インスリン自己注射の指導 | インスリン【1】
【監修】
中島恵美子(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 教授)
【執筆】
百々典子(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 助教)
「インスリン自己注射指導」の目的
●患者さんや家族が日常生活の中で安全・確実にインスリン療法を実施できるために行う
●指導は自己注射の導入時だけではなく、患者さんが継続して安全に自己注射が行えるように定期的に介入していく必要がある
「インスリン自己注射指導」の適応
●インスリン依存状態にある1型糖尿病患者さんは絶対的適応
●2型糖尿病患者さんへの投与は、薬事療法・運動療法や内服薬治療を行っても高血糖状態が続き、血糖コントロールが不良な場合に行う
●インスリンの自己注射の実施には、患者さんに視力の問題がなく、手指に麻痺や変形、疼痛や痺れ、握力低下などがなく、認知機能に問題がないことが必要となる
●視力や身体機能の問題を補助具などで補えない場合や認知機能に問題がある場合は、家族(または、それに代わる介助者)に注射をしてもらう場合がある
「インスリン自己注射指導」の禁忌
●患者さんのインスリン療法や自己注射に対する心理的な抵抗がとても強い場合、指導することを控える
「インスリン自己注射指導」の必要物品
- 針捨て容器
- 手袋
- 注射指示書
- アルコール綿
- 測定用チップ
- 注射薬専用の注射針
- 穿刺針
- 穿刺用具
- 注射入りペン型容器・注射薬(医師より指示された薬剤、単位数)
- 簡易血糖値測定器
- 糖尿病の自己管理ノート
「インスリン自己注射指導」の準備
(1)患者さんにインスリン自己注射の目的・方法を説明し、同意を得る
(2)実施前に、患者さんに手洗いをしてもらう
(3)使用する薬剤や必要物品を見せながら説明する
●患者さんに説明する項目
- 血糖値の測定方法
- インスリン製剤の製品名
- 単位数
- 注射時間
(4)カートリッジのゴム栓にまっすぐ取り付ける
(5)針先からインスリンが出てくることを確認する
(6)注射前に血糖値を測定する
(7)測定値を自己管理ノートに記載する
(8)医師の指示通りの単位数に合わせる
「インスリン自己注射指導」の実施手順
(1)注射部位をアルコール綿で消毒する
(2)注射部位を選ぶ。吸収がいちばん安定する腹壁とする
(3)ペン型注射器の注入ボタンを拇指で押せるように握り、単位設定のダイアル表示が見えるようにする
(4)注射部位に注射針を垂直に刺す
(5)注入ボタンを単位設定ダイアルがゼロになるまで押す
(6)注入器ごとに決められた秒数以上を数える
(7)注入ボタンを押したまま針を抜く
(8)注射部位は揉まず、アルコール綿で押さえる
注射部位を揉まない理由
●注射部位を揉むと吸収が早まり低血糖を起こす場合があるため、軽く押さえる
「インスリン自己注射指導」の実施後手順
(1)針ケースをかぶせ、注射針を引き抜き、廃棄する
(2)患者さんに自己注射の一連の流れをフィードバックしてもらう
【出演】
市川砂織(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 助教)
田地奏恵(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 助教)
森下純子(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 非常勤講師)
【引用・参考文献】
(1)朝倉俊成(著):薬と注入器の特徴・選び方のコツがまるわかり! インスリン・インクレチン関連薬の自己注射くすりとデバイスQ&A,69,メディカ出版,東京,2013.
(2)日本糖尿病学会(編著):糖尿病治療ガイド2014-2015,文光堂,東京,2014.
(3)林 道夫(監修):糖尿病まるわかりガイド 病態・治療・血糖パターンマネジメント,学研メディカル秀潤社,東京,2014.