麻薬投与管理(持続皮下注射) | 薬剤管理【2】
【監修】
山本君子(杏林大学保健学部看護学科 教授)
【執筆】
市川砂織(杏林大学保健学部看護学科 助教)
「麻薬投与管理(持続皮下注射)」の目的
●持続皮下注射による麻薬投与が安全、確実に実施される
●持続皮下注射による合併症の早期発見、予防ができる
●PCA(Patient-Contolled-Analgesia:患者自己調節鎮痛)による疼痛コントロールのモニタリングができる
「麻薬投与管理(持続皮下注射)」の適応
●内服が困難な患者さん
●身体的な理由等で坐剤の使用が困難な患者さん
●疼痛の急激な増悪により、早期に除痛が必要な患者さん
「麻薬投与管理(持続皮下注射)」の禁忌
●浮腫などで皮下からの吸収が低下している患者さん
●刺入予定部位の皮膚に異常がある患者さん
「麻薬投与管理(持続皮下注射)」の必要物品
- 手袋
- 27G翼状針
- PCAポンプ
- エクステンションチューブ(容量0.5mL)
- 固定用テープ
- 消毒綿
- フィルムドレッシング材
- 処方箋
「麻薬投与管理(持続皮下注射)」の実施手順
(1)誤薬防止のため6Rをチェックする
■誤薬防止のため6R(Right)
- 正しい患者(氏名、部屋番号など):Right Patient
- 正しい薬剤:Right Drug
- 正しい量:Right Dose
- 正しい方法:Right Route
- 正しい時間:Right Time
- 正しい目的:Right Purpose
(2)投与指示量がバルーン内に充填されていることを確認し、マーカーで日付とラインを入れる
(3)接続側チューブに、エクステンションチューブ・27G翼状針を接続する
(4)翼状針のルート内にプライミングさせる
※プライミング…ルート内を点滴液で満たすこと
(5)患者さんの本人確認を行う
(6)持続皮下注射の挿入部位を決定する
◆刺入部位の決定について◆
刺入部位は、患者さんが身体を動かしたときに影響を受けにくいように決定する
【Aの位置】患者さんが起き上がれる場合
【Bの位置】患者さんが上肢や上半身の動きが多い場合
【Cの位置】患者さんが寝たきりで体位交換が必要な場合
(7)刺入後、スライドクランプを解除し、薬液の投与を開始する
(8)翼状針を皮下に留置し、ドレッシングフィルム材で固定する
(9)強い痛みが出た場合ボタンを押し、鎮痛剤を投与することを伝える
(10)次に痛みを感じたときにボタンを押すことができる時間を伝える
ポイント
過量投与を防ぐために、ポンプごとにボタンを押してはいけない時間がある
(11)ポンプ本体とPCA装置の位置を同じ高さに保つことを説明する
ポンプとPCAの高さについて
ポンプ>PCA 重力で投与速度が速くなるため、この2つの高さには注意する
(12)患者さんの痛みを評価する
■患者さんの痛みを評価する
- PCAボタンを押した回数
- いつどのようなときにボタンを押したか
- 疼痛の程度・日常生活状況など
【出演】
市川砂織(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 助教)
田地奏恵(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 助教)
森下純子(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 非常勤講師)
【引用・参考文献】
(1)的場元弘,加賀谷肇(監修): Q&Aでわかる がん疼痛緩和ケア.じほう,東京,2014.
(2)鈴木央(著):PCAポンプ使用の実際.プロフェッショナルがんナーシング,1(1),126-127,メディカ出版,2011.
(3)ペインブロッカー(PCAタイプ)添付文書(2016/01/07 アクセス)
(4)的場元弘(著):がん疼痛治療レシピ.春秋社,東京,2007.