状況設定問題（183問）　慢性的な疾患・障害がある子どもと家族への看護

第107回午後103問

次の文を読み問題1に答えよ。
A君（13歳、男子）。2週前から下腿の紫斑、腹痛、膝関節の疼痛が出現し、近くのクリニックを受診した。血尿および蛋白尿も認められたため、病院を紹介され受診した。既往歴および家族歴に特記すべきことはない。

身体所見：体温36.7℃、血圧110/66mmHg。意識清明。腹痛、浮腫なし。両膝関節の軽度の疼痛があるが、腫脹および発赤なし。両下腿に紫斑が散在している。

検査所見：血液所見：赤血球470万/μL、白血球5,600/μL、血小板21万/μL。プロトロンビン活性〈PT活性〉105％（基準値80～120％）、活性化部分トロンボプラスチン時間〈APTT〉32.0秒（基準対照31.2秒）。クレアチニン0.56mg/dL、アルブミン3.7g/dL、CRP0.1mg/dL。補体価（CH 50）41IU/mL（基準値30～45IU/mL）、抗核抗体陰性。尿所見：蛋白3＋、潜血2＋、赤血球50～99/1視野。

問題1
A君の状態から最も考えられる疾患はどれか。

1.　川崎病
2.　血友病A
3.　急性リンパ性白血病
4.　全身性エリテマトーデス〈SLE〉
5.　Henoch-Schönlein〈ヘノッホ・シェーンライン〉紫斑病〈IgA血管炎〉

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解答・解説

1.　川崎病: 川崎病は、①発熱、②両側眼球結膜充血、③いちご舌、④発疹、⑤頸部リンパ節の腫れ、⑥手掌足底などの紅斑・回復期の指先の皮膚の膜様落屑（皮膚がめくれる）の6つの主要症状がある。状況設定文の症状とは合致しないため、川崎病とは考えられない。
2.　血友病A: 血友病は、伴性潜性（劣性）遺伝の遺伝病である。血友病Aは、血液凝固因子のうちの第Ⅷ因子が先天的に異常であることから起こる。幼児期以降は関節内出血や筋肉内出血の深部出血が多くみられる。活性化部分トロンボプラスチン時間（APTT）の検査所見に明らかな異常はないため、適切ではない。
3.　急性リンパ性白血病: 急性リンパ性白血病は、白血球が顕著に増加して血小板と赤血球は減少する。A君は白血球数に異常はないため、適切ではない。
4.　全身性エリテマトーデス〈SLE〉: 全身性エリテマトーデスは、抗核抗体が陽性となり、血清補体価が低下するが、検査所見に明らかな異常がないため適切ではない。
5.　Henoch-Schönlein〈ヘノッホ・シェーンライン〉紫斑病〈IgA血管炎〉: ヘノッホ・シェーンライン紫斑病（IgA血管炎）は、触れることのできる皮膚の紫斑（palpable purpura）がみられる。同時に腎炎（血尿、蛋白尿）、腹痛、関節痛がみられることがあり、子どもに好発する。免疫にかかわるIgAという抗体が関与しているとされ、全身性の小血管炎のことである。