パイロットバルブの硬さ、「耳朶程度」では、なぜいけないの?
『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「パイロットバルブの硬さ」に関するQ&Aです。
露木菜緒
一般社団法人Critical Care Research Institute(CCRI)
パイロットバルブの硬さ、「耳朶程度」では、なぜいけないの?
手の感覚で調整した場合、適正圧を維持できないためです。多くの場合、高圧になり、合併症を併発する可能性が高くなってしまいます。
気管チューブのカフの圧調整
手の感覚でカフ圧調整を行っても、適正圧に維持できない。
「手の感覚で調整したカフ圧を、実際に測定してみると、12~83cmH2Oとばらつきがあり、半数以上が30cmH2O以上の高圧を示した」との報告があり1、高圧による合併症を起こす可能性が高くなる。
カフの適正圧は20~30cmH2Oであり、10cmH2Oという狭い範囲に維持しなくてはならない。これは、量にすると0.5mL程度であり、これを手の感覚だけで調整しようというのは無理である。
[文献]
- (1)Seegobin RD, van Hasselt GL. Endotracheal cuff pressure and tracheal mucosal blood flow: endoscopic study of effects of four large volume cuffs. Br Med J 1984; 288: 965-968.
- (2)American Thoracic Society, Infectious Disease SocietyofAmerica. Guidelinesforthe management of adults with hospital-acquired, ventilator-associated and healthcare-associated pneumonia. Am J CritCare Med 2005; 171: 388-416.
- (3)露木菜緒:気管チューブのカフ圧は調整手技により低下する-実験研究による検討-.日本クリティカルケア看護学会誌2010;6:50-57.
- (4)中嶋美和子:カフ圧の測定を怠ってはいけない.道又元裕,木下佳子,杉澤栄他監修,やってはいけない人工呼吸器管理50,日本看護協会出版会,東京,2006:138-140.
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社