経皮的ペーシングの実施方法 | 経皮的ペーシング【1】
【大好評】看護roo!オンラインセミナー
【監修】
中島恵美子(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 教授)
【執筆】
加賀谷聡子(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 教授)
「経皮的ペーシング」とは
●経皮的ペーシングは、症状を伴う重篤な徐脈性不整脈に対して、循環動態改善のために緊急で実施される
●気刺激をパルス状に発生させ、その電気を胸部に貼布したパッドを通して体外から伝えることで、心臓を収縮させ、徐脈を改善する
「経皮的ペーシング」の禁忌
●重症低体温(代謝の低下による生理的な徐脈であり、心室細動を引き起こしやすいため)
●20分以上経過した徐脈性の心停止(蘇生率が低く、生存したとしても深刻な脳機能障害を引き起こすため)
●意識があり、循環動態が安定している患者さん
●ペーシングパッドを貼布する位置の皮膚に異常のある患者さん
「経皮的ペーシング」の必要物品
- 鎮痛薬・鎮痛剤
- 注射器
- 注射針
- 消毒液
- 固定用テープ
- ペーシング用ケーブル
- ドレッシングフィルム材
- ペーシングパッド
- 経皮的ペーシング用ペースメーカー装置
- 救急カート
「経皮的ペーシング」の準備
(1)患者さんとご家族への説明内容を確認する
(2)必要に応じ鎮痛・鎮静を行う
(3)医師の指示に従い薬剤を準備する
(4)毛深い患者さんの場合は、剃毛を行う
(5)事前に貼布薬などは除去しておく
(6)急変に備え、救急カートを準備しておく
「経皮的ペーシング」の実施手順
(1)除細動器の心電図モニターを患者さんに装着する
(2)ペーシングパッドを左前胸部・対極面の背部に貼布する
(3)除細動器にペーシング用ケーブルを接続する
(4)ケーブルの他方は、ペーシングパッドのコネクターと接続する
(5)ペーシング中の脈拍は、必ず大腿動脈で確認する
(6)疼痛の有無を確認し、我慢しないように患者さんに説明する
(7)モニターの波形を観察し、トラブルがないか確認する
(8)血圧測定・脈拍触知で循環動態のチェックを経時的に行う
「経皮的ペーシング」におけるトラブルについて
【トラブル1】ペーシング不全
電気刺激が出ているのに、心筋の興奮が生じない状態(QRSが生じない状態)
【おもな原因】
電流量(出力レベル)が低いことによる
【対策】
①QRSが確認されるまで電流量を増加させる
②ペーシングパッドの位置をずらすことで改善される場合もある
③代謝性アシドーシスや低酸素血症なども要因となるため、検査データを確認し、必要に応じて補正を行う
【看護師の対応】
看護師の対応としては、医師に報告するとともに、機器が正常に作動し接続されているか今一度確認することが必要
【トラブル2】センシング不全
デマンドペーシングで自己心拍(QRS)を感知できない状態
【対策】
①心電図のサイズを大きくするようにペースメーカーの設定を変更する
②心電図の誘導を変えたり、ペーシングパッドの位置を変えることが有効な場合もある
③新しいパッドに張り替える必要がある場合もある
【看護師の対応】
看護師の対応としては、医師に報告するとともに、ペーシングパッドが乾燥したり変性していないか確認する
【トラブル3】オーバーセンシング
筋電図など、QRS以外の電位を感知してしまうこと
【原因】
原因となる電位には、筋電位やT波などがある
【対策】
①心電図のサイズを小さくするようにペースメーカーの設定を変更する
②心電図の誘導を変えたり、ペーシングパッドの位置を変えることが有効な場合もある
③オーバーセンシングが続く場合、ノンデマンドペーシングに変更する必要が生じる場合もある
【看護師の対応】
発見次第、医師にすみやかに報告する
【撮影協力】
日本光電工業株式会社
【出演】
市川砂織(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 助教)
田地奏恵(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 助教)
森下純子(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 非常勤講師)