高齢者の誤嚥予防(車いすでの食事介助)

 

【執筆】

山本君子(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 教授)

 

「高齢者の誤嚥予防」とは

●誤嚥を起こすと、誤嚥性肺炎のリスクが高まるため、予防することが重要になる。高齢者は、飲食をするための諸機能が低下しており、特に咀嚼・嚥下機能、咳嗽反射・嚥下反射機能が低下するため嚥下困難が生じ誤嚥を起こしやすくなる

 

「高齢者の誤嚥予防」の禁忌

●会話をしながら食事を勧める際、食物が口腔内にある時の会話は禁忌。咀嚼・嚥下中に話しかけると誤嚥を誘発する

●看護師は患者さんより高い位置で、患者さんを見下ろす食事介助は禁忌。患者が上を向くことになり頸部が伸展するため誤嚥する危険がある

 

「高齢者の誤嚥予防」の必要物品

おしぼり タオル(中) タオル(大) 増粘剤(トロミ) スプーン(大・中・小など) フォーク 橋 献立表(指示書)

安楽枕 リクライニング式車いす

  • おしぼり
  • タオル(中)
  • タオル(大)
  • 増粘剤(トロミ)
  • スプーン(大・中・小など)
  • フォーク
  • 献立表(指示書)
  • 安楽枕
  • リクライニング式車いす

 

「高齢者の誤嚥予防」の準備

(1)誤嚥予防のため、車いすで食事することを説明する

 

(2)患者さんをベッドから車いすへ移乗介助する

 

(3)体幹を前かがみにし、足底を床に着ける

 

(4)安楽枕を背部に入れ、体幹が傾かないようする

 

「高齢者の誤嚥予防」の実施手順

(1)献立表(指示書)と食事内容を照合し、間違いがないかを確認する

 

(2)患者さんの氏名を確認し、配膳する

 

(3)看護師は患者さんより低い位置に座る

ポイント

患者さんが上を向くことになり、頸部が伸展するため、誤嚥する危険がある

 

(4)麦茶などで口を潤してもらう

ポイント

1回の量が多すぎると誤嚥のリスクが高くなり窒息の危険もある

 

(5)飲み込みに問題がない場合、自力で食べてもらう

 

(6)1回に口に入れる分量は、小さじ1杯程度にする

ポイント

1回の量が多すぎると誤嚥のリスクが高くなり窒息の危険もある

 

(7)スプーンは、水平に差し入れ、水平に引き抜く

 

(8)味噌汁に増粘剤を入れ、トロミをつける

 

(9)口腔内に食物がないときに話かけながら、食事介助する

 

(10)車いすの背もたれを倒し、1時間程度休息してもらう

 

【出演】
市川砂織(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 助教)
田地奏恵(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 助教)
森下純子(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 非常勤講師)

【引用・参考文献】

(1)中島聖子(著):写真でわかる高齢者ケア,インターメディカ,2011:19-28.
(2)小島千枝子(著):摂食・嚥下障害ベストナーシング,学研メデイカル秀潤社,2010:73-116.
(3)関口恵子(著):学ぶ・試す・調べる 看護ケアの根拠と技術,医歯薬出版,2014:39-43.

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