NPPVの導入・管理 | 人工呼吸ケア【6】
【監修】
中島恵美子(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 教授)
【執筆】
伊藤有美 (杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 講師)
「NPPVの導入・管理方法」の目的
●NPPV(noninvasive positive pressure ventilation;非侵襲的陽圧換気)は、気管挿管を行わずにマスクを用いて上気道から陽圧で換気し、呼吸不全を改善する目的で実施する
●NPPV導入後は、気管挿管に移行する可能性を予測して常にアセスメントする
「NPPVの導入・管理方法」の適応
●急性呼吸不全では、主として、心原性肺水腫やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)急性増悪の患者さんに適応される
●慢性呼吸不全では、COPDや筋ジストロフィーに代表される神経・筋疾患患者さんなどに適応されるが、エビデンスが確立されていないものもある
●一般的な適応として、①患者さんが協力的、②循環動態が安定、③顔面の外傷がない、④マスク装着が可能、⑤消化管に閉塞などの異常がない、などが挙げられる
「NPPVの導入・管理方法」の禁忌
以下に示す状況にある場合は、適応注意または禁忌とされる
●非協力的で不穏、昏睡・意識状態が悪い
●気道の確保が出来ない、咳反射がない(または弱い)、多量の気道分泌物がある(あるいは排痰できない)
●呼吸停止、自発呼吸がなく換気が必要
●心停止、循環動態が不安定、心筋梗塞や不安定狭心症
●腹部や食道手術後、嘔吐や腸管の閉塞、消化管出血
●顔面の外傷、熱傷、手術な解剖学的異常でマスクがフィットしない
●ドレナージされてない気胸
「NPPVの導入・管理方法」の禁忌
●急変時に備えバッグバルブマスクを用いた人工呼吸が出来るように、酸素配管は2つ確保する
●NPPVは、生命維持装置の役割を果たしているので、突然の停電でも作動できるよう無停電電源を確保する
●呼吸および循環動態を常にモニタリングするために、生体情報モニタを準備する
●呼気(こき)ポートは、専用回路、もしくはマスクに備わっており、どちらか片方に付いていることが必須
「NPPVの導入・管理方法」
(1)気管挿管下での人工呼吸管理に移行する準備をしておく
(2)NPPVを呼気ポートからのリーク量をインプットする
※NPPVの場合、マスクからリークするが許容するように設定されている(60L/分までは許容範囲)
■NPPVで設定する項目
- 吸入酸素濃度(FiO2)
- モードおよび圧設定
- 換気回数
- 吸気時間
- ライズタイム
(3)低い圧から開始したり、自覚症状を聞きながら圧を調節する
(4)人工呼吸管理を開始する。患者さんが最も安楽に感じる体位を選択する
(5)患者さんが不快感などを感じない位置にマスクを当てる
(6)ストラップはきつく締めすぎないようにする
(7)患者さんの異常があった場合、早期発見ができるようにアラーム設定を必ず行う
(8)開始30分に初期評価する。1~2時間ごとに呼吸状態・全身状態を評価し、継続の検討をする
ポイント
NPPV設定の変更などが生じるため、短時間で評価することが重要
■評価ポイント
- 呼吸状態:呼吸数・呼吸パターンおよびNPPVとの同調性・呼吸音・SpO2
- 循環動態:心拍数および心電図変化・血圧
- 意識レベル
- マスクフィッティング
【出演】
市川砂織(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 助教)
田地奏恵(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 助教)
森下純子(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 非常勤講師)
【引用・参考文献】
(1)濱本実也(編),長谷川隆一(医学監修):誰でもわかるNPPV 非侵襲的陽圧換気.照林社,東京,2015.
(2)日本呼吸器学会 NPPVガイドライン作成委員会(編集):NPPV(非侵襲的陽圧換気療法)ガイドライン 改訂第2版.南江堂,東京,2015.
(3)福永真由子(著),讃井將満,大庭祐二(編):人工呼吸管理に強くなる.羊土社,東京,2012:246-261,第5章 特別編 1.NPPVについて知ろう.
(4)日本呼吸療法医学会 人工呼吸管理安全対策委員会 :NPPVにおける注意喚起警告文.(2016/01/04アクセス)
(5)PHILIPS:人工呼吸器 V60 簡易取扱説明書.(2016/01/04アクセス)