患者さんと試合経過で盛り上がる!ある強火野球オタク看護師の話|ナースの推し事(3)
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この連載では、さまざまな「推し」と一緒に日々を乗り切るナースに、推しのいる日常や、推しに救われた経験をインタビューしていきます。
第3回は、横浜DeNAベイスターズが大好きだという、看護師6年目のわかこさん(仮名)。
野球好き歴15年、ベイスターズファン歴5年…「もはや人生の一部」と話すわかこさんは、仕事と推し活をどのように両立させているのでしょうか。
生粋のオタク気質である筆者が、じっくりお話を伺ってきました!
取材・文/於ありさ(ライター)
地元で働き、地元で観戦! わかこさんの推し活事情
――本日はよろしくお願いします!まずはわかこさんのプロフィールを教えてください。
看護師6年目です。地域包括ケア病棟で働いています。
生まれも育ちも、看護学校も横浜で、横浜DeNAベイスターズ(以下、ベイスターズ)が大好きです!
――もともと野球がお好きだったんですか?
そうですね。両親が千葉ロッテマリーンズ(以下、ロッテ)のファンなので、小さいころからよくテレビで野球を見る家だったんですよ。
2005年にロッテが日本一になったのをきっかけに、私もロッテを応援するようになりました。
――ベイスターズを好きになったきっかけって、どんなことだったんでしょうか?
野球好きがきっかけで知り合った夫が、小さい頃からベイスターズが好きで。その影響が大きいです。
地元の球団ということもあって、仕事後にも通いやすくて!球場の雰囲気もすごく好きで、球場に通っているうちに、ベイスターズにハマっていきました。友達や患者さん、同僚にもベイスターズ好きが多いです。
――地元ってやっぱり強いですね…!ちなみに、推し選手っていらっしゃるんでしょうか?
ベイスターズという球団自体が好きなのはもちろんなんですけど、私にとって神様のような選手がいて…。その選手のことを特に推しています!
――神様!どなたですか?
今、キャプテンをしている佐野恵太選手です。2018年から応援しています。
2016年のドラフト下位指名で入団した選手で、出場機会もそんなになかったんですけど、あることをきっかけに出場機会が増えて、2020年からはキャプテンに…!私の目に狂いはなかったなって感じです!(笑)
――好きになったきっかけは、なんだったんですか?
彼の出場機会が増えたきっかけでもあるのですが、2018年6月29日のカープ戦で、最終回のワンアウト1・2塁のとき、代打で出場して、サヨナラヒットを打ったんです!
「このプレッシャーの中で、代打で出てきて打てるなんて。絶対すごい選手になる!」って思って、そこからハマっていきました。
――出場機会が少なかったのに、チャンスでしっかり結果を残して、今はキャプテンってすごいですね!
そうなんです。今は絶大な信頼を得ているんですけど、当時はほぼ無名でしたから。代打に抜擢されたときは「一軍の試合ではイマイチだけど、二軍の中では打てる選手」みたいな立ち位置でした。
私が好きになった頃は、球場でタオルを持っている観客が少なかったこともあって、オーロラビジョン(※)によく抜かれていましたね。
今は背番号7なんですけど、昔の背番号44時代のグッズを持って行って、「痛いな〜」と思いつつ、無意味に古参アピしちゃいます(笑)。アピールしたところで、何かがあるわけではないんですけどね。
※オーロラビジョン…野球場にある大きなスクリーンのこと。選手の登場時や、ヒットを打つなど活躍したときに、その選手を応援しているとわかるファンを映すこともある。
地元球団だから、効率よく推し活できる
――お仕事と推し活のスケジュールの組み方を教えてください。
コロナ前は、入りの日以外は球場に行ってました!日勤終わりも、夜勤明けも!
明けの日は、9時過ぎに退勤、10時に家に着いて仮眠して、16時半くらいに起きて準備して、18時開始の試合に行く、みたいな感じです。
以前は球場に近いところに住んでいたし、病院から球場も自転車で行ける距離なので、とにかく球場に行くことをメインで推し活していました。
――日勤の日は、どんな感じですか?
試合がある日は、「17時半にあがるんで!」って宣言して、仕事を爆速で終わらせて、球場に向かいます。そんな様子を見て「普段からこれくらいで働いてくれたらいいのに(笑)」って言われます。
――地元の球団だと、すぐに行けるのが強みですね。
そうですね。緊急入院があったりすると、試合開始にはどうしても間に合わなくて、3回裏とかになっちゃうこともあります。それでも試合はしっかり見れるから、病院と球場が近いのはありがたい!
あと、ロッカーでユニホームを着て出ていっても、同僚にびっくりされないのもありがたいです。同僚はもちろん、他部署の人やドクターもみんな、私がベイスターズファンって知ってくれてるので(笑)。
――働いている時間と、試合時間が被ってしまうときは、後から試合結果だけを見るんでしょうか?それとも録画して後から見たりするんですか?
