ナースのチカラ~私たちにできること 訪問看護物語~【5-2】

ママナースもも子』でお馴染みの広田奈都美さんが描く、訪問看護師マンガ。

単行本5巻の発売を記念して、月刊誌『フォアミセス』より特別転載でお届けします!

経験のない乳児の看取りに戸惑う訪問看護師の持田さん。彼女の悩みの奥にある気持ちは……

 

前回のあらすじ

 

 

乳児のお看取りの依頼を受けるか悩んだ持田さんは、師長に相談しました。師長は、「受けましょう。持田、こういう人のために私達は今まで在宅をやってきたんじゃないの」と即決しました。「…はい、でも…はっきり言うとプレッシャーです。小児は経験少ないですし…」と持田さんが言うと「大丈夫よ病院にいろいろ指導受けてこよう!!馬淵も行かせて」とやはり依頼を受けるべきだと諭しました。「…後輩の指導や研究発表、他職種との連携…通常の業務の上に…ここんとこコロナで負担も増して…」と持田さんがため息をつきながら話すと、師長は「疲れたか?」となだめました。(疲れた…疲れてるのかな私は…)とモヤモヤが溜まっていく持田さんは「そう…ですねぇ…寝れない時がありますね…」と弱音を吐きました。

 

それを聞いた師長は、「あら…大変ね…何かあった?」と聞きました。「いやこれといって何もないんですけど…」と曖昧な返事をする持田さんに、「今晩ごはんでも食べに来ない?って言いたいところだけどオンラインで少し話す?」と師長が言いました。持田さんは「…ありがとうございます」と言って「でも大丈夫です。ちょっと話したら楽になりました」と断りました。「ほんと?」「はい」と話をしながら持田さんは(そういうんじゃないんだよなぁ…なんかこう…前に進むのがキツイんだよな…)と自分の中のモヤモヤについて考えました。新しいことを学んで賢くなる。知恵をつけて患者さんに上手に説明できる。病態を把握して早期発見・予測ができる…といった成長の段階について、時々

 

(だからなんなのとか思う自分がいる。それの何が偉いの?その先に何があるの?とも。この感覚って私だけなの?)と空っぽの感情を持田さんは持っていました。(そうだ、虚しいんだ。この気持ちにピッタリはまるのは虚しいという気持ち。笑顔で後輩を指導して、偉そうに知識や技術を教えて、優しそうなことを言って、思いやりある言葉を掛ける私。頼りになる「持田さん」がこんな黒い感情持ってるなんて知ったら皆ひくだろうな…)と後輩が真っ黒な自分を知ってひいてしまうところを想像しました。

 

(新人の頃は良かったなーこんなプレッシャーもなかったし…)と今の責任の重さに悩んでいる持田さんに、「美味しいもの食べてお風呂に入ってゆっくり休んでも解決できない問題ってあるわよね…」と師長が言いました。「…はい」「そういう問題は不思議と人とのめぐり合わせで解決できることがあるから。まぁ…気長に付き合うこと。私は真の悩みは涵養だと思っている」と続けました。

 

「涵養…」持田さんは師長の話を聞いた後、1人でその意味を調べました。(涵養…水が自然に染み込むように無理をしないでゆっくりと養い育てること)場面は変わり、子ども病院にて。「幸太君は、してる処置はO2と栄養チューブくらいなので指導もそれだけしてあります。ただ栄養注入したり酸素が少しずれたらすぐSPO2 が60台に下がりますけどね」と、幸太君の担当の看護師さんが対応について持田さんに話ました。

 

「SPO2 60…」と驚く持田さんに「ハハー、こういった疾患の乳児ならめずらしくないですよー」と看護師さんは言いました。「吸引もそんなにしなくていいし、あとは普通に沐浴してます(SPO2 下がるけど…)。お母さんにもあんまり驚かせないよう話してあります」と続けて言いました。「今回はお家で最期をというご家族の希望ですし、あとはそう!お兄ちゃんのしょう君がとても弟さんに会いたがってて」と家族の話についても教えてくれました。「へぇ…」とその兄弟について考えていると、「いいですよね在宅って」と看護師さんが言いました。持田さんが「え?」と聞き返すと、「私はずっとここで亡くなる子ばかり看てきて、それはそれでいいんですけど、一回も帰れない子も看てるんで…」と続けました。「幸太君…帰れてよかったと思いますよ」と言ってくれた看護師さんに「…」と持田さんは何も言えませんでした。

