色素性母斑(黒あざ、ほくろ)|色素異常①

『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は色素性母斑(黒あざ、ほくろ)について解説します。

光井俊人
関西医科大学附属病院形成外科学講座

 

 

Minimum Essentials

1母斑細胞が表皮や真皮に増殖している状態である。

2俗に「黒あざ」といわれる褐色~黒色の色素斑で、境界はほぼ明瞭であり、大きさは大小さまざまである。

3治療法としては、切除、切除後の皮弁や植皮などである。また、凍結療法や電気焼却、レーザー療法などがある。

46mmを超える大きさの後天性母斑は、悪性黒色腫との鑑別が重要である。また、巨大色素性母斑からは悪性黒色腫が生じることがあり、注意深い観察が必要である。

 

色素性母斑(黒あざ、ほくろ)とは

定義・概念

母斑細胞母斑ともいわれており、母斑細胞が増殖している母斑である。

母斑細胞とは、胎生期に神経堤を原基として生じ、メラノサイトにもシュワン(Schwann)細胞にもなりきれなかった分化不十分な細胞である。

 

原因・病態

母斑細胞が表皮や真皮、または皮下組織に存在していることが原因である。

臨床的には先天性色素性母斑と後天性色素性母斑に分類される。

先天性色素性母斑は多くは出生時より存在し、大きさ、形、色調、表面の性状は多種多様である。

後天性のものは俗に「ほくろ」といわれ、3~4歳頃より生じ、思春期までに大きさ、隆起、色調と数を増し、以降次第に退色する。

 

 

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診断へのアプローチ

臨床症状・臨床所見

先天性色素性母斑

浅在型、深在型がある。浅在型は母斑細胞が真皮中上層に存在するもの、深在型は真皮全層(時に皮下)に存在するものである。


色素斑内に剛毛を有するもの(有毛性母斑、図1)、表面が疣状、乳頭腫状であるもの(疣状色素性母斑)、淡褐色斑上に黒色小斑が多数集まっているもの(点状集簇性母斑)、母に存在し爪甲に黒色線条を有するもの(爪甲線状母斑)、体幹、四肢の大部分を占めるもの(巨大色素性母斑または獣皮様母斑)と多種多様である。

 

図1有毛性母斑

有毛性母斑

 

20cm以上の大型母斑では、剛毛を伴うことが多く、悪性黒色腫の発生頻度が5%と高いこと、時に神経病変を合併し(神経皮膚黒色症)、治療が困難なことが問題となる。

 

後天性色素性母斑(図2

組織学的には、母斑がどの部位に増殖しているかにより3つに分類される。境界部型は母斑細胞が表皮および真皮境界部に、複合型は境界部と真皮に、真皮内型は真皮内にのみ存在している。

 

図2後天性色素性母斑

後天性色素性母斑

 

検査

ダーモスコピーや、生検による病理組織診断が有効である。

 

 

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治療ならびに看護の役割

治療

おもな治療法

切除術がおもな治療法である。レーザー療法や電気焼却法などの治療法もあるが、再発が問題となる。

切除術にも単純縫縮や分割切除、開放療法(くりぬき法)などの種々の方法がある。切除後に局所皮弁術や遊離植皮術が必要となることもある。

 

また、縫縮できないような大きな母斑では、切除術前にティッシュー・エキスパンダーを挿入し組織を伸展させ、母斑切除後の欠損部の再建に利用する方法もある。

 

合併症とその治療法

術後瘢痕拘縮が生じ、局所皮弁術や遊離植皮術が必要となることもある。

 

看護の役割

治療における看護

切除術後やレーザー療法後の遮光のため、日焼け止めの外用や日傘、帽子の使用など具体的に指導する。

 

フォローアップ

医師の説明に基づいて病変の拡大、出血、潰瘍の出現などに注意するよう患者に伝え、変化がみられたら医療機関にかかるよう指導する。

 

 

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本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂

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