消化器系（96問）　状況設定問題

第102回午前95問

次の文を読み問題2に答えよ。
Aさん（40歳、男性）。入院時体重65kg。既往歴に特記すべきことはなく、全身状態は良好である。胃癌のため胃全摘出術を受けた。術中の出血量は450mLで輸血はされなかった。術後1日、体温37.5℃、呼吸数24/分、脈拍120/分、血圧162/90mmHg。Hb14.8g/dL。経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO₂〉92％（酸素吸入3L/分）。尿量50mL/時。創部のドレーンからは少量の淡血性排液がある。硬膜外持続鎮痛法が行われているが、創痛が強いため呼吸が浅く、離床はできない。

問題2
術後1週から食事が開始されたが、毎食後に下腹部痛を伴う下痢があり、Aさんは「食事をするのが怖い」と訴えた。

看護師が確認する必要があるのはどれか。

1.　食後の体位
2.　1日の歩行量
3.　術前の食事の嗜好
4.　食事摂取の所要時間

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解答・解説

1.　食後の体位: 設問の症状の下痢は消化酵素の分泌減少と消化機能の低下によるものと考えられる。よって食後の体位を確認しても下痢と腹痛の改善にはならない。
2.　1日の歩行量: 歩行は術後イレウスの予防になるが、設問の下痢と腹痛は消化酵素の分泌減少と消化機能の低下によるものと考えられることから、1日の歩行量を確認しても下痢と腹痛の改善にはならない。
3.　術前の食事の嗜好: 食欲が低下している患者に対しては、術前の食事の嗜好を確認することで何か食欲低下の原因をつかむことができるかもしれない。しかし、入院中であり、病院食を摂取していると考えられる状況で設問のような下痢と腹痛が起こっている場合に、術前の食事の嗜好を確認することは問題の解決にはならない。
4.　食事摂取の所要時間: 設問の下腹部痛は下痢によって引き起こされており、下痢は消化酵素の分泌減少と消化機能の低下によるものと考えられる。このことから、ゆっくりとよく噛んで唾液と食物をよく混ぜ合わせ、少量ずつ食べることで、低下した消化機能を補うようにする必要がある。よって食事摂取の所要時間を確認することは大切である。

胃全摘術などで、幽門を切除してしまっている患者の術後に開始される食事で気をつけることはダンピング症候群である。ダンピング症候群は「早期ダンピング症候群」と「後期ダンピング症候群」とがあり、症状や発症時期に違いがある。早期ダンピング症候群とは、食直後～30分以内に発汗、めまい、動悸などの症状が現れることをいう。急速に高張な食物が小腸に流れ込むため、浸透圧の関係で水分が腸に逃げることで起こる。後期ダンピング症候群とは、食後2～3時間に全身脱力感、手指の震え、めまい、冷汗などの低血糖症状が起こる。急速に食物が小腸に流れ込むことで高血糖となり、インスリンが大量分泌されるためである。どちらも1回の食事摂取量を少なくすることや、分割食とすること、時間をかけてゆっくり摂取することで改善する。