医師の残業は「年2000時間」?ナース・プラクティショナー制度にも注目 |看護roo!ニュース

 

医師の働き方改革をめぐり、年2000時間もの時間外労働を容認するような案が国の検討会で示され、医療者だけでなく、社会の関心を集めています(※)。

 

同じ検討会では、医師の負担を軽減するために、特定行為を実施できる看護師の養成や、ナース・プラクティショナー(NP)の資格制度の創設もあらためて注目されています。

 

看護師にも影響大ありの医師の働き方改革。看護師が押さえておくべき要点をまとめました。

 

※「医師の働き方改革に関する検討会」の報告書を受け、文末に加筆しました。

 

 

罰則付き残業規制、医師は2024年4月から

働き方改革関連法では、時間外労働に上限が設定されました。上限を超えた場合、事業主に罰則(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科されます。もちろん看護師の時間外労働も対象です。

 

 

ただし、応召義務がある医師は、一般の労働者と同じ基準では規制できないとして規制の適用を5年間猶予。医師独自の上限時間はどうあるべきか、「医師の働き方改革に関する検討会」が2019年3月末までに結論を出すことになっています。

 

 

時間外労働は年960時間まで、勤務間インターバルも設定

医師の時間外労働の上限案のポイントは大きく3つです。

 

1)勤務医の時間外労働は原則として年960時間を上限とする

2)健康確保のため、勤務間インターバルなどを設定する

3)地域医療の確保のため、一部の医師の時間外労働の上限を年1900~2000時間に引き上げる。若手医師も上限を引き上げる

 

まず原則となる1)2)について見てみましょう。

 

 

年960時間は心臓疾患の労災認定基準に相当する数字。「過労死ライン」とも言われます。

 

厚労省によると現在、病院勤務医の約4割は、この年960時間を超えて働いているのが実情。時間外労働を一気に厳しく規制すれば日本の医療が回らない、まずはこの辺が今の落とし所だろう――。

 

今回の案は、こんなふうに現状から逆算して設定されたと言えます。

 

一方で、医療安全の観点から6時間程度の睡眠時間を確保できるように、「9時間の勤務間インターバルを確保する」「連続勤務は28時間までに制限する」などを守ることがセットになっています。

 

ただし、努力義務にとどまります

 

 

年1900~2000時間の特例も

条件によっては、医師の時間外労働はさらに上限が引き上げられます。今回、最も波紋を呼んでいる点です。

 

 

厚労省によると、時間外労働が年960時間を超える勤務医のうち、地域医療確保暫定特例水準(年1900~2000時間)までも超えて働いているのは約1割(約2万人)。

 

厚労省としては、ひとまず、この2万人の労働時間を特例水準にまで短縮した上で、経過措置の終了後の2036年度以降は、一般医師の年960時間に統一するというステップを描いています(若手医師の規制案は今後検討)。

 

特例が適用される場合、勤務間インターバルなどの措置が「義務」に格上げされます。

 

 

地域医療確保暫定特例水準は、どの医療機関にも適用されるわけではありません。

 

現時点では「やむなく長時間労働となる医療機関」として、

 

  • 二次・三次救急医療機関や、特に積極的な役割を担う在宅医療機関
  • 5疾病5事業を担っている中核医療機関
  • 特に高度専門的な医療機関

 

などが想定されています。

 

さらに「タスク・シフティングなどが計画的に推進されている」など、医師の労働時間を短縮するための対策がきちんと行われていることも条件になる見込みです。

 

 

ナース・プラクティショナー制度はできる…のか?

そして、このタスク・シフティングに絡んで注目されているのが、特定行為研修を修了した看護師の活用や、ナース・プラクティショナー(NP)資格制度の創設です。

 

このうち特定行為研修については、研修を一部パッケージ化して修了者を増やす取り組みを始めることがすでに決まっています=関連記事=。

 

検討会ではさらに、NPを正式資格として位置づける新たな制度をつくるべきだとする意見が複数の委員から出ていて、重要な論点のひとつになっています。

 

一方、日本医師会の委員などからは「まずは現行資格の枠組みで、最大限のタスク・シフティングを進めるべき」といった反発があるのも事実。

 

検討会はNP制度について「その是非を含めた議論を今後も続けるように」といった提言をまとめる見通しで、これからの動きも要チェックです。

 

 

改革の”副作用”の検証も必要

今回の上限規制案、とりわけ年2000時間という特例に対して、ネット上では「あまりに長すぎる」「医師も同じ人間なのに」という批判の声が多い一方、検討会委員の医師らは「現状を考えると妥当」「むしろ高い目標にも感じる」と発言するなど、かなりの温度差があります。

 

ただ、特例が適用されてもされなくても、医療機関には今後、医師の労働時間をいかに短くするかを意識したマネジメントが求められるのは必至。看護師をはじめとする他職種へのタスク・シフティングが今まで以上に意識されていくものとみられます。

 

検討会では

 

「医師の仕事をどんどん他職種にシフトしていけばいいというわけではない。院内できちんと合意を得ることが大切」

 

「チーム医療の推進は看護師だけではできない。薬剤師、臨床工学技士、理学療法士などの役割も具体的に示して」

 

「医師の労働時間が減って、救急の受け入れ拒否、医療の質の低下、看護師の労働時間増などの”副作用”が出ないか、しっかり検証すべき」

 

といった懸念も指摘されています。

 

医療界全体にかかわる医師の働き方改革の行方。ナースのみなさんにとっても、他人事ではありません。

 

※厚生労働省「医師の働き方に関する検討会」は2019年3月29日、最終報告書をまとめました。「地域医療確保暫定特例水準」や研修医などの「集中的技能向上水準」に当たる場合の時間外労働の上限は「年1860時間」と設定されました。

 

看護roo!編集部 烏美紀子(@karasumikiko

 

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(参考)

第16回医師の働き方改革に関する検討会 資料1-1、資料2、資料3(厚生労働省)

 

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