ベーチェット(Behçet)病|紅斑症⑤

『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回はベーチェット(Behçet)病について解説します。

 

藤山俊晴

浜松医科大学皮膚科学講座

 

 

Minimum Essentials

1遺伝的要因を背景に、好中球機能亢進により種々の症状が出現すると考えられている。

2慢性に経過する口腔内アフタ性潰瘍、皮膚症状、眼症状、外陰部潰瘍を特徴とする全身性炎症性疾患である。皮膚症状には結節性紅斑、ざ瘡様皮疹、外陰部潰瘍、血栓性静脈炎などがみられる。

3ステロイド薬外用、NSAIDs内服、コルヒチン内服、免疫抑制薬内服、抗TNF-α抗体などが用いられる。

4治療開始後、それぞれの症状は治療に反応するが、慢性再発性の経過をとる。

 

ベーチェット病とは

定義・概念

①口腔内アフタ性潰瘍、②眼症状、③外陰部潰瘍、④皮膚症状を4主徴とする疾患で、慢性再発性の全身炎症性疾患である。

 

原因・病態

遺伝的要因(HLA-B51)や連鎖球菌感染などの環境因子を背景に、好中球の機能亢進が起こり、血管炎や脂肪織炎などをきたし、種々の症状が現れると考えられている。

 

 

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診断へのアプローチ

臨床症状・臨床所見

主症状として①口腔内アフタ性潰瘍(図1)、②眼症状、③外陰部潰瘍(外陰部の境界明瞭な深くえぐれたような潰瘍)、④皮膚症状が、副症状として①変形や硬直を伴わない関節炎、②副睾丸炎、③回盲腸部潰瘍に代表される消化器病変、④血管病変、⑤中等度以上の中枢神経病変があげられる.

 

図1ベーチェット病

難治性口内炎。

 

主症状がすべて揃ったものを完全型、経過中に3主症状あるいは2主症状と2副症状が出現したものなどを不完全型とよんでいる。

 

皮膚症状としては、外陰部の境界明瞭な深くえぐれたような潰瘍、下肢などに好発する1〜2cm大の圧痛を伴う結節性紅斑様の皮疹、さまざまな部位に出現するざ瘡様の皮疹、採血や点滴の針を刺したところに24〜48時間後に発赤や膿疱が出現する針反応陽性、四肢の有痛性の索状硬結として触れる血栓性静脈炎などがみられる。

 

検査

本症に特異的な血液検査所見はないが、好中球優位の白血球数増多、CRP陽性、血沈亢進などがみられる。50〜60%の患者がHLA-B51を保有している。

 

皮膚生検では、好中球性の脂肪織炎や血栓性静脈炎の像がみられる。

 

 

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治療ならびに看護の役割

治療

おもな治療法

各症状に対する対症療法が基本になるが、安静が重要である。薬物療法としてはNSAIDs、コルヒチン、免疫抑制薬内服、抗TNF-α抗体投与が行われる。

ステロイド薬全身投与は減量中に眼症状を悪化させることがあるため注意を要する。

 

合併症とその治療法

病巣感染がある場合は抗菌薬の投与を行う。血栓性静脈炎を合併している場合には抗血栓・抗凝固療法を行う。

 

治療経過・期間の見通しと予後

慢性再発性に経過するため、各症状のコントロールが重要である。

 

看護の役割

治療における看護

口内炎の疼痛により、食事が十分にとれないことがあるので、患者の訴えを聴き食事内容を検討する。注射部位に皮疹を生じることがあり、注意を要する。

 

フォローアップ

退院後も再燃のリスクがあるため、過度なストレスを避け、定期的に通院するよう指導する。

 

 

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本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂

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