医療コーディネーターがすすめる“看護ノート”の作り方

ミスがなくなり、看護師としての成長の記録にもなる。

医療コーディネーターがすすめる“看護ノート”の作り方


数多くの患者さんの情報を取り扱わなければならない看護師にとって、現場で直接聞いたこと、見たことをその場で正確に書き留めることはとても大事な仕事です。

 

しかし、医療コーディネーターの深津より子さんによれば、「最近は、あまりメモをとっていない看護師も見かけます」とのこと。患者さんの入退院、検査、手術の予定や、薬や食事の内容などをすべて暗記するのは難しいし、間違いも起こりやすいため、きちんとメモをとるべきだと、深津さんは話します。

 

「メモをとらないと、同じことを何度も聞いたり、同じミスを繰り返したりする傾向になりやすいため、周囲からの信頼を得にくくなってしまいます。ミスをしないためにも、自分自身を守るためにも、しっかりメモをとりましょう」(深津さん)

 

仕事の現場では便宜上、小さなメモ帳を使う人が多いと思いますが、看護師としてのさらなる成長につなげるなら“看護ノート”を作ることもおすすめだと、深津さんは言います。仕事内容の違いによって、看護ノートの作り方や書き留めるべき内容は変わりますが、ここでは医療コーディネーターという立場で患者さん個々の外来受診前の情報から、治療状況、退院後の生活に至るまでのあらゆる情報を管理している深津さんの、A4サイズのノートを使った看護ノートの具体的な作り方と、作るメリットについて教えてもらいましょう。

 

(1)A4サイズのマンスリースケジュールノートに“クモの巣状”に記録する

マンスリースケジュール

 

深津さんの場合、患者さんの入退院日や検査、手術の予定といった現在進行形の予定管理は、A4サイズの見開きマンスリーノートを使っているそうです。その理由のひとつは、A4サイズだと余白が十分あるため、予定以外の情報も書き込めることだとか。

 

「スケジュール管理以外にも、余白を使って、患者さんのご家族の連絡先や、そのご家族がどんなお仕事をされているか・・・といった派生的な情報をクモの巣状にメモしています。こうすると、患者さんに関するさまざまな情報をひとまとめにして管理でき、あとから見返す際にも情報を見つけやすくなります」(深津さん)

 

(2)疑問点には「なぜ?」マーク、問題点は付せんで管理する

さらに深津さんは、現場でわからないことがあった場合は、A4マンスリースケジュールノートの余白に内容をメモし、その横に「なぜ?」などのマークをつけています。そして、時間があるときにその疑問について調べて、答えを書き込むそうです。こうすると、いつ、どのような状況で発生した疑問なのかを日時と合わせて記録できるので、覚えやすいと言います。

 

そのほか、重要な問題が生じたときは、同ノートの余白部分に付せんを貼って管理しているそうです。

 

「解決しなければならない問題を付せんに書いて貼り、解決したらはがすことをルールにしています。この方法のおかげで、問題を取りこぼすことを防いでいます」(深津さん)

 

(3)5年手帳を用意して、“カルテに残らない情報”を記録する

看護師の5年手帳術

 

医療コーディネーターとして、年単位で患者さんの動向を把握する必要がある深津さんは、5年分の記録が日付軸で管理できる「5年手帳」も併用していると言います。これにより、入退院を繰り返す患者さんや、長期的に経過をたどる必要がある患者さんの情報などが、時間が経過してもすぐに確認できるのです。

 

「現在進行中の情報をメモするマンスリーノートと比べ、こちらはより保存性の高い情報をまとめることが目的です。入退院の記録や検査、手術の日時といった情報は、マンスリーノートと同様に記録するのですが、それ以外に、患者さんに関する“カルテに残らない情報”をメモしています」(深津さん)

 

カルテに残らない情報”とは、患者さんの家族背景や得意なこと、趣味など。そうしたパーソナルな情報を簡単にメモしておくと、久しぶりに来院したときに「趣味の釣りは最近行っていますか?」などといった会話のネタになり、コミュニケーションの潤滑油になるのです。

 

「患者さんを知るために、よりよいコミュニケーションをとることは看護師の重要な仕事です。特に、趣味や得意なことの話は、患者さんはどんどん話したがるので、なにげない会話の中に大事な情報がたくさんあります。患者さんの健康状況と合わせてコミュニケーションを円滑にしていくうえで、役立つ情報なのです」(深津さん)
 

こうしてノートに書いた内容は、“自分の記録”にもなるのだと、深津さん。

ノートを見返すたびに自分の足あとを振り返ることができ、出会った患者さんとの思い出や、自分自身が看護の仕事とどう向き合ってきたかがよみがえります。そしてそこから、新しく出会う患者さんへの適切なアドバイスや、励ましの言葉が見つかることも多いそうです。きっとこの繰り返しも、看護師としてのスキルアップに大いに役立つ点なのでしょう。

 

当然ながら、個人記録が記載されたノートは院外に持ち出さないようくれぐれも注意したうえで、このノート術から取り入れられそうなアイデアをピックアップし、適宜、自分なりのアレンジも加えて実践してみてください。

 

監修 深津より子さん

1982年横浜市立大学医学部付属看護学校卒。現在の横浜市立医科大学付属市民総合医療センターに3年間勤務後、結婚と育児のため退職。1998年から大和成和病院で手術室配属の看護師として勤務、1998年に手術室看護師長、2000年より心臓外科医療コーディネーター兼任。2010年12月から東京ハートセンター手術室看護師長兼心臓外科医療コーディネーター、2015年12月から昭和大学横浜市北部病院循環器センター心臓血管外科医療コーディネーター。

 

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