状況設定問題（144問）　症状・疾患・治療に応じた地域・在宅看護

第106回午前118問

次の文を読み問題1に答えよ。
Aさん（89歳、女性）は、認知症と診断されており、認知症高齢者の日常生活自立度判定基準はランクⅡbである。定年退職後の長男（66歳、未婚）との2人暮らし。Aさんは「役所の世話になるのは嫌だ」と言い、要介護認定を受けることを承諾していなかった。しかし、Aさんが室内で転倒したことをきっかけに、要支援1の判定を受け介護予防訪問看護が導入された。

問題1
Aさんは「家事は私の仕事だ。息子にも他人にも任せられない」と言い、タ方になると、歩いて5分程度のスーパーマーケットへ買い物に行くことが長年の習慣となっている。最近、夜になっても帰宅せず、長男が探しに行くとスーパーマーケットから離れた公園のベンチに座っていることが数回あった。長男は訪問看護師に「母は私が後をついてきたと思い込んで怒るんです。このままでは心配です」と相談した。

看護師が長男へ助言する内容で最も適切なのはどれか。

1.　「先に公園で待っていてはどうですか」
2.　「ホームへルパーの利用をお勧めします」
3.　「Aさんに買い物はやめるよう話しませんか」
4.　「荷物を持つという理由で同行してはどうですか」

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解答・解説

1.　「先に公園で待っていてはどうですか」: 後をつけられた、という被害的な思い込みがある。公園で待っているというのも見張られているなどの新たな被害感情を生む可能性がある。
2.　「ホームへルパーの利用をお勧めします」: 家事、身の回りのことができないわけではなく、むしろ「自分の仕事」と認識し、人には任せられないと思っているAさんである。「役所の世話になるのは嫌」と言っていることもあり、現時点でヘルパーの利用は不要と考える。
3.　「Aさんに買い物はやめるよう話しませんか」: 買い物を仕事と理解しているAさんである。現段階でやめる必要はない。
4.　「荷物を持つという理由で同行してはどうですか」: 後をつけられたという思い込み、帰り道がわからなくなるという状態から、不自然なかかわりには不信感をもつことが考えられる。荷物を持つ、という理由で一緒に買い物にいくことは安心感を与え、自然なかかわりとなり、Aさんも受け入れやすい。

認知症高齢者の日常生活自立度判定基準はランクⅡbは家庭内でも生活に支障をきたす症状・行動がみられ、意思疎通に困難さがあるが、誰かが注意していれば自立できる状態である。これを踏まえて援助を考える。

認知症高齢者の看護で大切にしたいのは、安心できる環境づくり、必要な日常生活の援助、身体症状の把握である。慣れた道もわからなくなる、後をつけられたと思い込む、というのは認知症の症状と理解しよう。