 

「わぁーいこうたがおうちに来た!!こうたがおうちに来たよ」としょう君は幸太君が帰ってきたことがとても嬉しそうでした。一方、母親は「あー抱っこしててもちょっと不安…何か勝手がわからないわ。看護師さんこれでいいですか?」と抱っこするのにも不安がっていました。持田さんは「大丈夫ですよ酸素もついてるし。顔色さえ変わらなければ」と母親が不安がらないように声を掛けました。しょう君は「僕もだっこする僕もだっこ!!」と幸太君から離れようとしません。母親は「なんかボーっとしてる。…この子の時は私の顔見るくらいはしてくれたんだけど…お医者さんは発達が遅いって言ってたけど…体も小さいし…まだ産まれたてみたい…」とどうしても不安が取れない様子でした。

 

持田さんは「そうですね…お母さん心配なことがあったらいつでも連絡してくださいね。24時間夜中でも構いませんよ」と伝えました。しかし、不安なのは持田さんも一緒でした。職場に戻り、「いつ心臓が止まるかわからない状況…お母さんに止まった時のこと話すのが…今日はできなかった」と馬淵さんに言いました。「…ふぅん…でもDrや病棟ナースからある程度聞いてるんじゃないの」と馬淵さんがフォローしました。

 

それでも「でもどう聞いてるか確認してない…明日聞こう…」と不安がる持田さんに「私 明日行って聞いてくるよ。シフト替えれると思うし…」と馬淵さんが言いました。「うーん」と持田さんは迷って、「怖いのかも…あんな小さい子…亡くなるとか…ただ みてるだけでなんの役にも立たないことがふがいなくて辛いんだと思う…」と悩む理由を話しました。「…有能だとそういうことで悩むのか…」それを聞いた馬淵さんが呟きました。

 

「え?」と聞き返す持田さんに「有能ゆえの悩みよそんなの。いつも人に感謝されたり与えることに慣れているのよ…」と馬淵さんが指摘しました。「…あんたも皆みたいなこと言うのね」と持田さんが呆れたように言いました。馬淵さんはひるまず、「だってそうじゃない。私なんて何もできないのが前提だもん。ありがとうって言われたらラッキーだなと思ってるし。その「ありがとう」だって言える人と言えない人がいるし、言われなくてもいいって思ってるよ」と続けました。

 

「何もできないって開き直っちゃえば?」という馬淵さんの言葉に、持田さんは(…それができればね。皆まだ私に頼ってくるのに…そんな弱音吐けないよ…副部長だし…)と思い、「…わかったありがとう。ちょっとそうしてみるよ」と言いました。すると、馬淵さんが「ほらそういうとこだよ」と言いました。持田さんは驚いて黙りますが、「私を信用していないから適当なこと言って終わらせようとする。見下してるのと一緒だよ」と続けました。

 

「どうせわからないって思ってるのよ。でもそれって相手に対して失礼だよ。どうせ理解できないって思ってるんでしょ?でもそれ患者さんに対してもやってたら失礼でしょ?どうせこの家族は看取りができないって思われてやるのと、きっとできるって思ってやるのじゃ違うんじゃないの?あんたは私が大変な時助けようとしてくれてそれは感謝してるけどでもそれはあんたが得意なことをしてるだけ!!助けられるのは苦手だし自分が助けられないことがあるのが怖いのよ」と持田さんの考え方を指摘しました。

 

持田さんはそれを聞いて、「あーったまきた!!言いたいこと散々言いやがって!!あんたが言いたいようなことはとっくに考えてるわよ私だって!!それができなくて悩んでるんじゃない!!」と怒鳴りました。馬淵さんは動揺もせず、「とりあえず小児科の経験がある人がいるんだから任せたら?(榊原さん)」と言いました。持田さんは「へ?」と拍子抜けした声を出しました。※表現の都合上、マスクなどの描写を省略している部分があります。また、掲載にあたり、初出時から一部表現を変更しています。

【3】に続く

 

 

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【著者プロフィール】

広田奈都美(ひろた・なつみ) HP

漫画家・看護師。某地方総合病院にて勤務後、漫画家としてデビュー。著書は「僕達のアンナ」(集英社)、「お兄ちゃんがコンプレックス」、「ママの味・芝田里枝の魔法のおかわりレシピ」(秋田書店)他。

 

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