筋肉注射(上腕部)の実施方法 | 注射【3】
※編集部註※
新型コロナウイルス感染症のワクチン接種により筋肉注射への関心が高まり、正しい筋肉注射の方法が議論されています。
動画内では血液の逆流がないことを確認する場面がありますが、現在は、筋肉注射で推奨されている接種部位に大きな血管はないため、血液の逆流確認は推奨されていません。ただし、施設によっては逆流確認を行う場合もありますので、自施設のマニュアルをご確認ください。
また、より安全な注射部位も議論されており、プライマリ・ケア連合学会の「新型コロナワクチン より安全な新しい筋注の方法 2021年3月版」で紹介されています。
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【執筆】
山本君子(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 教授)
「筋肉注射(上腕部)」の実施手順
(1)患者さんの本人確認をする
(2)誤薬防止のため、6Rを声に出しながら、指差し確認を行い、注射指示書と照合する
■誤薬防止のため6R(Right)
- 正しい患者(氏名、部屋番号など):Right Patient
- 正しい薬剤:Right Drug
- 正しい量:Right Dose
- 正しい方法:Right Route
- 正しい時間:Right Time
- 正しい目的:Right Purpose
(3)刺入部位を露出する
ポイント
肩峰から3横指下の三角筋中央部または前半部
ポイント
筋肉が豊富で、重要な神経や血管が少なく、皮膚に隣接している骨がない部分を選択する。血管や神経の損傷、筋の短縮・拘縮を避ける
(4)注射部位をアルコール綿で消毒する。刺入部位を中心に、外側に向かって円を描くように消毒し、アルコールが乾燥するまで待つ
(5)三角筋の筋層を大きくつまみ、筋層の太さ等を確認する
(6)注射器の刃面を上に向ける
ポイント
刃面を上にむけると皮膚への刺入が簡単になる
(7)注射針を45~90度の角度で2/3程度 (約2cm)刺入する
ポイント
皮下脂肪層の厚い場合は90度で刺入する
皮下脂肪層の浅い場合は45~60度で刺入する
(8)しびれや激しい痛みの有無を確認する
(9)薬液をゆっくり注入する
(10)アルコール綿で軽く圧迫する
マッサージをする理由
薬剤の浸透を促し、疼痛の緩和や硬結を予防する
(11)針と注射器を針捨容器に捨てる
(12)気分不快の有無と刺入部の止血を確認する
【出演】
市川砂織(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 助教)
田地奏恵(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 助教)
森下純子(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 非常勤講師)
【引用・参考文献】
(1)藤井徹也(著):考える基礎看護技術Ⅱ 看護技術の実際,ヌーヴェルヒロカワ,2015:267-279.
(2)肥後すみ子(著):新体系 看護学全書 基礎看護学③ 基礎看護技術Ⅱ,メヂカルフレンド, 2015:270-286.
(3)脇坂豊美,川西千恵美(著):学ぶ・試す・調べる 看護ケアの根拠と技術,医歯薬出版,2014:125-136.