悪性黒色腫(メラノーマ)|悪性腫瘍⑦

『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は悪性黒色腫(メラノーマ)について解説します。

清原祥夫
静岡がんセンター皮膚科

 

 

Minimum Essentials

1メラノサイトから生じる、悪性度の高い癌である。高齢者だけでなく、中年(40歳代)にも発症ピークがある。タイプによっては紫外線が発癌因子となる。

2いびつな色素斑で始まり、進行すると結節・腫瘤びらん・潰瘍を呈する。

3治療は手術が第一選択だが、病期に従い集学的治療を行う。最近、免疫療法や分子標的薬で高い治療効果がみられる。

4表皮内癌のうちは予後良好だが、進行すると予後は悪い。

 

悪性黒色腫(メラノーマ)とは

定義・概念

メラニン色素産生細胞(メラノサイト)から生じる癌。早期にリンパ・血行性に転移し、悪性度の高い、予後不良の腫瘍である。

 

原因・病態

日本では10万人あたり2人程度の罹患率で、きわめてまれである。足底や部の悪性黒色腫が多くみられ、外力や外傷が誘因として推測されている。

 

皮膚以外に、口腔内あるいは眼粘膜、軟膜に発生する例もある。前駆症として悪性黒子、発生母地となる疾患として色素性乾皮症、先天性巨大色素性母斑がある。

 

 

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診断へのアプローチ

臨床症状・臨床所見

いびつで黒、赤、褐色など入り混じった色むらのある色素斑で始まり、結節・腫瘤、びらん・潰瘍となる(図1)。

 

図1悪性黒色腫

末端部黒子型黒色腫(ALM)。足底の不整で色むらのある黒色斑と、びらん性腫瘤を認める。

悪性黒色腫

 

早期にリンパ行性・血行性転移を起こす。成人になって色素斑が大きくなったり、盛り上がってきたり、色調にむらが生じる場合は要注意である。

 

検査

ダーモスコピー所見は、初期診断にきわめて重要である。原発巣だけでなく、周囲の衛星病巣も丹念に観察する。

 

臨床像で診断できない場合には病巣を全摘し、病理検査を行う。リンパ節転移や遠隔転移の全身検索としてX線、CT、MRI、超音波検査、FDG-PET検査などの画像診断を行う。血液中の腫瘍マーカーとして5-S-システイニルドーパ(5-S-CD)、LDHも有用である。
 

 

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治療ならびに看護の役割

治療

おもな治療法

治療の第一選択は手術である。リンパ節転移例では郭清術も行う。放射線感受性が低く、ふつう適応になることは少ないが、脳転移例や手術困難例では定位照射(γナイフなど)や陽子線療法を行ったり、術後補助療法として放射線照射することがある。

 

進行期では抗がん薬治療、インターフェロン投与も併用する。最近、免疫療法や分子標的薬での高い治療効果が注目されている。

 

合併症とその治療

手術あるいは治療に伴う合併症があり、それぞれに対応する。

 

治療経過・期間の見通しと予後

早期(I~II期)であれば比較的予後は良いが、III期での5年生存率は50~60%、IV期では10%以下である。5年以上の定期的な経過観察を要する。

 

看護の役割

治療における看護

広範囲切除、リンパ節郭清を行うことが多く、腫瘍が指趾の場合は切断することもあるので、術前のインフォームド・コンセントは重要である。

 

術後は、容貌の変化や、指趾切断の場合の機能的障害など、現実を受け入れるのにかなりの精神的苦痛を伴う。看護師は患者の言動、表情、行動などから心理状態を把握し、適切な援助を行わなければならない。

 

薬物療法を併用することが多く、副作用出現による身体的・精神的苦痛が予想される。予想される副作用の説明、発生した副作用への対策に支援を行う必要がある。

 

フォローアップ

悪性黒色腫の患者は衛星病巣をもっていることもあるため、早期発見に努めるように指導する。入浴時に鏡などでセルフチェックしたり、家族間で丹念に観察する。

 

 

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本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂

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