東南アジア出身の看護師が日本で活躍! 国試合格率10%を突破するEPA看護師とは?

EPA看護師という言葉を聞いたことはありますか?

今、国際交流や人材不足などの点で、海外から受け入れるEPA看護師が高い関心を集めています。しかし、EPA看護師になるための、国試合格率はわずか10%! 難関を突破したEPA候補者はどのように勉強しているのか、また、EPA看護師の現状をわかりやすくまとめてみました。

東南アジア出身の看護師が日本で活躍! 国試合格率10%を突破するEPA看護師とは?

 

〈目次〉

 

本来なら外国人労働を禁じている看護分野も、EPAの枠内で可能に

EPAとは、「経済連携協定」の略称です。国家間の貿易自由化を目指して、モノ・人・カネ・サービスの移動を推進する連携システムを差します。

 

EPAに基づく看護師候補者(以下=EPA候補者)とは、この枠組みに基づいて、本来なら外国人の就労を認めていない看護補助・介護分野においても、一定の要件を満たせば日本の病院で働くことが認められています。

現在、EPA候補者の受け入れ協定を結んでいるのは、インドネシア・フィリピン・ベトナムの3か国です。合格者は、累計で約200人に上ります。また、EPA候補者として来日する人の平均年齢は25~26歳となっています。

 

厚労省「労働力不足の解消が目的ではない」、でも現場の期待は?

EPA候補者は、看護・介護の人材不足解消の観点から語られることもありますが、厚生労働省の発表では、その目的は「労働力不足への対応ではない」とのこと。医療・介護分野の人手不足解消ではなく、「あくまで経済連携を目的としたもの」というのが公式の理由です。

 

しかし、EPA候補者を受け入れる医療現場では、「人手不足の解消」を狙って、受入れ施設となっているところも少なくありません。実際に、受入れ施設の報告からは、「慢性的な人手不足の解消」「准看護学校閉鎖に伴う人手不足」などが、受入れ理由として挙げられています。

 

EPA候補者は、日本の病院で約3年間、働きながら学び、その後日本の国家試験に合格すれば、晴れて日本でEPA看護師(EPAに基づく外国人看護師)として、日本の病院などで働くことができます。

 

EPA候補者として来日するには、母国での看護師経験が2~3年(国によって異なる)あり、かつ日本語能力試験で一定の成績を修めることが必要です。

 

国試合格率はわずか10%! ハードルが高いEPA看護師への道

2008年にEPA看護師の仕組みがスタートしてから、これまでおよそ1,100人(3か国合計)のEPA候補者が来日しました。一方で、国試の合格率は10%前後で推移し、日本人の国試合格率(90%前後)より大幅に低いのが現状です。

 

国試の合格率が低い最大の要因は、なんといっても「日本語習得の難しさ」。これは、日本語の習得度合と合格率の比較からも推測できます。

 

2015年度の国試合格率は、たったの11.0%。合計429人が受験し、国別の合格者は、インドネシア 11人(合格率5.4%)、フィリピン 22人(同11.5%)、ベトナム 14人(41.2%)でした(図1)。他の2国と比べて、ベトナム候補者の合格率の高さが目立ちます。

 

図1 国別の国試合格者数と国試合格率(2015年度)

国別の国試合格者数と国試合格率

国試合格者:インドネシア11人(合格率5.4%)、フィリピン22人(同11.5%)、ベトナム14人(41.2%)。
インドネシア、フィリピンに対して、ベトナムの合格率の高さが目立ちます。

 

語学力が合格率に直結か?

実は、インドネシアとフィリピンは、自国の看護師をEPA候補者として日本に送り出す要件として、日本語能力検定(JLPT)で一番やさしい「N5」レベル(基本的な日本語をある程度理解)を求めています。これに対し、ベトナムでは、「N5」より2ランク上の「N3」レベル(日常的な日本語をある程度理解)を求めています(表1)。

 

表1 日本語能力試験 認定の目安

日本語能力試験認定の目安

(N1~N5:認定の目安|日本語能力試験 JLPT. より引用.)

 

このことからも、候補者の日本語能力のレベルがそのまま国試合格率に比例していることがわかります。

 

難関を突破するEPA候補者の勉強法

●過去問対策やJICWELSの研修をフル活用

合格率わずか10%の難関を突破したEPA候補者は、どのような勉強法を取っていたのでしょうか? 合格者たちの声から共通するものを探ってみました。

 

 

基本となる過去問に加え、EPA看護師の運営主体であるJICWELS(公益社団法人国際厚生事業団)の研修をフル活用している様子がうかがえます。

 

●食べて、読んで、書いて覚える日本の看護

さらに、EPA候補者ならではの独自の勉強法として、次のようなものもありました。

 

 

また、日本語能力のレベルが国試の合格率に直結することから、早い段階で日本語能力検定「N2」レベルを目指して勉強するという声もありました(表1)。

 

晴れて国試に合格した方は、滞在期間の更新に制限なく、日本で働くことができます。多くはそのまま研修先の病院に新人看護師として入職しているようで、病棟や手術室、夜勤などで幅広く活躍しているEPA看護師もいます。

 

准看護師の取得も可能、不合格者の受け皿にも

ちなみに、EPA候補者は、准看護師の資格を取得することも可能です。本来であれば3年間の期限付きで日本に滞在できるEPA候補者ですが、准看護師の資格を取得すると、4年間は日本で業務を行うことができるようになります。

そのため、准看護師は、国試に落ちてしまったEPA候補生が引き続き日本に留まって、次年度以降も国試に挑戦するための受け皿もなっているようです。

 

 

【ライター:横井 かずえ】

 

<参考文献>

(1)EPA外国人看護師・介護福祉士受入れのあらまし|公益社団法人 国際厚生事業団(JICWELS). (2017/2/2アクセス)

 

(2)経済連携協定(EPA)に基づく外国人看護師候補者の看護師国家試験の結果(過去7年間). 厚生労働省. (2017/2/2アクセス)

 

(3)経済連携協定(EPA)に基づく看護師の指導者ガイドブック. 国際厚生事業団. 2016.(2017/2/2アクセス)

 

(4)EPA来日外国人47人看護師に 国家試験、合格率11%に上昇-共同通信 47NEWS. (2017/2/2アクセス)

 

(5)N1~N5:認定の目安|日本語能力試験 JLPT.(2017/2/2アクセス)

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