それが…患者さんが試合経過を教えてくれることも多いんです。
地元の球団ということもあって、患者さんにもベイスターズファンが多くて!球場の歓声がうっすら聞こえたとき、「さっき誰かホームラン打ったんですか?」って野球好きな患者さんに聞くと、教えてくれるんですよ。
――野球の話題が、コミュニケーションのきっかけになっているんですね!
そうなんです!職場でもベイスターズグッズを使ってるので、患者さんに「好きなの?」と聞かれることも多いですし、ドクターや同僚との話のきっかけにもなります。
あと、試合中継を見ている患者さんや、スポーツ新聞を読んでいる患者さんがいたら、検温しながら「野球お好きなんですか?」って話しかけることもあります。共通の話題があると打ち解けられるので、仕事に支障がない程度に立ち話できて嬉しいです。
同僚の理解や、患者さんとのコミュニケーション、病院の立地…全部含めて、存分に応援させてもらえる環境です。
――希望休は取りやすい環境ですか?
仕事後に行くことも多かったので、観戦のために休みを取る必要もあまりないのですが、「入り以外」の希望で提出すると、師長さんが「試合がある日なんだな」と察してくれて、調整してくれてました。
あと、キャンプ(※)がある2月、夏休みでも年末休みでもないのに、5日間休みをいただけたんです! 理解のある環境で、本当にありがたいなと思います。
※キャンプ…公式戦の期間外などに、各球団が沖縄県や宮崎県などに一定期間泊まり込みで、全体練習や個人練習、自主練習などを行うこと。
コロナ禍で再発見!新たな野球の魅力
――球場での観戦以外だと、コロナ前はどんな形で推し活していたんですか?
サイン会やファン感謝祭に参加したり、キャンプを見に行ったりしていました。
ユニホームやグッズも、かなり持っていますし、タオルは使う用と保存用に2本買っちゃいますね。全部合わせたら、グッズの祭壇を作れるくらいの量を持っています(笑)。
――わかこさんの推し活のモチベーションはどこにあるんでしょうか?
やっぱり、佐野選手の活躍を見れることですね。
あとは、球場の空気が好きです。「年齢も名前も知らないけど、ここにいる人達はみんな野球が好きなんだな」って思うと、すごく幸せなんですよね。コロナ前は、知らない人とハイタッチして喜びあったり、声を出して応援したりするのも好きでした。
――コロナ禍をきっかけに、球場に入場できる人数に制限がかかってしまったと思うのですが…。
そうですね。横浜スタジアムはマックスで3万人くらい入れるのに、今は5000人くらいしか入れなくなってて。仕事のことを考えても、観戦には行きづらくなってしまいました。
最近はテレビで試合を見てますね。
――正直、推し活へのモチベーションが下がってしまうことはないんですか?
あまり下がってはいないです。「今まで通りじゃないのは仕方ない」って割り切っています。
ただ、勝ち負けでテンションの高低が変わることはありますが…。あ!でも、負けてても、佐野選手が活躍できていれば幸せです(笑)。
あと、コロナをきっかけに試合の見方が変わって、それはそれで楽しいかなって!
――どのように変わったのでしょう?
テレビで観戦するからこそ、細かいところまで見るようになったんですよね。「バッティングフォームが変わったな」とか、「苦手なコースも打てるようになったんだな」とか!
あと、球場が静かだからこそ、ピッチャーの投げたボールがキャッチャーミットに入る音とか、バットにボールが当たる音、選手同士の声かけが響くようになって、野球の音が以前よりも聞こえるのが楽しいです。
木製バットでボールを叩く音って、改めて聞くと、本当にすごいんですよ!
ベイスターズは、私の人生の一部!
――お仕事をしている中で、ベイスターズに助けられているなって思うことはありますか?
常にです!もはや人生の一部なので!
ベイスターズを見に行くためのチケット代、グッズ、キャンプの旅費のために働いていますし、ベイスターズがある限り頑張れちゃいます。
あとは佐野選手が活躍していくこと、「今日も元気に試合出てる!」って見れることが、本当に幸せです。私も頑張れます!
――まさに、「推しは人生の一部」ですね…! ありがとうございました!
地元球団を愛し、地元で働いているからこそ、思いっきり推し活をしている姿が印象的だったわかこさん。好きな球団、好きな選手の話をする時、本当に幸せそうに話していたので、こちらまで幸せになりました。
「試合に行きたいから、メリハリをつけて効率的に仕事ができるんです」とのこと。わかこさんの「ベイスターズがある限り頑張れちゃいます」という言葉に、同じオタクとして、強く共感しました。
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