ナースのチカラ~私たちにできること 訪問看護物語~【6-1】

ママナースもも子』でお馴染みの広田奈都美さんが描く、訪問看護師マンガ。

単行本6巻の発売を記念して、月刊誌『フォアミセス』より特別転載でお届けします!

長年一緒に働いてきた師長に病気が発覚し、訪問看護ステーションの所長になるよう頼まれた持田さん。引き受けるか悩む中、思い出すのは……

 

表紙のイラスト

 

あれは10年くらい前のこと。まだ持田さんたちが病院に勤めていた時、「ちょっと今日帰りにラーメン食べて帰らない?」と師長が持田さんに言いました。「うーん」と持田さんが迷っていると、「おごるわよ」と師長が言いました。するとすぐさま「いきます」と言い、師長も「さすがだわ」と言いました。

 

師長いきつけのラーメン屋で、私達はいつも通り患者さんのこと…Drのこと…同僚のこと間断なく喋っていました。すると、師長が「私ねぇ…病院辞めようと思うのよね」と言いました。持田さんはそれを聞いて、「どうしたんですか?急に……」と言いますが、師長は「急ではない。ずっと考えてたんだけど…あんたが知らないだけで」と、前から考えていたことを明かしました。「はぁ…師長…辞めないでくださいよー」と持田さんが引き止めます。

 

「あんた今適当に私を引き止めたでしょ」と師長に言われた持田さんはギクッとしました。「…師長がそう言うのは何か算段があってのことだと思って…」と言いました。というかその頃持田さんは当時の上司(つまり別の師長)とうまくいっていませんでした。目をつけられてチクチクいびられてうんざりしていたし、同期は結婚して子供産む人もチラホラ…。つまり…持田さんも辞めたかったのです。

 

そのことを師長に言うと、「浜田師長でしょ?あの人 昔からああなんだけど、上に対してすごくいいから見逃されるのよねー。いつか痛い目みるわよ本人も上も!!」と言ってくれました。「いつかっていつですか!?」「必ずくる」と、師長の辞職話もそっちのけで持田さんは愚痴をこぼし続けました。いつもそうでした。いつも持田さんの言いたいことをすべてを受け止めてくれていました。「てなわけで辞めて私と一緒に
在宅やらない?〝在宅〟つまり訪問看護ね」と師長が持田さんに言いました。

 

「えっ…」持田さんは突然の誘いに驚きました。そこからは怒涛の在宅勧誘トーク。「在宅っていいのよー。家の中に入っていくんだけど、その人の中に入れてもらえる感覚でね。何より患者の表情が違う!!笑顔の数が違う!!看護の基本がここにあるという感じ!!とにかく私は在宅をやろうと心に決めたの」と師長が熱く語りました。

 

「へ…へえーそうなんですね…」と持田さんが言うと、「それでね 一緒に立ちあげを手伝ってくれるスタッフを探してるんだけど持田あんたやらない?あたしと一緒に」と師長が改めて持田さんを誘いました。持田さんは、絶対嬉しかったはずなのに
すぐ〝はい〟とは言いませんでした。

 

場面は変わり、職場にて。「持田さん」と研修中の深原さんに声を掛けられました。「あの…3週間ありがとうございました。今日で研修終わりなんです」と深原さんが挨拶しました。「えっ…もうそんな、そうなの?ごめんね 私じゃあまり勉強にならなかったと思う…」と持田さんが言うと、深原さんは「そうですね」と言いました。(そうですね?)とモヤッとした持田さんを気にせず、「でも#馬渕さんや師長にはたくさん教わることあったので大丈夫です」と言いました。

 

持田さんが「…へぇ…どんなことを教わったの…」と聞くと、「在宅について多くの事を学びました。真摯な態度で看護に向き合う姿勢とか」と深原さんが答えました。持田さんは(具体例が出ないのはフカしてるからだろうな…)と思いながらも「ほぉ……それは…良かったわね」と言いました。「それでどうするんですか?こちらに就職希望は出されるんですか?」と聞くと、深原さんは「それなんですけど…考え中です。他にもいろいろ当たってみたいので」言いました。それを聞いた持田さんは内心(そうか良かった良かった)と思い、笑顔で「いい就職先が見つかるといいわね」と言いました。深原さんは「持田さんはいつも変わらないですね。強くて正しい」と言いました。

 

持田さんは(嫌味かよ)と少しムッとしました。(別に私は正しくもなければ強くもない。でもこの人に何か言い訳したり説教したら負けな気がする)と思い、深原さんの「持田さんにケアしてもらう人は幸せですね。本当に尊敬します」という言葉にも触れず、「そう…ありがとう。3週間お疲れさまでした」とだけ笑顔で言いました。するとそこへ馬淵さんが来て、「深原さん、そろそろ行きますよ」と声を掛けました。深原さんは「あっはい」と言って行ってしまいました。

 

持田さんは2人を見送り、自分も別の訪問先へ向かいました。「夜は眠れてますか?」「そうだね。昨日は眠れたね。ここのところ眠れてるね…」「それは良かったです」と患者さんと持田さんが話しています。

 

「食事はどうですか?春になりましたが好物の豆ごはんはもう食べられましたか?」と持田さんが聞くと、「豆ごはんか…そうだね…もうそんな季節か…。豆ごはんに鰹を合わせるのがいいんだよな」と患者さんは答えました。患者さんの名前は馬場一男さん(77)。慢性閉塞性肺疾患 在宅酸素 呼吸リハビリ中です。訪問に入るようになって3年以上たち、昔は名のある会社の社長をされていた方でした。「そうですねーあぁ…私も食べたいなぁ」「持田さんは飲んべえだからなー。日本酒と合わせるといいんじゃない?」といつも通り会話をしていると、「最近 持田さん元気ないよね。何かあったの?」と馬場さんから言われました。それを聞いた持田さんは「えっ」と驚きました。

(いかんな…)と思いながら持田さんは「そうですか?そんな感じします?」とつくろいました。「年頃だからいろいろなことがあるんでしょう。僕も若い頃はいろんなことあったから」という馬場さんの言葉に「そうなんですね馬場さんもいろいろと…」と持田さんは言いました。「持田さんは35?」「今度 36歳ですね…」と話をしていると、「じゃあ…仕事かな?この仕事は嫌い?」と馬場さんに聞かれました。「嫌いじゃないですよ。これしかないです。でも何か任されそうで…」と持田さんが少し自分のことを話すと、「そりゃあそうなるよね。持田さんはリーダーになる人だから…」と馬場さんが言いました。「いやー…まだ平社員でいいですよ…それに#所長になったら現場に行けなくなるし」と持田さんが言いました。

「偏狭な考えだなぁ持田さんらしくない…。それなら現場に出るリーダーになればいい」と馬場さんが言うと、「いやぁ…」と持田さんは言葉を濁しました。「人のためのほうが動けるんですよ…そんなもんです」と言うと、馬場さんが「じゃあ誰かのためにリーダーになればいいんじゃない?」と言いました。それを聞いた持田さんは「……確かにそうですね…」と言って、(師長のために…あの時…私そう思ってたかな?…違うな…)と昔のことを考えました。
※表現の都合上、マスクなどの描写を省略している部分があります。

【2】に続く

 

 

 

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【著者プロフィール】

広田奈都美(ひろた・なつみ) HP

漫画家・看護師。某地方総合病院にて勤務後、漫画家としてデビュー。著書は「僕達のアンナ」(集英社)、「お兄ちゃんがコンプレックス」、「ママの味・芝田里枝の魔法のおかわりレシピ」(秋田書店)他。

 

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