転ばないための、患者・家族に向けた 指導はどのように行えばいいの?|患者・家族指導
『エキスパートナース』2015年9月号<根拠に基づく転倒予防Q&A>より転載。
転ばないための、患者・家族に向けた指導はどのように行えばいいの?について解説します。
山之内香帆
元 国立病院機構東名古屋病院看護部
転ばないための、患者・家族に向けた指導はどのように行えばいいの?
〈目次〉
- 指導の第一歩は「いかに転びやすいかを自覚してもらうこと」
- 指導用ポスターの使用で視覚的にわかりやすく
- “詠んで”意識、“読んで”も意識できる転倒予防川柳
- 「患者の行く先にポスターあり」で、日常から注意喚起
- 対策の立案は、「患者・家族参加型」でいこう!
指導の第一歩は「いかに転びやすいかを自覚してもらうこと」
転倒を完全に防ぐことは難しいですが、患者・家族に関心を持ってもらうことで転倒を減らすことは可能です。
当院では、入院時に患者・家族用に「転倒・転落危険度チェック表」(図1)を渡して、当てはまる項目に「◯」をつけてもらっています。
「1 つでも印がある場合は転倒の危険があるため、注意しましょう」と声かけをしています。
指導用ポスターの使用で視覚的にわかりやすく
当院ではさらに、患者・家族に転倒予防を具体的に伝える方法として、A3サイズのラミネート加工を施したポスターを作成しました(図2)。
これは移動能力別に作成したもので、特に注意してほしい項目を患者と一緒にラミネートの上からマーキングすることで、回答に沿った個別性ある指導ができます。 また、ポスターを食事テーブルに掲示することで、食事が来るまでの間、患者・家族の目に留めることができます(図3)。
“詠んで”意識、“読んで”も意識できる転倒予防川柳
当院では2011年より、チーム1010-4が中心となり、気軽に転倒予防を意識できるように転倒予防川柳の活用を始めました。
医療スタッフ・患者・家族から毎年募集し、2015年からはFacebookや当院ホームページ(http://www.tomeinho.jp/)で一般の方からも募集しています(本取り組みの転倒予防に対する効果については「転ばないために、 環境をどのように整備したらいいの?」・コラム参照)。
「院長賞」「看護部長賞」「チーム1010-4賞」などを選び、入賞作品は院内で掲示しています。ホームページやFacebookでは、集まった川柳から「今日の一句」を毎日選んで発表しています。「今日の一句」は、ホームページからメールマガジンに登録することで配信を受けることもできます。
「患者の行く先にポスターあり」で、日常から注意喚起
転倒予防について気をつけてほしい内容や転倒予防川柳を、A3サイズのポスターにして病棟の廊下・トイレ等の患者・家族の目につきやすい場所に掲示しています(図4)。
転倒予防ポスターを目につく場所に掲示することで、わざわざ指導する時間をとらなくても、入院生活のなかで普段から患者・家族に転倒予防の方法を知ってもらうことができます。
対策の立案は、「患者・家族参加型」でいこう!
「 転びやすさを自覚してもらう」「患者とともにポスターを見て、患者に合った内容の項目をチェックする」「転倒予防ポスターという形で注意喚起する」といった患者・家族が転倒予防に参加できる取り組みを行うことが大事です(1)。
大切なのは、医療スタッフからの一方的な指導ではなく、患者・家族にも参加してもらい、医療者とともに転倒予防の対策をしていると実感してもらうことだと考えます。対策を立てる際も、「あなたはどうしたらよいと思いますか?」と本人の意向も取り入れるとよいと思います。
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P.122~123「転ばないための、患者・家族に向けた指導はどのように行えばいいの?」
[出典] 『エキスパートナース』 2015年9月号/ 照林社