状況設定問題（144問）　症状・疾患・治療に応じた地域・在宅看護

第113回午後115問

次の文を読み問題1に答えよ。
Aさん（14歳、男子、特別支援学校の中学生）はDuchenne〈デュシェンヌ〉型筋ジストロフィーで両親、弟（7歳）と2階建ての家に4人で暮らしている。呼吸障害が進行したため非侵襲的陽圧換気療法を導入する目的で入院した。Aさんの呼吸状態は安定し、両親に対するバッグバルブマスクによる用手換気の指導が終了したため、自宅に退院し訪問看護を毎日利用して療養生活を続けることになった。両親は「日常の呼吸管理について退院後に対応できるか心配です」と病棟の看護師に話した。

問題1
Aさんの両親に対する看護師の指導で適切なのはどれか。

1.　息苦しいときは非侵襲的陽圧換気の吸気圧を上げる。
2.　人工呼吸器が動かないときはすぐに救急車を要請する。
3.　人工呼吸器が過剰送気を示すときは回路が外れていないか確認する。
4.　マスクの周囲から空気が漏れるときはマスクのベルトをきつく締める。

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解答・解説

1.　息苦しいときは非侵襲的陽圧換気の吸気圧を上げる。: 吸気に加える陽圧は医師の指示によるため勝手に変えてはいけない。医師の指示設定であるか、看護師は確認する必要がある。
2.　人工呼吸器が動かないときはすぐに救急車を要請する。: 人工呼吸器が動かない原因は、①機械本体のトラブル、②電気・医療ガスのトラブルなどが考えられる。いずれにしても人工呼吸器が動かないときはバッグバルブマスクを使用して呼吸状態の維持を図ることが先決である。そのうえで、訪問看護師に連絡するとよい。
3.　人工呼吸器が過剰送気を示すときは回路が外れていないか確認する。: 過剰送気になるときは、回路接続が外れて空気が漏れていることが多いので、確認が必要である。
4.　マスクの周囲から空気が漏れるときはマスクのベルトをきつく締める。: マスクは常時着用しており、締めすぎると疼痛や皮膚トラブルを起こす。額部分のアームの角度やヘッドギアなどを調整してマスクの固定を図るとよい。

非侵襲的陽圧換気療法（NPPV）の「非侵襲的」というのは気管切開などを行わず、マスク等と回路をつなぎ人工呼吸器で機械的に上気道から陽圧を加えて、換気を促すものである。デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、慢性かつ進行性に骨格筋の筋力が低下する病態で、呼吸筋の障害で呼吸不全が起こる。そのために非侵襲的陽圧換気療法を在宅で行うようになった。家族にバッグバルブマスクについて指導して、自宅療養になっていることを理解したい。