新しい避妊薬(ピル)「スリンダ」が承認されましたよ!女性の悩みに寄り添う薬

自然の中で深呼吸する清々しい気持ちの女性(イメージ画像)

みなさま、はじめまして。産婦人科医の稲葉可奈子と申します。


今回から、看護roo!さんにて連載させていただくことになりました。みなさまどうぞよろしくお願いいたします。


初回になにを取り上げようかな…と考えていたのですが、ちょうど先日、新しい経口避妊薬が承認されたところなので、経口避妊薬や月経困難症治療薬のお話をしようと思います。


重い生理痛に悩んでいる看護師さんたちの助けになるかもしれない話題なので、ぜひ読んでみてくださいね。

 

ピルの使用を諦めていた女性にも

ピルを服用する女性(イメージ画像)

2025年5月、日本で初めてプロゲステロン単剤の経口避妊薬「スリンダ(一般名:ドロスピレノン)」が承認されました。


これまで日本国内で承認されていた経口避妊薬(ピル)は、エストロゲンとプロゲステロンという2種類の女性ホルモンを含む「混合型経口避妊薬」のみでした。


混合型経口避妊薬にはエストロゲンが含まれているため、喫煙者・肥満傾向のある人・高血圧・45歳以上・血栓リスクのある女性などには使用が制限されてきました。


しかし、スリンダのようなプロゲステロン単剤なら、そうしたリスクのある人でも使用できます。


これまで経口避妊薬の使用をあきらめていた女性たちにも、新たな避妊の選択肢が提供されることになります。

 

「女性自身が決める」安全な避妊法

スリンダに含まれるドロスピレノンは、①排卵を抑える ②子宮内膜を着床しづらい状態にする ③子宮頸管粘液の粘性をあげることで精子が入りにくくする―といった作用により、妊娠を防ぐ働きをします。


欧米ではすでに広く使われており、安全性や有効性が確認されていますが、日本では今回が初の承認となります。


日本では依然として、避妊法としてコンドームが主流で、避妊効果の高い経口避妊薬はあまり普及していません。


望まない妊娠を防ぐための大事な「避妊」を男性にゆだねるというのは極めて不確実性の高いことです。


「飲み忘れ」というリスクには注意を払う必要がありますが、女性自身による避妊法の方が、有効性(避妊効果は高いですし、女性が自分で行うので、男性にまかせるよりも確実です。

 

重い生理痛と過多月経にも効果

生理痛を和らげるためピルを服用する様子(イメージ画像)

「避妊薬」としてのピルのお話をしていますが、ピルの効果はそれだけではありません。


エストロゲンとプロゲステロンを含む低用量ピルや、新たに承認されたスリンダのようなプロゲステロン製剤は、月経困難症やPMS、過多月経の改善にも高い効果があり、生理痛や月経量を軽減します。


治療目的の場合は保険診療で処方することができます。


読者のみなさまの多くは看護師さんだと思いますが、実は、看護師さんからの生理に関するご相談はわりと多く…


みなさま、医療機関で働いているにもかかわらず、相談できずに毎月つらいのを我慢してらっしゃいます…。しかも勤務中は好きなタイミングでトイレに行けないことも多いので、過多月経の方はさぞかし「つらい」と思います。


低用量ピルやプロゲステロン製剤で月経が軽くなった方々は、「もっとはやく受診すればよかった…!」とおっしゃいます。


また、毎日同じ時間に内服するのが難しい場合には、子宮内に入れるプロゲステロン製剤「ミレーナ」という選択肢もあります。


一度入れると最長5年間効果が持続し、毎日薬をのむ必要がないためとても楽で、こちらも入れた方は「もっとはやく入れればよかった…!」とおっしゃっています。


どのタイプの薬がよいかは、症状やライフスタイルによっても変わってくるので、まずは婦人科でご相談ください。

 

正しい認識と知識で健やかに

生き生きと健康的に働く看護師(イメージ画像)

今回、スリンダが承認されたことで、ピルが使えなかった人にも新たな選択肢が増え、より多くの女性が自分のからだを自分でコントロールすることが可能になります。


これを機に、日本でも「ピル=女性の健康を支える薬」という認識が広まっていくことを期待したいところです。


医療者として私たちは、これまで「ピルは使えない」と思っていた方々にも、最新の情報をわかりやすく伝えることが重要だと感じています。


日本は、「女性のからだは女性自身が決める」というSRHR(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツ=性と生殖に関する健康と権利)の考え方が、まだ浸透しきっていない現状があります。


女性が自身の体について正しい知識を持ち、自分に合った方法を選べるようになることこそが、SRHR(性と生殖に関する健康と権利)を実現する第一歩です。


なお、日本では経口避妊薬のニーズが大きくないとされる中で、こうした新薬の開発と承認に踏み切ってくださったあすか製薬さんには、産婦人科医として心から敬意を表します。


経口避妊薬や月経困難症治療薬を使う人が増えて日本国内でのニーズが可視化されることで、将来的にさらに多くのSRHR関連薬剤が導入され、選択肢も広がっていくのではないでしょうか。


スリンダの登場をきっかけに、私たち一人ひとりが「からだの自己決定権を持っている」ことの大切さを再認識し、より自由で健やかな生き方を手に入れることができるようになることを願っています。


なお、スリンダは6月30日発売ですが、この原稿執筆時点ではまだ価格は決まっていません。避妊薬は保険診療の対象ではないため自費診療となり、既存の経口避妊薬と同程度となると、薬代は月3000円程度と推測していますが、まだ未知数です。


詳細が分りましたらSNSなどで随時情報提供していきますね。

 

執筆

Inaba Clinic 院長稲葉可奈子

産婦人科専門医・医学博士。京都大学医学部卒業、東京大学大学院にて医学博士号を取得、双子含む四児の母。産婦人科診療の傍ら、病気の予防や性教育、女性のヘルスケアなど生きていく上で必要な知識や正確な医療情報を発信している。

 

 

編集:北井寛人(看護roo!編集部)

 

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