臨地実習指導者)
「エンゼルケア~口腔ケア~」の目的
●臭気発生の予防が目的(死亡後の早い段階で、口腔内の臭気は問題になる)
「エンゼルケア~口腔ケア~」の適応
●死後硬直が頸部から始まる下顎硬直のあいだ(1~3時間)に口腔ケアを行う(口の開閉がスムーズな硬直開始前に口腔ケアを行うことで、臭気発生を抑えることができる)
「エンゼルケア~口腔ケア~」の禁忌
●口唇にかさぶたなどがある場合(無理にはがすと出血し、止血に時間を要することがあるため、力を入れ過ぎないようにする)
「エンゼルケア~口腔ケア~」の必要物品
- エプロン
- ガーゼ
- 水の入ったコップ
- 舌圧子
- 口腔ケア用ジェル
- 歯ブラシ
- スポンジブラシ
- タオル
- ビニール
- マスク
「エンゼルケア~口腔ケア~」の実施
(1)ご家族へ口腔内ケアについて説明し、同意を得る
(2)体位は15度ファーラー位にする
(3)顔を横に向け、タオルを頚部から胸元に当てる
(4)物品を使いやすい位置に配置する
(5)口唇周囲を拭き、口唇に口腔ケア用ジェルを塗布する
ポイント
ジェルを塗布することにより、口腔内の乾燥によって粘膜に付着した汚れを柔らかくする
(6)口腔ケア用ジェルを、口腔内全体に塗布する
(7)歯ブラシに口腔ケア用ジェルをつけ、汚れを取り除く
■歯ブラシの順序
- ①上歯と歯肉の内側
- ②外側
- ③咬合面
- ④下歯と歯肉の内側
- ⑤外側
- ⑥咬合面
- ⑦口蓋
- ⑧頬の内側
- ⑨舌
(8)新しいスポンジブラシで口腔内全体を拭い、観察を行う
(9)口唇周囲をガーゼで拭き、口腔ケア用のジェルを塗布する
ポイント
顎固定のために包帯で縛ると、圧迫した箇所の皮膚がうっ血や浮腫をもたらす。また、縛った箇所は輪状に圧迫のあとがつくため、注意
(10)枕を少し高くし、タオルで顎を支える
(11)ご家族に終了したことを説明し、終了
【出演】
市川砂織(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 助教)
田地奏恵(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 助教)
森下純子(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 非常勤講師)
【引用・参考文献】
(1)鈴木小百合・戸田由美子(著):学ぶ・試す・調べる 看護ケアの根拠と技術,医歯薬出版,2014:85-95.
(2)上原朋子(著):ナーシング・グラフィカ 老年看護学② 高齢者看護の実践,メディカ出版,2016:63-66.