麻薬の投与中の観察 | 薬剤管理【3】
【監修】
山本君子(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 教授)
【執筆】
市川砂織(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 助教)
「麻薬投与中の観察」の目的
●痛みの評価ができ、患者が疼痛なくすごせるよう支援すること
●オピオイドの副作用対策ができ、疼痛コントロールによるQOL低下や服薬アドヒアランスの低下を防ぐことができる
麻薬投与中の観察の種類
●痛みの評価
●副作用の観察
痛みの評価(3種類)
- 痛みの強さ
- 痛みの性質
- 痛みの影響
患者さんと医療者が痛みの強さを共有する重要なリソースとして、疼痛評価スケールがある。
- 【A】数値評価スケール:NRS(Numeric Rating Scale)
- 【B】視覚的評価スケール:VAS(Visual Analog Scale)
- 【C】カテゴリースケール:VRS(Verbal Rating Scale)
- 【D】フェイススケール
【A】数値評価スケール施用する場合、痛みの強さを0から10までの11段階で評価する
■患者さんへの確認方法
- いちばん強いときの痛み
- いちばん弱いときの痛み
- 1日の平均の痛み
- 安静時の痛み
- 体動時の痛み
患者さんには、「想像できる最大の痛みを10として考えてみてください」と尋ねる
痛みの性質
痛みの性質の評価も重要になる。下記のようなことを患者さんに尋ねる
- 痛みの部位
- どのような痛みか
- 痛みの性質
- 痛みの影響
痛みの原因について
がん患者さんの体験する痛みの意味は以下の4つに分類される
- がん自体が直接の原因となる痛み
- がんに関連した原因による痛み
- がん治療に関連して起こる痛み
- がん以外の疾患による痛み
【がんの痛みについてポイント】
●がん患者が痛みを訴えたときに、すぐにがん自体による痛みと思い込まず、痛みの原因は何かをアセスメントすることが大切
●患者さんが表現する痛みから、痛みの原因をアセスメントすることで、患者さんが適切な治療を受けられることへつながる
●痛みには1日の大半を占める持続痛と、一過性の痛みの増強である突出痛に分けられる
痛みの影響について
痛みの影響では、痛みにより日常生活にどの程度影響をきたしているのかを確認する。数値的な変化だけでなく、患者さんの生活に焦点をあて、総合的に評価することが大切
日常生活への影響は、WHO方式がん疼痛治療法で挙げられている3段階の除痛目標に沿って評価する
- 第1目標:痛みでの夜間の睡眠が妨げられない
- 第2目標:安静時の痛みの消失
- 第3目標:体動時の痛みの消失
副作用の観察について
副作用の観察は極めて重要。副作用を見逃し、オピオイドの副作用対策が不十分になると、患者さんのQOL低下や、オピオイド鎮痛薬の継続困難という問題が生じる
【出演】
市川砂織(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 助教)
田地奏恵(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 助教)
森下純子(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 非常勤講師)
【引用・参考文献】
(1)的場元弘,加賀谷肇(監修): Q&Aでわかる がん疼痛緩和ケア.じほう,東京,2014.
(2)日本緩和医療学会(編集):がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン 2014年度版.金原出版,東京,2014.
(3)的場元弘(著):がん疼痛治療レシピ.10,春秋社,東京,2007.
(4)山下めぐみ(著):痛みの程度を知る.がん看護. 15(2),106-109,南江堂,東京,2010.
(5)須藤由香里(著):オピオイドの副作用と対策. 15(2), 190-195,南江堂,東京,2010.